「空き家」が蝕(むしば)む日本
先週触れましたが、お盆に読んだ2冊の本のうちのもう1冊です。
深刻な山梨の空き家率
この本を読んで、「空き家」には2次的住宅と位置付けられる別荘が含まれる場合とそうでない場合があることを知りました。山梨県(1位)や長野県(2位)の空き家率が高いのは別荘が含まれているためということも分かりました。
ネットで調べると、7月に総務省が2013年現在の空き家率を発表していました。2次的住宅を除いた空き家率でも山梨県は17・2%でトップです。5・8軒に1軒が空き家ということになります。一方、長野県は別荘を除けば10位以内に入っていません。山梨県の深刻さが分かります。
空き家対策に税金投入の時代
著者は不動産コンサルタントです。マンションや一戸建て住宅の購入についての指南書を何冊も著わしています。政府の委員も務めた経歴の持ち主ですから、最終の第7章の見出しは「海外シフトする不動産投資」です。しかし、ただの不動産コンサルタントではありません。住宅政策のあり方からエネルギー問題にまで論点は広がります。そして第2章では「空き家」が増え続けるのはなぜか?と問いかけます。
たとえば東京足立区が「老朽家屋などの適正管理に関する条例」を制定し、木造で50万円、非木造で100万円を上限に助成を行い、解体を促していることをあげ、「空き家対策に多額の税金を使う時代になっている」と指摘しています。(なお、足立区の条例の内容については私の「手紙」No.1236(6月8日付)と少し食い違っていますが、スペースの関係で触れません)
住宅政策がないための悲劇
著者はそのうえで「2040年には全国各地で『お隣は空き家』に?」と見出しを立て、空き家が活用されていない実態と見通しを紹介します。そして、「なぜ『空き家』のまま放置されるのか?」です。作りすぎて需要がない(筆者はそう断定してはいませんが)という理由のほか、以前に私も触れましたが、ボロボロの建物でも、壊さないでそのままにしておくほうが、土地だけにしておくより固定資産税が安いからです。住宅が足りなかった時代につくられた制度で、いまでも住宅建設を景気浮揚策としている政治のあり方が問題だと指摘しています。この指摘と提示している改革案はわが党の政策と一致するものと思います。
私が驚いたのは、ドイツでは「室温20度未満になってしまう住宅は賃貸に出すことができません。理由は『人権を損なうから』」。
うっかりするとお勝手の水道が凍ってしまうわが家など人権侵害であることは間違いありません。
広島の住宅地を襲った土砂災害。根底には政府が持ち家をあおり、民間に丸投げしている無責任な住宅政策があります。そして、そのために生じる危険地域の対策も取らない。この先は「赤旗」日曜版でどうぞ。