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議会報告 TPP反対で政府・国会に意見書送付
関税撤廃で国の形を変えてよいか
前々号の最後にふれたTPP反対意見書採択のさいの賛成討論です。
昨年秋、菅直人首相が突然TPP交渉への参加を言い出して、私たちが初めて知った言葉でした。しかし、その内容と現状は一年たってかなり分かってきています。
まず、推進勢力は「バスに乗り遅れるな」といいますが、東アジア13カ国でTPP交渉に参加している国は4カ国にすぎません。シンガポール・ブルネイ・ベトナム・マレーシアです。そしてこれらの4カ国のすべてと日本は経済連携協定(EPT)を結び、それらの国の工業製品の関税は撤廃されています。したがって、日本にとってTPPへの参加の実質的な意味あいは、経済規模からみても、EPTを結んでいないアメリカとの全面的な貿易自由化でしかありません。
「TPPで経済再生」は幻想
そのアメリカに日本から輸出する場合、工業製品の関税はもともと低く、乗用車の関税率は2・5%、電気・電子機器では1・7%にすぎません。しかし、円の対ドルレートは2年間で20〜30%も上がっています。この円高傾向のもとで2%前後の関税撤廃の効果など、簡単に吹き飛んでしまうことは誰の目にも明らかです。
日本経済の再生のためには、GDPに占める割合で約15%にすぎない輸出に力を入れるのでなく、6割を占める家計消費を温めることこそ必要です。
TPPへの参加で最も深刻な影響を受けるのが農業です。日本農業の衰退の大きな原因は農産物の輸入自由化を進めてきたことにあります。いま残るのは最後の砦(とりで)ともいうべき米や乳製品、砂糖など食料安全保障や地域経済に欠かせない基幹作物だけです。それらが自由化されれば、農水省の試算でも食糧自給率は40%から13%に低下します。農家1戸当たりの耕地面積でアメリカが日本の100倍、オーストラリアが1500倍という数字を見ただけで、競争できる相手でないことが分かります。
加えて危うくされるのは食の安全です。アメリカは「牛肉のBSE(牛海綿状脳症)対策で日本が行っている月齢制限などの規制を緩和せよ」とか「コメ輸入の際の安全検査を緩和せよ」「ポストハーベスト(収穫後の農薬処理)の食品添加物の表示をやめよ」「有機農産物の殺虫剤・除草剤の残留を認めよ」などを要求しています。これらを認めなければ日本のTPP参加はないはずです。こんな危険なことがあるでしょうか。
さらに、ことは農業・食料だけの問題ではありません。インターネットで、その主なテーマを見ると、日本のかたちを変えてしまうほど、すべての分野に及ぶことが分かります。(略)
東京の石原知事は、立場は違いますが「TPPはアメリカの謀略」と喝破しています。
大津波と原発事故は防げませんでした。しかし、TPP参加阻止はいまからでも間に合います。議員のみなさんが意見書採択に賛成されることを期待して、討論を終わります。