| 前へ | Top |2007年〜 | 次へ |

逆立ちした日本社会

 身延線の不通が一カ月になり、利用者の不便が続いています。10月31日付の山日新聞が社会面トップで報じました。代行バスの本数が少なく通勤・通学、観光にも影響が出ている、JRの説明で「全線復旧は早くても来春」と。先週、リニアについて書いたばかりでJR東海の対応に怒りが募ります。

住民の不便はあとまわし
 利用者の不便を記す記事は、職場への到着時間が遅くなった、電車を利用して高校に通う生徒は50人もいて代行バスや保護者の車で通っているなど、具体的です。代行バスが電車の運行時間と同じに運行されていれば問題はないはずです。しかし、そうではありません。本数が少なく、そのために待ち時間が長いのです。問題はJR東海の復旧にたいする姿勢です。
―JR東海は土砂崩落を確認後の9月下旬、県や身延、南部町に工事の協力を要請。身延町建設課の担当者は「JRから協力要請があり、一緒に現場を視察した。協力していくが、その後、工事方法など具体的な話はない」と語る。― 
 これがJRの姿勢です。復旧を急ぐならただちに対策を立てるでしょう。台風15号上陸は9月21日でした。それから1カ月余りも「具体的な話はない」というのです。
 大金がかかり、自然破壊や災害対策、使用電力量と経済性などで疑問の声が上がっているのにリニア新幹線着工に積極的なJR東海、毎日の住民の足である身延線の復旧にはあまりにも消極的です。大手ゼネコンや原発稼働を進めたい電力会社の意向が働いていないでしょうか。地域の利用者や自治体は鉄道会社の社会的責任を追及してもっと声を上げてもよいでしょう。(山日新聞の記事の効果か、11月3日にはバスの増便などが報じられましたが、「全線開通は半年後」は変わっていません)。

原発事故は東電の「犯罪」
 原発導入の経過と事故後の東京電力の対応に対して、怒りの声が高まっています。こうした中で「放射性物質の過剰投与の市立甲府病院には警察が家宅捜索にはいったのに東京電力にはなぜ捜索にはいらないのか」という声が寄せられています。原発事故は人災だという世論はいまや常識になっていますが、「警察が…」という意見はその世論を突き抜け「犯罪」だというのです。
 なによりも何万人という住民を居住地から立ち退かせたという事実です。また原発を導入する過程では政治家を買収し、自治体を買収した(「やらせ」も)容疑をあげます。さらに事故が起これば取り返しがつかない事態が生じることを承知しながら、反対者を排除し、メディアを買収して虚偽の宣伝を続けた行為も犯罪ではないかといいます。
 いま日刊「赤旗」はシリーズ「原発の深層」の第3部「差別と抑圧を超えて」を連載しています。東電が裁かれた労働者支配の実態が浮き彫りにされています。政治を抱き込めば犯罪が犯罪でなくなる逆立ちした社会、東電の加害者意識の希薄さの背景です。大義(?)は大企業の利益、道徳も正義もありません。