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リニアは必要か、分かりやすい指摘

 9月5日付山日新聞に山日文芸エッセー入選作品が載りました。「リニアと原発と不適切な未来」(堀秀明 甲府市)です。ちなみに挿絵は藤江啓一さん(都留市)でした。  決算審査のさい、執行部にたいして「誰か読みましたか」と尋ねましたが、誰も手を上げませんでした。「読んだ」といえば感想を求められると思ったのかもしれません。  文芸エッセーらしくない哲学的な表題ですが、内容はタイムリーで、リニアになんら批判的な記事を見ない新聞のなかで目を引きました。決算反対討論ではふれるスペースがありませんでしたので、今週はこれを拝借します。要約すると…。

さまざまなデメリット
―共同通信社が震災と原発について全国の知事にアンケートを行った。政府の対応に一定の評価をしたのは山梨と長野だけだった。
 共通しているのは、県内に原発を持たず、リニア中央新幹線の通過ルートに入っていること。リニアに必要な原発は両県にとって切実な問題ではないので、国策(リニア)を念頭に政府批判を控えたのではないか。
―リニアには致命的な欠陥がある。速度において航空機に及ばず、輸送力では新幹線に劣る。極めて中途半端な交通機関だ。
―しかも、消費電力は現行新幹線の三倍。原発に頼らざるを得ない。
 航空機よりは、燃費コストが低いと説明されているが、コストが時間短縮に比例するなら、どちらが上か。距離が遠くなるほど、リニアの有利は失われる。
―わずかな時間を争って高額の負担をする利用客がどのくらいいるか。飛行機の飛ばない地方空港が答えを出している。

化石となる運命か
 筆者はそのほかの先例をいくつも上げています。超音速旅客機、東京湾アクアライン、本州四国連絡橋、宇宙開発、原子力船などの消滅、衰退の歴史です。
 「こうした最先端技術のガラパゴス化は、リニアの未来にも待ち受けているのだろうか。」 
 その上で、以下は結論部分です。

両県知事の身勝手な主張
 異常に多い、リニアの電力消費をまかなうためには、セットで原発を推進する必要がある。ところが、原発や関連施設の新・増設を求められた場合の対応は、山梨が「基本的には認めない」、長野は「一切認めない」と回答している。こんな身勝手が、許されるのか。
 他県に、破滅的なリスクを押し付け、利便性だけを享受する我欲は改められるべきである。リニアを通すのなら、県内に原発を引き受けるのが、受益者としての義務だろう。
 個人的には、原発のもたらすリスクと天秤にかけてまで、リニア交通に価値があるようには、とても思えないのだが。

 

 原発は放射能の処理方法がない現実のもとで、いわば絶対悪です。エッセー入選作にこの作品を選んだのは、リニアに表立って反対できない山日新聞の本音なのでしょうか。