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国民不在の象徴=電気の世界

 震災から4カ月、大震災と原発事故をめぐる事態は依然として深刻です。
 福島原発事故が起こってから出版された安斎育郎さんの「福島原発事故 どうする日本の原発政策」を読みました。分かりやすい二点について紹介します。

電気料金が高いわけ
 ―原発の建設費は、火力発電所などに比べてかなり高いうえに、最近では、借入資金の金利負担もたいへん大きくなっています。それにもかかわらず、電力会社は決して損をしないどころか、非常に大きな利潤を上げています。いったいなぜでしょうか?
 私たちが支払っている電気料金は、電気事業法の規程に基づいて決められています。同法第一九条二項の「供給規定」によると、「能率的な経営のもとにおける適正な原価に適正な利潤を加えたもの」として、電気料金は決定されるのです。つまり、「原価料金主義」という考え方によって、「適正原価」に「適正利潤」を加えて電気料金が決められる仕掛けになっているわけですから、いわば、絶対に損をしない仕組みが法的に保障されているのです。言うまでもなく、電力会社による原価計算の内容はトップ・シークレット(最高の企業秘密)ですから、私たちには、算定された原価が本当に「適正」なのかどうか、根拠を究明することさえできません。―
 国民に高い電気料金を負担させながら、2兆円もの債権をもつ大銀行の利益を保障する仕組みです。
 玄海原発の運転再開をめぐる九州電力の「やらせメール」問題が浮上しましたが、原発設置手続きの過程で開かれる「第二次公開ヒアリング」に参加した科学者Iさんの感想もリアルです。

「やらせメール」など朝飯前
 ―ヒアリングの運営にも種々の問題を感じた。第一は、陳述人の選定方法の非民主性である。52名の陳述申込みの中から17名が選ばれたが、この選び方は、あらかじめ提出した陳述要旨によって原子力安全委員会が都合のよいように選定したものである。その結果、賛成を基調とする者14名、反対を基調とする者3名というアンバランスであった。第二に、公開ヒアリングとは名ばかりで、実態は通産省の説明会に等しいということである。賛成者14名の質問はほとんど重複するところがなく、質問に応じて通産省の係官が美しいスライドをつぎつぎと見せてPRする。陳述人の持ち時間は1人10分間に制限され、司会の原子力安全委員会が厳しく注意するが、通産省の説明には制限がなく、司会からの注意も全体で2回しかなかった。第三は、会場周辺の過剰警備の問題である。数日前から機動隊が泊り込んでいるとのうわさは聞いていたが、当日は600人の警官が女川町に向かう道路で検問し、町内の辻々に立ち、会場の入り口はもちろん、周囲にも見張りやぐらのようなものを立てて、敵襲≠ノ備えるというものものしさであった。―
 国が後ろ盾の「やらせ」、こうした体制の上にあぐらをかいてきた東電幹部に、国会で共産党の追究が厳しいのは当然です。