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いま大企業にこそ道徳教育を

 経団連の会長が浜岡原発の稼働停止を求めた管首相に対して「唐突だ」と批判し、自民党の議員がその談話を国会で菅首相攻撃に使いました。しかし、国会の審議を見ていれば決して唐突ではありません。
 自民党にとって財界の声は「天の声」、そうであれば、自民党の価値判断を変えるには財界の考え方を変えるしかありません。

損失の規模も分からない大事故
 東京電力福島第一原発の事故は多くの人の生きる地域を汚し、人の命を脅かす大事故です。まだどこまで被害が広がるか分からない事態です。大企業が、大企業だけでなく地域経済、地域産業の代表でもあるとするならば、その損害の大きさについて、ことの重大性は分かるはずです。しかし、経団連会長の発言はそのことを理解していません。見えているのは目先の利益だけです。

思い切りやさしく教えよう
 道徳教育がなかった私たちの時代、「人の命は地球よりも重い」と教わりました。地球の重さがどのくらいか知りませんが、どんなに札束を重ねても地球より重くはならないでしょう。
 「あのね、あなた方の利益は中小企業、地場産業、農林業、漁業、さらにそこで働いている労働者、国民があってこそなんだよ」「人の命はお金には代えられないんだよ」「株主の利益より国民の命の方が大事でしょう」
 こういうやさしい道徳教育が、いま大企業にこそ必要です。経団連会長談話は人としての道徳観が全く欠落しているからです。世界に例を見ない理解力不足の大企業に、誰が分かるような教育をするのか…。

「火事場泥棒」を許すな
 阪神大震災では上から復興策押し付け、ゼネコンなどの利益優先で地域経済や地域社会(コミュニティー)がないがしろにされました(内橋克人さん=先週の「赤旗」日曜版)。こんどはそうさせてはなりません。すでにそのたたかいが始まっています。
 5月19日付日刊「赤旗」のトップ記事は宮城県漁協が日本共産党本部を訪れ、党の義援金にお礼を述べるとともに宮城県の「水産特区」に異議を申し立てたという内容でした。
 県漁協の船渡隆平専務理事は「企業が参入して漁師をサラリーマン化させるなんてとんでもない。こればかりは(信念を)曲げるわけにはいかない」と語りました。

江戸の豪商は地域に貢献
 「お江戸でござる」新潮文庫(杉浦日向子監修)にあります。
 「江戸の初期には権力に取り入って稼ごうという商人もいましたが、しだいに地域社会に利益を還元して、周囲の支持を得ようとする傾向になりました。豪商がいると町そのものが栄えるので、皆から尊敬されて『有徳の人』と呼ばれます。『店は主のものと思うべからず。店を譲り受け、また譲り渡すまでの三十年の間の奉公人と思うべし』 こういう覚悟を掲げるお店が沢山あります」
 ルールなき資本主義は最近のものです。