「都留市の方言」その後
「都留市の方言」(都留市郷土研究会)が発刊されて2年たちました。時々眼を通しては楽しんでいます。2500語を整理されたご苦労にあらためて頭が下がります。
人の記憶の不思議
方言を話題にする相手は5歳年上の実兄です。兄が古い言葉を知っているのは年齢の開き(これも大きい)だけでなく、農家の長男で親の世代に交じる機会が多かったためでしょう。その兄が、ある日突然「親父が『あろうずを切る』と言ったな」と言い出しました。人の記憶の面白さで、60年以上前のことを脈絡もなく思い出した例です。
あろうずは平凡社の「大辞典」(甲斐方言稿本から)によると「荒れ水、降雨の際の泥水」のことで、神奈川県津久井郡内里村の方言とありました。兄の話で面白かったのは道志村のよまわれる(叱られる)で、「日本方言辞典」(日東書院)に山梨県の方言とあり、都留の頭ごしに国中と道志がつながっています。
「標準語」にとって代わられる
小学校に入学して、授業でつらら(氷柱)という言葉に出会いました。それまではあめんぼうと言っていましたが、以後、使った記憶がありません。辞典ではあめんぼで、山梨・関東地方・長野の方言とあります。
同じような例で、あぶらぜみも学校に上がる前はおおぜみ(ちいちい・ちいぜみ=にいにいぜみの対?)でした。辞典では遠く秋田・岡山から近隣では埼玉県入間郡・神奈川県津久井郡・静岡県三島とありますから、都留市は交差点の位置です。
ねこやなぎのことをえんまるといいますが、これは山梨だけの方言のようです。辞典の解説は「柳の芽」です。
このほか「都留市の方言」で割愛されているものをいくつか上げてみます。
ほう、方言なのか
いんきょ=分家
うてがえし=口答え
ときいや=時々
はけ=崖
ひじろ=いろり
まきめ=つむじ
こさ(木障=陰)やつくねるもかなり普通に使っていますが、方言に入るようです。
子どもの頃、があたくといえばおてんばな女の子のことをいい、男の子には使いませんでした。また、おばくと麦飯には区別があり、おばくは麦だけの飯、麦飯は米まじりの飯でした。解釈の微妙な変化です。
明治12年生まれで92歳まで生きた祖母はいんね(いいえ)という言葉を使っていましたが、これは鳥取・広島の方言とあります。甲府生まれの祖母に、もはや由来を尋ねることはできません。
時間が取れたら方言の分布を示す「日本言語地図」(国立国語研究所)を開いて楽しみたいと思うこのごろです。
今週の「赤旗」日曜版は8日・15日の合併号のため、「かつら川」「週に一度の手紙」とも、来週は休ませていただきます。