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Inside Farming Vol.23 (Japanese)



崖っぷちパワーで生き残りにかける!

昨年から今年の夏まで続いた林檎価格の低迷。大きな被害をもたらした台風と長雨。さらに不況による贈答需要の低迷。このトリプルパンチのため多くの林檎農家がこのまま経営を継続していくのか、それとも止めるのか、大きな岐路に立たされている。
この永遠に続く重苦しい雲を眺めるような1998年の憂鬱の中で、1999年以降の”林檎農家の行く先”と”私の進むべき先”を照らしてくれる雲間から差し込むような一筋の輝く光はないものだろうか。

僅かにそれがあるとしたら、一つは経営や将来に対する強い危機感と、現状への反発が生み出す力というものに違いない。最近の流行でいう「崖っぷち」。

現実に Inside Farming 9 「品質は向上するのに、価格は下がる、豊作貧乏というジレンマ」 (1997年)でも触れた農産物の流通に対する不信感と反発は、私だけでなく、近隣で林檎を生産する若手の仲間内ではピークになりつつあった。そこに丁度あの台風。被害が一つのトリガーとなり、若手の仲間で流通を専門に考えていこうという機運が生まれてきたのだ。
今までは農家仲間でしている情報交換の中心は生産技術(いかに良い品物を生産するか)であったが、今後は技術と同時に流通も同じウエイトで考えていこう!というものだ。さらに重要なポイントとして、仲間が協力して販売ルートを開拓、販売交渉などをより一層優位に進めよう!と、情報交換レベルから一歩踏み込んだ活動をしはじめたのだ。農家は一人一人が個人事業主として経営しているために、お互いがある意味でライバル。そのため複数農家が一緒に販路を開拓するという事は今までは容易には考えられない事であった。まさに「崖っぷち」がもたらした成果、といえる。

また、そこに集まった若い仲間は、今までそれぞれに減農薬を取り組む努力をしてきたり、個人で販路を開拓したり、いろいろな商売を経てから就農した人たちばかりで、やる気と大きなパワーを持っている。私もその会の末席に参加して、改めて林檎産業にもまだまだ未開拓のまま残されている多くの可能性がある事を実感できた。
現実は決して甘くはない。それでも、例えばこのメンバーで林檎の直売会を企画して、実行できたら楽しいだろうな。まじめな農家がまじめに販売する直売所を持てたら楽しいだろうな、などと遠くにわずかにある青空の日差しを感じる事ができる。

もう1月の上旬から今年の林檎作りの第一歩である剪定作業が始まっている。今年は手が回らない林檎園の剪定を請け負う仲間にも入れてもらって忙しく働き始めた。
仲間と”わいわい”と仕事をしていたら、今年も頑張ってみよう!という気持ちが充満してくるのだった。
(台風特別編終わり)




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