3年経過した Small Loop Antenna    (2014/04/12)


 3.5、7MHz共用のSmall Loop Antenna(SLA)を揚げてから3年経った。

参照:Small Loop Antenna 作製記 (2011/8/21)、Small Loop Antennaの給電インピーダンス考 (2011/08/30)

 真空バリコンのケースを塩ビパイプからアルミケースに取り換えたのを最後に、2011年4月以降、全くメンテナンスをしていない。強風に煽られメインループがいびつに変形している。メインループの材料は直径10mmの銅パイプだが最初に透明の防水ニスを塗布しておいたので錆は出ていないようだ。ただ、ニスの表面は埃で黒っぽく汚れている。

 MMANAで輻射効率を計算してみた。自由空間でのアンテナ・ゲインをワイヤが”無損失”と”銅パイプ”それぞれについて計算すればその差がアンテナの効率に相当するはずである。結果、3.5MHzで約10%(-10dB)、7MHzで約60%(-2.2dB)となった。現在、100Wで運用しているが実際の輻射電力は3.5MHzで10W、7MHzで60Wということになる。HF帯での電波伝搬は電離層の状態が圧倒的な影響力をもっているわけだが、それでもコンディションがクリティカルな時には輻射電力の大きさが物をいうことになる。おもに国内交信を楽しんでいるが、3.5MHzではしばしば苦しい事態に遭遇する。一方、7MHzでは他局と同レベルの強度で電波が飛んでいるようで特にストレスを感じることはない。

 (2014年4月撮影)

アンテナの施工上、経年劣化をもたらす可能性が高いと懸念している箇所がバリコンとループエレメントの配線接続部である。真空バリコンとそのケース(アルミ板厚3mm)が約5kgと重いのでアンテナマストに直にUボルトで固定しており、バリコンとループエレメントをタワー上で配線する必要がある。なので地上の工作でバリコンとループエレメントそれぞれから配線を引き出しておき、上空でボルト締めすることにした。配線にはフレキシブルな20mm幅の銅板を使い、配線どうしの接触面を事前にハンダあげした。柔らかいハンダ面どうしをボルト締めで圧着して接触面積を極力増やそうという魂胆だった。同調形SLAはhigh-Qアンテナなのでわずかな接触抵抗の増加がQの低下、すなわち輻射効率の低下につながるので要注意だ。

    

 アンテナのQ値を推測するため、給電インピーダンスをはかってみた。測定器はAA-30(RigExpert)である。結果を下図に示す。青色で示したRsの共振ピークの半値幅がSLAのバンド幅(Δf)に相当し、それは約5kHzと読み取れる。Q = f0/Δf = 3555/5 = 〜700ということで、ほぼ初期性能を維持しているといっていいだろう。配線施工に対する懸念は取り越し苦労だったのか、今のところ損失抵抗の目立った増加は無いようだ。

追記(2014/09/19)

アンテナアナライザから読み取ったQ値はいわゆる無負荷Qなので、実際のQ値(負荷Q)は半分の350ということです。 <追記終り>

参考:「3.5/7MHz用Small Loop Antennaの放射効率  (2015/10/16)」

 

 話は変わるが、この3年の間にSDR受信機を組み入れた。SDRはSOFT66LC4、サウンドカードはUSB接続外付けのAS372(192kサンプリング)だ。前者は約8,000円、後者は5,000円以下だったと思う。ソフトはHDSDR Ver 2.70を使っている。バンド内が一目瞭然でとにかく便利なのである。バンドスコープは今に始まったことではないが、出費を極限まで抑えられるのがうれしい。このバンドスコープ機能がSLAの手動チューニングに一役買っている。外来ノイズのおかげでSLAの共振点をかなり正確に読み取ることができる。下図はHDSDR画面の一部であるが3600kHz±96kHzの範囲の振幅スペクトルが表示されている。ノイズのピークが3560kHz付近にあり、ここに共振していることがわかる。バリコンを(遠隔操作で)回すことでノイズピークを目的周波数に合わせればチューニングが完了する。かなりラフに合わせてもVSWRが2を超えることはまずないほどにピークの形がハッキリ見えてている。現在の共振点がわかるので目的周波数に向けバリコンをどちらに回したらよいか容易に判別できる。

 ノイズスペクトルの形を計算してみた。Q=700のLCR直列共振回路に一定振幅のRF電圧を加えたときの回路電流の周波数特性を求めた。いわゆる共振周波数特性というやつである。ピーク最大値を-100dBをとして実測値に合わせてた。これにSDRの内部ノイズ(-134dB:アンテナをはずしたときに現れるノイズフロア)を加算して表示したものが下図の青線である。一方、実測のノイズスペクトルから読み取った値を赤点で同図にプロットしてみたが、計算値とよく合っていることがわかる。ここからもQ=〜700の推測が妥当であることが示されている

 興味本位で導入したSDRがSLAのチューニングに大変便利で手放せなくなってしまった。

 

追記(2014/09/19)

入力インピーダンスが40〜50ΩのSDR受信機をつないでいるので負荷Qは700/2=350であるのだが、ノイズスペクトルはなぜか無負荷Qの共振特性になっている。いまひとつ、理解に苦しんでいる。 <追記終り>

 

 戻る