神父の登場によって戦闘態勢を乱され、心臓部にC−MOONの攻撃をくらってしまった徐倫、裏返りながら垂直に落ちていってしまいます。
仲良く絶叫するアナスイとエンポリオですが、そこへ承太郎からメールが。(メールを打つ承太郎か・・・うーむ)
徐倫が生きている事を確信し、彼女を守るため神父に挑むアナスイ。(決め顔だけはカッコイイです。)
お、いよいよ彼の活躍場所来たるか!?との期待もむなしく、神父からさんざん引け退け帰れと忠告されているにもかかわらず、でしゃばった挙句に一蹴されて2週にわたりポールにぶら下がるというへタレ道ここに極まれり、な話が展開されます。嗚呼・・・
しかも助けに行ったはずの「瀕死の彼女の“腕”」に救われるという本末転倒なオチ付き。
何もここまでヘタレさせてまで彼をコマに出さなくても良いのではないのか。余計なフューチャーをするからアナスイが情けないとかへタレだとか言われるのでは。作者は彼に何をさせたいのか。どうせ活躍機会がないのならカメラをふってくれなくて構わないのに。
・・・などと、いいかげんアナスイ本人ではなく彼を動かす「神」、荒木先生に恨みの矛先が向きかけたところで父・承太郎が登場します。
徐倫の絶対絶命のピンチに時を止め彼女を救う父の手、しかも徐倫を抱え上げお姫様だっこで娘と感動の再会。
言葉は少なく、指先をとり、「成長したな・・、徐倫」の一言で全てが通じ合う二人。
カッコイイです。
嗚呼、アナスイの情けない姿の数々は承太郎のカッコよさを引き立てるための前座だったのか、やはり徐倫のナイトは「父・承太郎」の前にも後ろにも存在しないのか、と無事徐倫が承太郎と再会できた喜びと共に一抹の溜息が出た自分なのですが、何が一番溜息だったかといえばアナスイ本人が徐倫を守りきれなかった事実をあまり気にしてなさそうな事でした。駄目駄目な感じ。
父が到着するも、戦いの状況は更に悪化、神父のスタンドはC−MOONから「天国への階段」(単行本時にメイド・イン・ヘブンに変更)へと変化します。
またも意味のあまりない頑張り?で神父に奇襲をかけるアナスイの腕を突き破ってメイド・イン・ヘブンの出現。あたりは光に包まれます。
「対 メイド・イン・ヘブン戦」
気が付く徐倫達一行、周囲を見渡すと先ほどいた場所から数百メートル移動している模様。
徐倫は開口一番「アナスイはどこ?!」と探してくれます。これにはアナスイ感激。(ファンも感激。)神父メタモルフォーゼ時の衝撃波を受けてえぐれた腕を押さえつつも「嬉しいぜ」と言ったりしています。
しかし状況・・自分たちの体感時間と周囲の時間の流れにひどい差があることにやがて気が付く5人。
エルメェスの頭に落ちそうなグラつくブロックの破片をアナスイは手で押さえようとしますが一瞬のうちにブロックはエルメェスの頭を直撃。
あれ、貴方、徐倫以外の危機にも行動する男だったんですか。
無意識の反射的な行動だったのでしょうが、意外でした。
この辺りでアナスイというキャラクターが荒木先生の中で完成を見たような気がします。
素直な見方をするなら徐倫と再会し共に過ごす中でアナスイの中の闇の部分が払拭され、本来あるべき彼自身の人となりが表れたということでしょうか。
「JOJOリターンズ」風に言い直すなら「ポルナレフ系の気の良い若者」な感じです。(微妙な言い回し・・・)
そんなアナスイは承太郎達を建物の屋根へ上げ神父の攻撃をとりあえずかわします。
かわしついでにストーンオーシャン最大の爆弾発言「お嬢さんとの結婚をお許しください」とついに承太郎に向かって言ってしまいます。
固まってしまう承太郎に対しアナスイは大真面目。
「今・・・何を言った?」と凄む?承太郎に怖気づくどころか更に話を続けます。
自分は初めから徐倫と結婚できるなんて思っちゃいない、自分の殺人罪は事実だし彼女が自分の事を好きになってくれるはずが無い事も知っている・・・。
必要なのは、ただ「許し」の言葉なのだと、それだけで自分は救われるのだと、アナスイは承太郎に悲痛な胸のうちを吐露します。
ええと、この時すでにアナスイは「自らの死」を覚悟しているわけで、もちろん本当の意味で「結婚の許し」を得たいと思っているわけではなく、自分が焦がれ、光と思った魂の持ち主、徐倫の父である承太郎に「彼女にプロポーズする資格」を認めて欲しいと、それだけで自分の心は解き放たれるのだと言っているわけです。
なんとも哀しい、極限の、しかしどこまでも純粋でささやかな願いです。
・・・・・・しかし・・・・・・。
アナスイってこんなキャラでしたっけ??
いえ、上記のシーンとセリフには本当に感動したのですが「最初から結婚できるなんて思っちゃいない」・・・・ですって。
ボートの上で近寄って来た彼女に発情して「キスしたいんだろ?」と舌まで出していた男と同一人物とはとても思えません。
彼曰くあの一連の傲慢な態度も裏にはこんなに真摯でピュアな想いが流れていたのだと、言い張るつもりでしょうか。え〜。
まあ、ジョジョに置いて過去の設定、過去のエピソードの矛盾など探してはいけないお約束であって、「神」(作者様)に言わせれば「ああ、そんなのもあったっけ」で済ませられてしまう部分です。
アナスイもまた、より新しく描かれた彼が作者にとって本当の「アナスイというキャラクター」なのでしょう。多分。
余談ですが「メイド・イン・ヘブン」発現時にアナスイが意味も無く(←失言)近くにいたのは多分承太郎に接触する時怪我をしてゼーゼー言っているシチュエーションが欲しかったのではないかと個人的に推測します。
元気ハツラツで「お許しください!」といってもあまり悲壮感が出ないので・・・。
しかしそうでもして傷を作らない限りピンピンしていた現状は結構問題だったのではないかと思います。
徐倫は本当に満身創痍だったというのに・・・このヒト・・・。
そんな突っ込みは置いておいて、承太郎の方はと言うと「イカレているのか」とにべもありません。(まあ、この状況では当然ですが)しかしここに来てぶっ飛びの衝撃展開、徐倫がアナスイに抱きついてきます。
「離れていたら危ないのでまとまろう」という事でアナスイを引き寄せようとしたらしいのですが自分的にはここがアナv徐のターニングポイントでした。
あまりにいきなりだったのですが、どうやら徐倫の中でアナスイへの新密度は確実に上がっていたようです。
「男性不信」だった彼女が異性の、それも自分に対して求愛を口に出している人間に対して「素肌密着」(アナスイの服装上)を自分からするというのはかなり、いやすごく「心を許している」という無意識の態度の表れに他なりません。
更にうがって見るならばこの時の徐倫はアナスイに寄り添った後、首に手を回し自分の方へ近づけようとする仕草をします。
ジョジョ漫画、特に6部の世界は荒くれ者(古い言い方・・・)が多く登場する世界で、「相手に触れる」事はごく、限られた親密な者同士以外はタブーの行動として描かれています。(気安く触ってんじゃねえ!というセリフもよく飛び交います)
つまり徐倫は現在アナスイに対し触れてもいい、引いては「アナスイは自分が触れることを容認している」事を前提で行動しているわけです。(無意識かもしれませんが)
やったねアナスイ!「湿地帯でのウェザー」位にまではお株が上がっていたね!!
・・・などとファンは小躍りしたわけですが、それを見ていた承太郎は徐倫を彼から引き剥がし自分の元へ抱き寄せます。全身から拒否オーラ強烈放射です。
アナスイはがっくし。
これは徐倫を引き剥がされた、というよりも承太郎に許しをもらえなかった=認めてもらえなかった、資格を得ることが出来なかった、という落胆の様に思えます。
通常の父親に否定されてもヘコむものですが(多分)承太郎はアナスイにとって「もう一人の輝ける魂の持ち主」なわけです。その光に拒否されたのは己の存在意義を否定されたに近い絶望だったのではないでしょうか。
承太郎側にしてみれば、自分のいぬまにいつのまにか娘に惚れていた、どこの馬の骨とも知れん男に冗談でも「結婚を許す」なんて言えるかー!!・・・というごく父親らしい気持ちからの行動だとは思うのですが(言えた義理かい・・・いやいやゴホゴホ)
アナスイにとっては死を覚悟するための切迫した願いであったわけで、歴戦を経験した戦士である承太郎ならば「父」である前に「一人の男」としてその辺りを汲み取ってくれても良かったんではないかなあ、と思ったりもします。アナスイのフォローしすぎですか?自分。
さて、臨戦態勢の輪を作る5人ですが、次の瞬間メイド・イン・ヘブンの攻撃で「あわや承太郎首チョンパ」の事態に。
徐倫は愕然としメイド・イン・ヘブンの次の攻撃に備える事もできません。
・・・が、なんとアナスイの機転で致命傷を逃れた承太郎が時を止め神父の攻撃をかわします。
なんとけなげなアナスイの行動でしょうか。
つらくあたった(まあ当然なのですが)承太郎を恨みもせず、出し抜こうとも思わず、「神父の攻撃は先ず承太郎である」事を見越して彼への攻撃ダメージを自分が肩代わりする用意をしていたわけです。
「すでに・・・あたしを守ることを考えていたというの」(フロム・山岸由花子)
ではないのですが、アナスイはしっかりと自分だけでは徐倫を守りきれない事、この事態に対抗できるのが承太郎の能力だけだという事、自分に出来る最良の行動は先ず承太郎のフォローをすることだと見抜き、実行していたわけです。
さすが判断力と観察力に優れた殺人鬼です♪
・・・という冗談はさておいて、この行動で承太郎のアナスイに対する評価が上がったかどうかは定かではないのですが徐倫の中で彼に対する株が急上昇したのは確実です。(後ほど彼女のセリフでも言っています。)
徐倫に言わせればこれがアナスイ最大最高の功績ではないでしょうか。本当はディスクを取り出す云々で既に承太郎の命を一度救っているんですが。
承太郎への攻撃を代わったために神父から「第一番目に始末する目標」となってしまったアナスイは、神父の攻撃に備えるため、海に降り立ち相討ちの計画を持ち出します。
正に捨て身の考え。ムチャだ、というエンポリオに向かってアナスイは軽口を叩きます。
「生き残れたら・・・徐倫に結婚でも申し込むとするかなあ」
これは、徐倫の耳に届く事を前提で言った簡易版プロポーズだったのでしょうか?
自分的には、このセリフはアナスイにとって彼女に届く、届かないはあまり問題ではなかったのでは、と考えています。届いたところでいつものように軽くスルーされるだろう、と思っていたのではないでしょうか。
このセリフは返ってくる事の無い返事を待つものではなく、ギリギリの部分で「覚悟」にあと一歩踏み込むための自分自身に言い聞かせる言葉だったのではと思います。
しかし、そんな彼の耳に思いがけない言葉が届きます。
「いいわ」
・・・・あまりにも信じられないセリフにに言葉を失うアナスイ。(ついでにパパも言葉を失っていますが)
この時の徐倫は「申し込んでもいいわ」と言っただけで「結婚をいいわ」と言ったわけではありません。
しかし彼女は「この状況で絶望しているから言ってるんじゃあない。あなたの考えには希望がある。」と続けます。
徐倫がアナスイを一人の男として、人間として認めているのだという事がこのセリフから伺えます。
逆説的になりますが、徐倫は「ジョースター」の血と魂を受け継ぐ女性です。ジョースターといえば「生涯に一人の相手しか愛さない(一部の例外はありますが)、本気の恋しかしない人達」です。ロメオの事も本気で愛そうとしていたからこそ、ひき逃げの罪に心ならずも加担したわけですし、そんなジョースター家の一員である徐倫がこれ程真剣な想いを受けとめ、なおかつ自分も真剣に相手を認めたとするならば彼女の中でアナスイはかなり大きな位置を占めてきていると言っても良いのではないでしょうか。
この戦いを生き残ったら、彼が自分に結婚を申し込んだなら、改めて徐倫はアナスイに「いいわ」と言うつもりだったのではないでしょうか。
なんか、唐突すぎて何でここで徐倫がアナスイに許しを与えるのか合点がいかない。
もう少し二人が恋を育む段階を描いてくれたなら納得いくのに・・・。
等という声も聞かれますが(というか自分もそうですが)
裏を読むならこの「いいわ」は徐倫の許可のセリフであると共に「神」=作者様の恋の通行手形だったのではないかと思います。
多分アナスイは本来徐倫の相手という設定ではなかったのに、作中で彼はどんどん成長し(ひらたく一貫性がなく変化したとも言う←失言)
正に重力、運命の引力のように「・・・主人公に・・・マジ求婚させても良い・・・カナ」と筆者に思わせるに至った、それをはっきり作中で表現させた瞬間だったのではないでしょうか。
「生き残れたら」・・・・その願いもむなしくアナスイは徐倫のスタンドによって胸を貫かれ絶命します。
最後の瞬間、彼に去来したものは何だったでしょうか。
後の作戦を承太郎が上手くやってくれる事を願ったでしょうか。
もしかしたら自分をスタンドで貫いてしまった徐倫に残る苦しみを思いやったかもしれません。
ただ彼は本望だったと思います。死に際しての表情は唯一アナスイだけが描かれていますが哀しいくらい安らかな顔でした。
一方深手を負いながらも息のあった徐倫はエンポリオに、自分が生きているのはアナスイが父を守ってくれたからだと語り、少年を逃がし神父に立ち向かって行きます。
結局アナスイの捨て身の作戦は敗れてしまったのですが彼が海に出ようと言った事がイルカと共にエンポリオが逃げる可能性を引き出したわけです。
徐倫がエンポリオに仲間の名を次々挙げる時、アナスイを第一に言う部分も自分的には要チェックでした。(トリが承太郎と決まっていて、残り二人を出番の多さで振り分けたら自然とその順番になるだろう、という突っ込みはこの際ナシの方向で)
自分のためだけに戦いに身を投じ、傷つき、そして結果的に自分が殺してしまった、自分を愛してくれた男の事を徐倫は最期にどう思い起こしたでしょうか。(父の事しか考えてなかったんじゃねーの?という突っ込みは以下略)
誰も神父を止める事は出来ず天国の時は遂にやってきます。
しかし神父が「ウェザーとの因縁」が断ち切れなかった様に、神父が殺めた者たちの魂もまた、それぞれの引力が、想いが消える事はありませんでした。
例え宇宙が何巡したとしても。
形作られる前に消えてしまったかに見えた徐倫とアナスイの恋の引力はそのまま「2巡した宇宙」で再び動き出します。
今度は、元の彼ら以上に強く引かれ合う形で・・・。
「2巡目の彼と彼女」についてはまた別項で考察をしたいと思います。
最後にリトル突っ込み。
承太郎パパ、徐倫のスタンドを引き抜いた後のアナスイの扱いゾンザイすぎ。
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