コラムる

徒然なるままに、愛しのキャラクター達へ思いを馳せる。
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 2     何故ナルシソ・アナスイはへタレ君になったのか。<ジョジョ・ストーンオーシャンより>  
「ジョジョの奇妙な冒険・第6部」に登場するキャラクター、「アナスイ」について考察してみます。
 
「彼に話しかけないで。彼はどんなことだって協力しない。」
「彼は殺人鬼なんだ。」
・・・これが、エンポリオ少年がアナスイについて語った最初の一言です。
 
同じく「音楽室幽霊空間」の常連だった「ウェザー・リポート」が登場した時エンポリオが彼の足にしがみついていた事を考えると対照的な少年の態度です。
音楽室で過ごした期間は長いけれど親しいわけではなく、むしろ畏怖すら感じる存在。それがエンポリオのアナスイに対しての評価でした。
<恋人とその浮気相手をバラバラにして殺害した分解壁の男>
その猟奇的な前科と<全く優しくない>アナスイに、エンポリオとF・Fが抱く不信感はそのまま読者の気持ちにスライドします。「いつか裏切るんじゃないのか?」という危惧すら抱かせる、「味方らしくない味方キャラ」、それがナルシソ・アナスイでした。
 
さて、そんなアナスイは「空条徐倫との結婚」を条件に協力を承諾します。
彼のスタンド能力は強力で懲罰房棟編の敵キャラ3人を撃破する程の活躍を見せます。
 
しかし懲罰房棟編が終わり、刑務所を脱獄して外での舞台が徐倫達の戦い場所になる頃からアナスイの活躍シーンは激減し(皆無とも言う・・・)
戦闘の機会だけでなくボヘミアン・ラプソディー戦では母ヤギに追い回されてただ逃げ回ってみたり、神父相手に良い様に操られてみたり、C−MOON戦では徐倫をサポートすると言いながらいざC−MOONが向かってくるとひるんでみたり・・・。
読者としては「一体どうしちゃったの!?」
と突っ込まずにはいられない程精神的にも
へタレます。
 
これはどういう事なのか。
ターニングポイントは神父の正体が判明した湿地帯での戦闘時、瀕死の状態に陥ったアナスイをF・Fが助け死んで行ったシーンです。
この時アナスイは承太郎のディスクが死にゆく自分の体と共に消滅する事を避けるため、F・Fに自分の体と知性を乗っ取るよう指示、徐倫のために命を投げ出す行動に出ます。
直前まで人でなしっぷりがはなはだしかっただけに、このアナスイの献身は読者にも大きな衝撃を与え、アナスイは只の性格異常者ではない。彼もジョジョの味方になるだけの「黄金の魂」を持ち合わせていた。
彼の徐倫への愛は本物だった。
・・・という印象を強く与えたのでした。
 
さて、ここで視点を変えて荒木先生の描き手側からの都合を考察してみたいと思います。作品中でキャラクターを動かすにあたり作家は構成パターンのクセのような物をそれぞれ持っていますが荒木先生の場合
1.直接戦闘は基本的に一対一で。
2.一つの敵、一つの章に対し活躍する味方キャラは基本的に一人。
3.主人公を除く味方キャラが倒すことが出来るのはサブボスまで。
・・・などが挙げられるのではないかと個人的に思っています。(もちろん例外はありますが・・・。)
 
脱獄後、アナスイはファンの間でへタレへタレと散々揶揄されますが彼のへタレ演出には多少不自然さを感じないでもありません。決して彼のスタンドが弱くなっているわけではなく、むしろ「何でこう使わないのか、こんな風に応用出来るのではないのか。」といった歯がゆささえ感じられる事もあります。
つまり、アナスイは弱いキャラなのではなく
むしろ意図的に活躍の機会を抑えられているように見えるわけです。
何故か。
それは(あくまで個人的意見ですが)ダイバー・ダウンが万能すぎる。からだと私は考えます。攻守共に優れ、ともすれば「潜行&分解」で治療活動もできるのではないか?というスタンドですからこれが100パーセント活躍してしまったら話がつまらなくなってしまうのではないでしょうか。
 
上記で述べたように荒木先生は各章ごとにメインとなるキャラクターを絞って作品を描かれる作家ですし、特に「6部・ストーンオーシャン」は主人公「徐倫」にスポットをあてた作品です。その主人公を薄めてしまうわけにはいきません。
 
しかしアナスイはリタイヤすることもなく最終戦まで徐倫に付き合います。
主人公のそばにいて主人公よりも活躍するサブキャラは父・承太郎のポジションで席が一杯一杯だったので結果アナスイには「出番は多いけれど活躍の場は無し。」
といった微妙な役回りがあてがわれたのではないか、と想像します。
 
通常ですとこのような「人でなし」で「色物」なキャラクターは話に華を添えて早々に死亡する、というようなパターンが多いように思えますが、何故アナスイは生き延びたのか、考えるに彼の戦闘参加理由がとても単純だったからではないかと思います。
6部の味方キャラは、ほとんど全員敵「神父」に個人的因縁があるので純粋に「主人公に協力したい」というキャラがアナスイ以外にはいないのです。(F・Fは死んでしまったので除外)また、アナスイは徐倫が大好きなのでことあるごとに彼女を称え、徐倫の魅力を賞賛します。戦う女ジョジョ「徐倫」はともすれば雄雄しくなりすぎて読者も「女ですか・・?」と疑いたくなる中、アナスイの存在は徐倫が「本来は可愛い19歳」だということを読者に思い起こさせてくれる貴重な役割を担ってくれていたわけです。
故に作者も動かしやすかったのかアナスイを殺すことなく描き続けてくれます。
 
アナスイは結局の所、誰よりも最後までスポットを当てられ続けていたわけですから
言ってしまえばこのようなキャラが目立った上に強かったら只の嫌味になってしまうので荒木先生は彼の活躍を抑え、へタレさせたのではないでしょうか。
 
余談ですが、個人的には後期の方が好きかもしれない自分です・・・。
 
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