恋愛ごとに関して、特に主人公の相手側の描写に関して「軽め」のジョジョシリーズ。
けれど「6部」は主人公<空条徐倫>が恋をし、その恋に破れたところから物語が始まります。
主人公が女性であることもあり、彼女が強く、たくましく成長する事を願う反面、「最終的に彼女が選ぶ相手は誰なのか」という点も気になりました。
物語のラストシーンの人間関係は連載当初からの予定ではなかった。と、断言しても良いかと思われるので、作中の他の男性キャラとの「恋愛“もしかして彼だったのでは”ワールド」を考察&検証したいと思います。
一人目「ウェザー・リポートの場合」
徐倫が刑務所で出会う味方のスタンド使い。
彼とのロマンスは無理がない、といいますか黄金パターンといえるでしょう。
男性不信に陥った徐倫もウェザーとは出合って早々に良いコンビネーションを築けます。
ラング・ラングラー戦では「徐倫騒ぐ→ウェザー冷静にフォローする」のパターンが多く見られ、ウェザーのマイペースさが逆に徐倫のハイテンションを包み込む形となり、徐倫は安心感を持つ事が出来たのではないでしょうか。
そしてなによりウェザーは「高い身長、黒っぽい衣装、物静かで寡黙。」・・・等々、承太郎に印象が似ているのです。
父に反発感を持っていた徐倫ですが、それは望んでも得られなかった父との暖かいコミュニケーションを切望している反動であり、父に強いコンプレックスを持っている現われでもあると思います。
つまり徐倫は無意識に父、承太郎の影を相手に求めている事になり、そういう意味でもウェザーは徐倫にとっては理想の相手ではなかったでしょうか。
しかし現実は甘くなく?(というより荒木先生が甘くなく)
ウェザーの記憶が蘇り、彼の過去が明らかになるにつれ
「プッチ神父と双子であった→神父と同い年であった→徐倫の父親とも近い年齢であった」(だからお父さんと似ていたのか?!)・・・とか、
「元彼女がいて彼女を失った故の憎悪がウェザーの戦う意味であった」・・・とか、
「元彼女が徐倫とは全然タイプが違っていた」・・・とか、
ウェザーを異性のお相手として少しでも良いな♪と思っていた乙女の恋心を片端からプチプチとつぶすような(プッチなだけに)←・・・・・・・・・・・・・
矢継ぎ早に打ち出されるストーリーに雲行きは失恋模様になるわけです。
とはいえ、徐倫には何も知らされることなくウェザーは逝ってしまいます。
思い出はいつまでもそよ風の中美しく・・・です。(涙、涙)
二人目「エンポリオの場合」
刑務所で出合った少年。
初めての異性の協力者。
徐倫にとってエンポリオは大切な仲間であり守るべき存在でした。
損得なく守護する相手、最もピュアな関係を持つ存在がいずれ成長と共に生涯最愛の相手へと変わる。・・・古来より数々の物語で登場する男女の王道のひとつです。
荒木先生もこの関係図は「バオー来訪者」の育朗とスミレでも描いています。
もしかすると「最終的な相手はエンポリオ」というのは、かなり当初の予定に入っていたかも・・・・しれません。
そもそもエンポリオが徐倫の前に現れた理由というのがいまいち脈絡がないのです。
徐倫の秘める能力云々や、彼女の父親が誰であるかは「面会室での一件」には関係がありません。
エンポリオが徐倫に骨を持たせ、助けようとした理由は「お姉ちゃんに無事に外へ出て欲しい」という裏のない思い・・・言い方を変えるのなら単なるひいき。でした。
徐倫からすれば「突然ふってわいた小さなナイト」(ナイトは言いすぎか?)なわけです。
徐倫にとって最も誠実かつ純粋な協力者であるエンポリオは当然最も彼女に信頼を置かれる立場であり、そんな彼なら容易に「本当のナイト」へ昇格できたはずです。
しかし「王道」であるこの関係は主人公が男性で相手が女性の場合に多く見られるパターンで、その逆はあまり見たことがありません。
やはり守られていた立場のキャラクターが男性であった場合、恋に発展したとたんピュアさが欠けるような印象になってしまうからでしょうか。
荒木先生もそのあたり、読者に勘ぐられることのない様(???)、エンポリオの描写は「マスコット的存在」の域を出ることのない物に徹してました。
特に脱獄後の彼の扱いはすさまじく、叫ぶ時は顔の2倍以上アゴを伸ばしてみたり(巨顔化)、その叫び顔がこの上もなくブサイクであってみたり、「血尿がー」と絶叫させてみたり。・・・ギャグメーカーというよりヨゴレ役のイメージでした。
なんというか間違ってもエンポリオでロマンスは考えられないような荒木先生の素晴らしい(?)演出です。
育朗とスミレに比べるとエライ差です。(苦笑)
子供であり、非戦闘型のスタンド使いであるがゆえに共に戦ったり、恋テーマに関われなかったエンポリオですが、だからこそ物語の最後まで生き延びる事ができたので痛し痒しといいますか、彼的にはどちらが良かったのかはわかりませんが・・・。
死によって分かたれたがゆえに、エンポリオにとって徐倫は永遠に美しい存在としてあり続けるのだと思います。
ピュアな絆に合掌・・・です。
<後編へ続く>
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