視覚障害者の読書
私の学生時代は視覚障害者が読書をする場合、
1.点訳本を指で触って読む(触読)。
2.音訳テープをテープレコーダーで再生して聞く(聴読)。
3.直接対面で朗読してもらう(対面朗読)。
という方法しかなかったと思いますが、現在ではこれに加えて
4.点訳データをパソコンや点字ディスプレイなどの情報機器を用いて点字や仮名に変換して触読または聴読する。
5.デイジーデータをデイジー再生ソフトや再生機器を用いて聴読する。
という方法が加わり、非常に読書環境が整備されて来ました。
どの方法にせよ、活字書を私たち視覚障害者にも読めるような点字や音声に変換(点訳/音訳)するという作業が必要ですし、変換した点字や音声データを効率よく保管/利用するシステムの構築も必要となります。
これらの作業には並々なならぬ労力と膨大な時間を要するものと拝察します。
私は、今迄にたくさんの本を読んで来ましたが、時代の変遷とともに読書方法も変化し、「あの頃、あの本をあんな方法で読んだよなー…」などと読後感とともに読書方法まで懐かしく思い出す事があります。
そこでこのコーナーでは、私たち視覚障害者のための読書環境整備にご尽力くださっている多くの方々への感謝も込めて、これまで読んだ本の中で特に印象に残った本や感動した本、読後感がさわやかだった本や楽しかった本などを読書方法や私の個人的な簡単な感想なども付記しつつご紹介したいと思います。
また、このページが読書好きの方の「本選び」のために僅かでもお役に立てれば幸いです。
以下、
タイトル(著者名)
※図書の入手方法と読書方法
その図書にまつわる思い出や感想など
の順で記します。
フェルマーの最終定理 ピュタゴラスに始まり、ワイルズが証明するまで(サイモン・シン)
※PCにインストールしてある読書ソフトでインターネット図書館からデイジーデータをダウンロードし、それをデイジー再生機にコピーして聴読
「フェルマーの最終定理」の証明にチャレンジした多くの数学者たちの物語です。
何と350年にも渡って繰り広げられた数学界の壮大な歴史がドラマチックに描かれています。
この本の中で述べられている「一度完全に証明された定理は永遠に真理である」というフレーズがとても印象に残りました。
数の世界の不思議さと広大さ、数学の美しさと厳格さを感じさせられる本でした。
総理にされた男(中山七里)
※PCにインストールしてある読書ソフトでインターネット図書館からデイジーデータをダウンロードし、それをデイジー再生機にコピーして聴読
突然総理の替え玉にされた主人公の運命は…。
日頃ニュースなどで抱いている政治家や官僚への不信や義憤に対して、溜飲が下がる 思いで一気に読破しました。
本気で我が国の将来のために尽力してくれる政治家や官僚がもっと増えてくれますように。
また、我々国民ももっと政治に関心を持って、そのような政治家を選ぶようにしたいものですね。
夜市(恒川 光太郎)
※PCにインストールしてある読書ソフトでインターネット図書館からデイジーデータをダウンロードし、それをデイジー再生機にコピーして聴読
この本には「夜市」と「風の古道」という2つの中編ホラー小説が収められていますが、私は「夜市」が断然面白かったです。
ホラー小説といってもそれほど恐い事はなく、どちらかというとファンタジー小説のような感じでとても読みやすく、ストーリーモ魅力的でした。
かがみの孤城( 辻村深月)
※PCにインストールしてある読書ソフトでインターネット図書館からデイジーデータをダウンロードし、それをデイジー再生機にコピーして聴読
2018年本屋大賞ノミネート作品という事でしたので読んでみましたが、とても印象に残るファンタジーミステリーでした。
読み終えて間もなく本屋大賞に選出されたというニュースが届きましたので、私も嬉しくなりました。
桃ノ木坂互助会(川瀬七緒)
※PCにインストールしてある読書ソフトでインターネット図書館からデイジーデータをダウンロードし、それをデイジー再生機にコピーして聴読
川瀬七緒の「法医昆虫学捜査官」シリーズも気に入っていて全て読んだのですが、それとは全く異なるタイプのミステリーで、私にとってはとても新鮮で印象的でした。
結末も私の予想を見事に裏切ってくれて面白かったです。
クリムゾンの迷宮(貴志祐介)
※PCにインストールしてある読書ソフトでインターネット図書館からデイジーデータをダウンロードし、それをデイジー再生機にコピーして聴読
全く未知の世界に突然放り込まれてサバイバルゲームに強制的に参加させられた主人公の運命は!?
読み始めから最後までずっと面白くて時間を忘れて読みふけってしまいました。
最後の方はとても恐くて心拍数も少し上がってしまったかも!
貴志祐介の傑作の一つといえると思います。
ついでにいいますと、同著者の作品「青の炎」もとてもよかったです。
ボックス!(百田尚樹)
※PCにインストールしてある読書ソフトでインターネット図書館からデイジーデータをダウンロードし、それをデイジー再生機にコピーして聴読
高校ボクシング部を舞台にした青春小説です。
かなりの長編ですが、最初から最後までずっと面白く、「この後どうなるのかな?」とワクワクしながら読み進める事ができました。
百田尚樹の文章は読みやすくてストーリーも面白いものが多いので別の作品も読んでみたくなりました。
秘密(東野圭吾)
※PCにインストールしてある読書ソフトでインターネット図書館からデイジーデータをダウンロードし、それをデイジー再生機にコピーして聴読
最近、久し振りに東野圭吾の作品(恋のゴンドラ)を読んだらとても楽しかったので、別の作品も読んでみようと思って調べてみましたら、彼の作品の中で人気も知名度も高いこの作品をまだ読んでいない事に気がつきました。
途中、主人公の行動に「この人大丈夫かな?」と心配になったりもしたのですが、最後はとても感動しました。
東野圭吾のストーリーの組み立て方やエンディングは、私の感性に合っているように感じました。
小説 君の名は(新海 誠)
※PCにインストールしてある読書ソフトでインターネット図書館からテキストデイジーデータをダウンロードして聴読
2016年8月下旬に公開された映画「君の名は」を見て感動し、その小説も既に出版されていると聞いたので読んでみました。
映画を見たばかりで粗筋はしっかり記憶していたので、映画を見ただけではよく理解できなかった部分の理解を深める目的で読んでみましたが、思った以上に感動的で何だかとても得をしたような気分になりました。
これまで、小説を読んだ後でその映画を見る事はよくありましたが、今回のようにその逆のパターンは初めてで、映画のシーンを思い出しながら読み進めるという体験も新鮮で楽しかったです。
羊と鋼の森(宮下奈都)
※PCにインストールしてある読書ソフトでインターネット図書館からデイジーデータをダウンロードし、それをデイジー再生機にコピーして聴読
2016年本屋大賞受賞作品という事で読んでみました。
読みはじめはそれほどでもなかったのですが、読み進めている内にどんどん引き込まれ、特に最後のクライマックスはとても感動的でした。
読み終えた後もしばらく感動の余韻が残りました。
久し振りによい本に出逢った気がします。
伴走者たち―障害のあるランナーをささえる(星野恭子)
※デイジー再生機を用いてインターネット図書館からデイジーデータをダウンロードして聴読
実際に私も伴走者に支えられて走り続けていますし、この本の中に私と直接面識のある方々が登場して私の知らなかったエピソードを語っておられる箇所などもあり、とても興味深く読ませていただきました。
また「伴走」という事に限らず人と人とのかかわり合いについても思いが及ぶ、とてもよい本だと思いました。
日本史の謎は「地形」で解ける【文明・文化篇】(竹村 公太郎)
※PCにインストールしてある読書ソフトでインターネット図書館からデイジーデータをダウンロードし、それをデイジー再生機にコピーして聴読
日本の「地形」・「気象」・「インフラ」の観点から様々な「日本史の謎」に迫るとても興味深い本です。
これまで抱いていた日本史のイメージとは全く異なる著者の考察と推論にわくわくさせられました。
黒い家(貴志祐介)
※PCにインストールしてある読書ソフトでインターネット図書館からデイジーデータをダウンロードし、それをデイジー再生機にコピーして聴読
すっごく怖くて面白かったです。
この著者は読者を怖がらせるのがとてもうまいと思いました。
夜中には読まない方がよいかも知れません。
楽園(鈴木光司)
※PCにインストールしてある読書ソフトでインターネット図書館からデイジーデータをダウンロードし、それをデイジー再生機にコピーして聴読
この本は、
第一章「神話」
第二章「楽園」
第三章「砂漠」
という三つの話で構成されていますが、
私は第二章がとても気に入ってしまいました。
南国の「楽園」の様子がとてもうまく描かれており、私自身もその場に居るような気分になりました。
鈴木光司の著書の中で最も好きな本です。
そして誰もいなくなった(アガサ・クリスティー)
※PCにインストールしてある読書ソフトでインターネット図書館からデイジーデータをダウンロードし、それをデイジー再生機にコピーして聴読
非常に面白いミステリー小説でした。
最後の謎説き迄、真犯人を全く推理する事ができませんでした。
70年以上も前に書かれた本ですが、時代を超えて尚高い人気を保ち続けている理由が分かったような気がします。
錨を上げよ(百田尚樹)
※PCにインストールしてある読書ソフトでインターネット図書館からデイジーデータをダウンロードし、それをデイジー再生機にコピーして聴読
主人公の破天荒な半生を描いた一見自伝的とも思える小説ですが、実はフィクションもかなり多く織り込まれているようです。
それにしても、この小説の主人公の凄まじいばかりの行動力には度肝を抜かれました。百田尚樹の著書の中で最も強く印象に残った本です。
謎解きはディナーのあとで(東川篤哉)
※PCにインストールしてある読書ソフトでインターネット図書館からデイジーデータをダウンロードし、それをデイジー再生機にコピーして聴読
第8回本屋大賞受賞作品という事で読んでみました。
六つのストーリーが納められていますが、それぞれ事件のタイプが異なり、とても面白く読めました。「
執事とお嬢様」という設定も新鮮で楽しかったです。
容疑者Xの献身(東野圭吾)
※PCにインストールしてある読書ソフトでインターネット図書館から点訳データをダウンロードして聴読
東野圭吾の著書の中で今のところ最も好きな本です。
エンディングも感動的でした。
ゴールデンスランバー(伊坂幸太郎)
※PCにインストールしてある読書ソフトでインターネット図書館から点訳データをダウンロードして聴読
第5回本屋大賞受賞作品という事で読んでみました。
最初から最後までずっと面白く読めました。
主人公が友人や知人など周囲の人々に助けられながら危機を脱するストーリーに心暖まる感じを受けました。
読み進める中で生じて来る疑問点に対しても後できっちりと説明されていた事も読後感をよりさわやかにしてくれました。
夜のピクニック(恩田陸)
※PCにインストールしてある読書ソフトでインターネット図書館から点訳データをダウンロードして聴読
第2回本屋大賞受賞作品という事で読んでみました。
特に大きな事件などは起きないのですが、登場人物の心情表現や情景描写、それにストーリーの展開がとてもうまいと思いました。
読後感もさわやかでした。
この本を読んだ事で、その後も「本屋大賞受賞作品」を注目するようになりました。
童話物語(向山貴彦)
※PCにインストールしてある読書ソフトでインターネット図書館から点訳データをダウンロードして聴読
息子に薦められて読み始めました。
独自の世界で繰り広げられるファンタジー小説です。
最初主人公の性格が悪くてとても驚きましたが、読み進めて行く内にどんどん引きつけられて最後まで一気に読んでしまいました。
読後感も最高でした。
読み上げスピードを上げて読んだために集中力が増した事もこの小説をより堪能できた要因だと思います。
ホワイトアウト(真保裕一)
※図書館から点訳本を貸りて触読
娘に薦められて読み始めました。
次々と迫る危機に手に汗握る思いで夜中まで読みふけってしまいました。
そして驚きの結末…。
Yの悲劇(エラリー・クイーン)
※図書館から音訳テープを貸りてテープレコーダーで聴読
最初点訳本を貸りて触読していたのですが、本が古くなっていて点字がつぶれてしまっている上に、外国の人名や地名も多く出て来て更に読みにくかったので、直ぐに音訳テープで聴く事にしました。
私の予想をはるかに超えて面白く、夢中で聴き入った事を覚えています。
特に謎解きの箇所がとても緻密に論理的に記述されている事に驚きました。
銀河英雄伝説(田中芳樹)
※図書館から点訳本を貸りて触読
この本はとても長く、しかも点訳本を触読したために全10巻を読み終えるのに一年程かかってしまいました。途中でやめようかとも思いましたが、最後まで半分意地で読み進めたように思います。
「一年かかって読んだ本」という点で私の記憶に強く残りました。
内容は面白かったのですが、何しろ長かったので、読み終えた時はほっとした事を覚えています。
坂の上の雲(司馬遼太郎)
※図書館からデイジーCDを貸りてデイジー再生機で聴読
史実とは異なる点もあるようですが、日本人なのに自国の歴史をほとんど何も知らなかったという事を認識させられ、少し恥ずかしくなりました。
この本の中で特に「奉天会戦」、「日本海海戦」、「正岡子規」に関する記述にはとても興味を引かれました。
ローマ人の物語(塩野七生)
※図書館からデイジーCDを貸りてデイジー再生機で聴読
これはとても長編で全巻は読み切れないと思いましたので、15巻の内1〜5巻まで読みました。
どの巻もとても興味深かったのですが、特に第2巻の「ハンニバル戦記」は最高に面白かったです。
T.R.Y.(井上尚登)
※図書館から点訳本を貸りて触読
明治時代に上海・日本を舞台として活躍?した詐欺師の話ですが、特に最後のどんでん返しはなかなかの圧巻です。
詐欺師の話などそれまで読んだ事もなかったので、それ自体も新鮮でした。
屍鬼(小野不由美)
※図書館から点訳本を貸りて触読
この本はとても怖い話でショッキングな場面もあるのですが、登場人物が非常に多く、それぞれの人物描写や心情表現がリアルで細やかなので、その点でも楽しむ事ができました。
非常に強く印象に残った本の一つです。
氷点(三浦綾子)
※図書館から点訳本を貸りて触読
かなり以前(15年以上前)にこの有名な小説を一度は読んでみたいと思って読み始めました。
私は、点字をどうにか触読できるようになったのは18歳の頃という事もあり、点字を読む速度は遅い方です。
それでも最後の方はふとんに点字本を入れた状態で夜中の2時過ぎまで夢中で読みふけってしまいました。
読み終えた時もしばらくの間涙が止まらなかった事を覚えています。
三浦綾子の著書の中で最も感動した本です。
風と共に去りぬ(マーガレット・ミッチェル)
※図書館からフロッピーディスクを貸り、そこに納められた点訳データを自分のPCにコピーし、エディタで聴読
この小説はかなりの長編なので、それまで読むのをためらっていましたが、PCで読めば長編でもあまり時間がかからないと思って読み始めました。
南北戦争時代のアメリカの様子が生き生きと伝わって来て、最初から最後まで飽きる事なく読む事ができました。
やはり「名作」だと思います。
宇宙はわれわれの宇宙だけではなかった(佐藤勝彦)
※書店で購入し、図書館に音訳を依頼し、音訳テープをテープレコーダーで聴読
20年くらい前、この本をどうしても読みたくて自分で購入して音訳していただき、何度も聴き直し、強烈な印象を受けました。
それまでの宇宙観が一変したように記憶しています。
こりの鍼(平方龍男)
※盲学校の図書室から点訳本を貸りて触読
この本との出会いがその後の私の進路を決定したと言ってよい程、大きな影響を受けました。
それまで抱いていた鍼のイメージが根底から覆され、「この鍼を勉強したい」という思いが芽生えました。
どの巻もとても興味深かったのですが、特に第2巻の「ハンニバル戦記」は最高に面白かったです。
T.R.Y.(井上尚登)
※図書館から点訳本を貸りて触読明治時代に上海・日本を舞台として活躍?した詐欺師の話ですが、特に最後のどんでん返しはなかなかの圧巻です。
詐欺師の話などそれまで読んだ事もなかったので、それ自体も新鮮でした。
屍鬼(小野不由美)
※図書館から点訳本を貸りて触読この本はとても怖い話でショッキングな場面もあるのですが、登場人物が非常に多く、それぞれの人物描写や心情表現がリアルで細やかなので、その点でも楽しむ事ができました。
非常に強く印象に残った本の一つです。
氷点(三浦綾子)
※図書館から点訳本を貸りて触読かなり以前(15年以上前)にこの有名な小説を一度は読んでみたいと思って読み始めました。
私は、点字をどうにか触読できるようになったのは18歳の頃という事もあり、点字を読む速度は遅い方です。
それでも最後の方はふとんに点字本を入れた状態で夜中の2時過ぎまで夢中で読みふけってしまいました。
読み終えた時もしばらくの間涙が止まらなかった事を覚えています。
三浦綾子の著書の中で最も感動した本です。
風と共に去りぬ(マーガレット・ミッチェル)
※図書館からフロッピーディスクを貸り、そこに納められた点訳データを自分のPCにコピーし、エディタで聴読この小説はかなりの長編なので、それまで読むのをためらっていましたが、PCで読めば長編でもあまり時間がかからないと思って読み始めました。
南北戦争時代のアメリカの様子が生き生きと伝わって来て、最初から最後まで飽きる事なく読む事ができました。
やはり「名作」だと思います。
宇宙はわれわれの宇宙だけではなかった(佐藤勝彦)
※書店で購入し、図書館に音訳を依頼し、音訳テープをテープレコーダーで聴読20年くらい前、この本をどうしても読みたくて自分で購入して音訳していただき、何度も聴き直し、強烈な印象を受けました。
それまでの宇宙観が一変したように記憶しています。
こりの鍼(平方龍男)
※盲学校の図書室から点訳本を貸りて触読この本との出会いがその後の私の進路を決定したと言ってよい程、大きな影響を受けました。
それまで抱いていた鍼のイメージが根底から覆され、「この鍼を勉強したい」という思いが芽生えました。