たくさんのことを妻から学んで
スパゲッティも自分でゆでるし
掃除機も四角くかけるようになったし
怒ってもものをなげなくなった
自分のことを自分でするっていうのは
だんだん自由になっていくようで
とても気持ちがいいのだけれど
死ぬときは、おお、
死ぬときはいったいどうすればいいんだい
すーはーすーはー勝手に出入りしていくから
かくべつおいしいとも思わなかった娑婆の空気も
もうからだにはいってこないんだぜ
入ってくるものがないので
今度はきみが出ていくんだぜ
あれまあ、こんなにじじいになっちゃって
これじゃ死ぬのも無理ないかなんて
自分を供養しながら眺めているのは
ゴロンと寝転ぶ自分の死体
ぼくにとってはかわいい死体
苦楽をともにしたかわいい死体
でも
きっと死体は忌み嫌われる
きっと死体は遠ざけられる
死体があるから悲しくなる
死体になるから死は怖い
邪魔のは死でなくて、死体なんだ
ちゃお、ちゃおっと、とけちゃお