海流の中の島々 〜灼熱編〜




 悪夢の一夜が過ぎて、早朝5時に奄美大島・名瀬港着。
 南西諸島の夜明けは遅く、もう5月なのにまだ真っ暗である。
 しかし、こんな時間でも暖かな風が、鹿児島からさらに丸々一晩もかかる南の島に来たことを教えてくれる。
 空が白むのを待って、北に向かって漕ぎ出す。


  
奄美空港 奄美の風景


 山間の道をひたすら漕いで行く。
 沿道にはハイビスカスが咲いている。
 赤尾木の集落を右に曲がると南の海に出る。少し雲があるが、まさにエア・サプライの世界である。
 『Lost in Love』を口ずさみながらのろのろ行く。犬に吠えられる。
 それにしても腹が減った。難民船の中でピーナツを一袋買っただけで、昨日からまともなものを食べていない。
 だが、道沿いには店舗は全く存在せず、空港に立ち寄って食堂が開くのを待ち、ゴーヤーポーク丼を食べる。


あやまる岬公園
急坂 北の果て


 あやまる岬に立ち寄る。
 昨晩よく眠れなかったのでベンチで少し横になりたいと思うが、売店がわけのわからん音楽を大音量で流し始めたので早々に退散する。
 次は笠利崎を目指し、漕いでいく。


登山道 草叢と海
崖下の愛車 渚の誓い


 海に突っ込んで車道の果てたところから笠利崎灯台への登山道が始まる。
 正直しんどいが、ここまで来たのだからと自分に言い聞かせて上っていく。
 丘の間から海が見える。ここは岬なので、三方を海に囲まれている。
 灯台まで上ると風がキツイ。崖の下に愛車キャノンデールT1000が小さく見える。
 時間を忘れ、ただ呆けたように海を眺める。
 

海の風景 ペパーミント


 奄美の道には、よくヘビが轢かれている。
 いろんな種類のヘビがいるようだが、オレンジ色のヘビとかは何とも無気味である。
 他にも蛍光黄緑のトカゲとかがいる。ここは亜熱帯の島なのである。
 岬を一回りし、赤木名で奄美の郷土料理「鶏飯(けいはん)」を食べる。
 「鶏飯」についてはめんどくさいから説明しませんので、興味のある方はインターネットで検索してみてください。
 名瀬に戻り、疲れ果てたので町にも行かずホテルのレストランで適当に飲み食いし、とっとと横になる。
 が、日焼けが痛くて全然眠れなかった。



左は薩摩へ行く北の道 右は那覇まで行く琉球道 雨に濡れた道
峠道 新和瀬トンネル名瀬側入口


 翌日は雨になった。
 どうやら、もう奄美は梅雨に入りかけているらしい。
 自転車乗りなら誰でも雨ほど嫌なものは無いのだが、今日に限っては日焼けに冷たくて少しだけ心地よい。
 加計呂麻まで行ければ申し分ないのだが、疲れが抜けないし根性も無いので、なんとか住用村のマングローブ原生林まで頑張ることにする。
 この数年でトンネルがたくさん掘られ、南へ向かうのは随分楽になったようだが、それでも自転車には険しい坂道を濡れながらのろのろ漕いで行く。


土砂降り マングローブやかた


 マングローブは土砂降りだった。
 ずっと土砂降りというわけではなく、一時的に小止みになったりするのだが、しばらくするとまたどっと降ってくる。
 マングローブとは浅瀬の上に樹木が生い茂っているとこ(大雑把に言えば)らしいのだが、あまりに土砂降りで近くまで行く気になれず、良く分からなかった。
 まだ少し早いが、道沿いに店も無かったのでここで昼にする。と、生ビールが367円ということで、思わず一杯頼んでしまった。
 出てきたビールはオリオンだった。昨日のホテルの生ビールもオリオンで、ここは行政区画は鹿児島県だが、ビールは沖縄圏に属するようである。


新しいトンネル 古の道
イオンたこやき 新和瀬トンネル住用側入口


 もう辛いので、来た道を名瀬まで戻ることにする。
 新しいトンネルの手前で旧58号が分岐して山中へ消えていく。もしトンネルが無かったら思うと、ぞっとする。


トンネルの銘板 奄美博物館


 名瀬に戻ってくる。
 雨も止みそうに無いので、博物館に行くことにする。
 「奄美博物館」については、立派なサイトがありますので各自検索して下さい。
 ここでランドナーのソロチャリダーに出会う。今時ランドナーとは珍しく、素晴らしい。今朝の飛行機で輪行されてきたという。
 この方に名瀬市内の銭湯、鹿児島〜垂水間のフェリーの存在、やわらかいサラミみたいな豚肉の正体、などなどいろいろなことを教えていただき、 さらには一緒に飲みに行き楽しい時間を過ごさせてもらいました。
 松本のEさん、本当にありがとうございました。





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