タワーオブグレー TOWER OF GRAY:灰の塔
Tarot-No.16

2006/05/05公開

本体名:グレーフライ

歪んだ性格の老人

能力:人間の舌を好んで食いちぎるクワガタ虫のスタンド

スタンド形成法射程距離パワー
能力戦闘体 数10m〜人工物内部全体
(下記参照)
低〜中
(下記参照)

告知

タロット解説

ジョジョ第3部に登場する22枚の「タロットカード」は、占いの道具としてよく知られ、それぞれのカードにはさまざまな解釈が与えられている。そしてその解釈には時に、『生命の樹』と呼ばれる図像が絡められる。生命の樹とは、宇宙・生命・人類・個人など、この世界の中で進化・成長する全てのものが、成長する際に辿る変化の共通性を図像化したものである。「セフィロトの樹」とも呼ばれるその図は、「状態」を表す10個の円形「セフィラ」と、円形同士を結び「変化」を表す22本の小径「パス」から成り、タロットはこのパスに対応している。そして22枚のタロットのうち、「解明せしもの」を暗示する「トト」のセフィラと、「卓越せしもの」を暗示する「アヌビス」のセフィラを結ぶ「塔」は、「成果と問題の累積」を暗示するカードである。

成長体が成長するためには、数多の可能性を試行錯誤し、その結果得られた有益な成果を自らに組み込んでいく必要がある。そしてこの成長は一段階で終わるものではなく、成果を組み込んだ状態から更なる可能性を試行錯誤してその成果をまた組み込み、これを繰り返して成果を「累積」させ、「解明」と「卓越」を深めていくのが普通である。

しかしこの累積は、「生命の樹」のこの段階だけでまとめて成長できる効率的な手法ではあるが、さまざまな問題も生む。成果を累積させていくということは、塔を天へと建て増ししていくように、古い部分に新しい部分を重ねていくということである。成長体が成長していく中で、古い部分の要素はだんだん機能的に劣ったものまたは不要なものになっていくが、それらは古くからのものであるがゆえに成長体のシステムの根幹に残り続けてしまう。その結果、劣った要素は情報やエネルギーの処理伝達経路のボトルネックなどになって成長体の「活発性」を損ない、不要な要素は同じく処理伝達経路の障害物となって成長体の「円滑性」を損なう。またこの累積の塔は、高くなるほどに下層の土台部分の負担を大きくして成長体の「安定性」を失わせ、上へ向かうほどに狭まっていかざるを得ない累積の頂上は、成長体の「発展性」を失わせていく。

またこれらの問題は、その発生箇所自体、またはそれを補い庇う他の箇所に「歪み」を生じさせる。そしてその箇所は歪んでいるがゆえの強度の弱さ・負担の集中しやすさのため、その成長体の「急所」となってしまう。また歪みを残したまま累積を繰り返していくことで、個々の歪みは成長体内部で互いに影響し複雑に絡み合っていく。このため、ある程度以上累積の進んだ成長体の歪みは、ある箇所の歪みを矯正してもその影響が別の個所に歪みとなって現れ、それを繰り返していくと元の箇所に戻ってしまうなどといった具合に、生半可な処置では矯正できない根の深いものとなってしまう。

このように歪みと急所が増大していくことで、最終的にその成長体は、それ以上の累積が行えないか、または限界を超えた累積によって成長体全体が崩壊してしまうといった状態に陥る。ゆえにその成長体は、崩壊後もしくは限界前の適度な頃合で、「塔」の後に続く「星」から「世界」までのタロットから成る「生命の樹の更新段階」に移行し、成長体の解体・再構成を行い問題の解消に臨むこととなる。

ただしこの更新段階を経ても、成長体の歪みや急所は完全に解消されるわけではない。特に、世界において周囲の「自然な状態」や「平均値」から突出した存在、例えば高密度のエネルギーを蓄えそれでもって高度な肉体的・精神的活動を行う動物や人間、さまざまな手法で遠隔地への高速移動を可能とする列車や飛行機、狭い地表面積に広い活動可能面積を作り出す高層ビルなどは、その存在自体が塔のような「累積した存在」としての性質を持ち、突出の度合いが高いほどに大きな歪みや急所を宿し、不測の事態などによって甚大な崩壊を招く危険を抱えることになる。もっとも、更新段階を経たこれらの存在の歪みと急所は、その箇所自体やそれを補い庇う箇所に物理的な補強やシステム的な影響回避措置などが施され、可能な限り「守られた」状態となっているのが普通である。

自身の肉体や周囲の人間関係などにおいて、日常的に起こっては消えていく原因不明の違和感や不可思議といった瑣末な出来事に紛れて、ある出来事がきっかけとなってやがて決定的な破滅につながることがある。その兆候は運良く早期に感知し対処できる場合もあるが、そうでない場合も多い。(それら瑣末な問題の全てに目を光らせ対処するという手もあるが、それは自身の活動を非効率なものとする上に、その過敏さが却って問題となりかねないだろう) そして兆候を感じ取れなかった場合、それはある日突然破滅そのものか、または破滅へのカウントダウンとして知らされることになる。

その時に必要なことは、破滅の後の惨状や、回避できない破滅までの時間、または破滅を回避するために残り少ない時間で片付けねばならない山積みの問題に対して、力強く対処することである。絶望的な状況に立ちすくんでいても状況は悪くなりこそすれ良くなることは無いというなら、無理矢理にでも自らを鼓舞し盛り立て立ち向かうしかない。絶望の中で希望を求めて行動するための「発奮」の意志。それが人に対して「塔」のタロットが示す重要な意味である。

スタンド解説

■落雷で真っ二つに裂けた木の形を象徴するかのような2本のツノを持つ、体長20cmほどの「クワガタ」虫のスタンド。その見た目は本物のクワガタ虫とほとんど変わり無いが、ハサミの間の口には肉食動物のそれのような尖った歯が並び、羽には複雑に歪んだ形状の紋様が描かれている。このスタンド体は、本体グレーフライがその人生で積み重ねてきた肉体的・精神的な活動に伴って生じ、年月と共に大きくなった「歪み」「急所」を顕在化させたものである。そしてさらにこのスタンド体は、自然から突出した存在、例えば高度な科学技術により作られた人工物である飛行機・列車・高層ビルの内部や、人が大勢集まった人ごみなどの中に居る時、それらの「歪み」「急所」にも感応し、その総量が大きいほどにパワーとスピードを増すという性質を持っている。また、このスタンドの通常の射程は数10mほどと推察されるが、ある程度以上の歪み・急所を宿す人工物内ではそれを拠り代として、その内部全体を射程として活動できる。

■「タワーオブグレー」はこの性質を利用して、人工物内に大小存在する構造的・システム的な急所を、樹皮の破れから染み出す樹液の匂いに誘われる虫のように見つけ出し、それらを攻撃・破壊することで、飛行機なら墜落を、列車なら脱線を、高層ビルなら火災をといった、「大事故」の作為的発生を可能とする。(なおその攻撃には後述する口から伸び出る針、「タワーニードル」が用いられる) またこの急所攻撃は人間などの生物に対しても行え、対象生物の体内的致命箇所、それに対して体外から攻撃を加える際の障害物、それらの強度、それへの攻撃による対象生物の痛みやパニックなど精神の崩壊度合いを総合的に計った結果からか、基本的に対象生物口内の「舌」に誘われそれを攻撃する。そしてその攻撃力は前述したとおり、大きな歪み・急所を宿した人工物内を舞台とするほど高くなる。また対象生物が例えば飛行機のパイロットなどであれば、それがその飛行機のシステムの急所として「タワーオブグレー」に認識される場合もある。

■「タワーオブグレー」はその姿形に即した通常のクワガタ虫のような飛行の他に、2つの移動方法を持っている。1つは周囲の空間内に存在する感応対象の切り替えによる瞬間移動。この移動は周囲に人間のようなある程度以上の歪みを宿す存在が多数あるほど自在に行え、またその集団全体の急所を計ることで、それらを一度に大量に攻撃できるポイントを割り出し移動することもできる。もう1つは「タワーオブグレー」が他のスタンドなどから攻撃された際に発動する回避運動。この運動は周囲の存在の歪みの総量と複雑さが増すほど絶対的なものとなり、複雑な歪みを解消しようとする行いが巡り巡っていつまでも終わらないように、「歪みの顕在」であるこのスタンドも、自身を捕えようとする攻撃を異常なスピードでもって回避する。(そのスピードは、本編中での戦闘舞台であるほぼ座席の埋まったジャンボ旅客機内において、「スタープラチナ」の両手のラッシュを難なくかわすほどである) この回避運動を充分発揮できる状況下での「タワーオブグレー」は、おそらく通常のアプローチでは決して捕えられることはない。しかしもし何らかの特殊なアプローチで「タワーオブグレー」が捕えられ破壊された場合、そのダメージ伝達は、グレーフライの体外的急所である舌を真っ二つに引き裂き、体内的急所である頭部を内部から破壊する。(ちなみにグレーフライの舌には、クワガタ虫の形を押し付けへこませたようなアザがある) 

■「タワーオブグレー」は対象の急所を攻撃する際に、そのスタンド体で直接攻撃を行うことは無い。なぜなら、対象の急所に感応する性質を持つこのスタンドが、急所の地点で直接急所を破壊すると、それと同時に自身も少なからずダメージを受けてしまうからである。(なお、スタンド能力に対して一般人より高い抵抗力を持つスタンド使いが相手の場合、前述した瞬間移動能力を用いて、自爆覚悟でその急所に直接転移することも不可能と思われる) このため「タワーオブグレー」は、スタンドエネルギーの累積によって一時的に作り出す、「タワーニードル(塔針)」と呼ばれる武器を「身代わり」にして、間接的に急所への攻撃を行う。「タワーニードル」は、甲殻類の殻のような質感のごつごつした塊が塔のようにまっすぐ連なり、先端は針のようにすぼまり尖った形状を持つ。(その根元から先端までの最大長は、30cm強といったところである) 「タワーオブグレー」はこの塔針をハサミの間の口内から槍を突き出すように撃ち出し、塔針は強力な磁石に引き寄せられる針のように、対象の急所に引き寄せられ急所を突き刺す。塔針の先端部分は急所を破壊すると同時に自身も破壊され消滅するが、塔針はいくらでも再生して伸ばし直せるため、そのまま急所を刺し貫き、人間などの舌ならその状態から引きちぎり絶命させる。

■なお、「歪みの顕在としての精神エネルギー」であるこのスタンドの出現・活動中には、周囲の人間は、徹夜続きで累積する記憶が整理されない時に感じるような意識の混濁に陥り、よほど気を張っていない限りは眠りに落ちてしまう。ただしこれもまた、スタンド効果に対して抵抗力のあるスタンド使いには効果が薄いようである。