ザ・フール THE FOOL:愚者
Tarot-No.0

2009/11/22改訂

本体名:イギー

犬(ボストン・テリア)、♂、高い知能を持つ、プロフィール24巻P89

能力:砂の集合から成る犬型スタンド

スタンド形成法射程距離パワー
無定形集合体 10m程度

告知

タロット解説

ジョジョ第3部に登場する22枚の「タロットカード」は、占いの道具としてよく知られ、それぞれのカードにはさまざまな解釈が与えられている。そしてその解釈には時に、『生命の樹』と呼ばれる図像が絡められる。生命の樹とは、宇宙・生命・人類・個人など、この世界の中で進化・成長する全てのものが、成長する際に辿る変化の共通性を図像化したものである。「セフィロトの樹」とも呼ばれるその図は、「状態」を表す10個の円形「セフィラ」と、円形同士を結び「変化」を表す22本の小径「パス」から成り、タロットはこのパスに対応している。そして22枚のタロットのうち、「更新せしもの」を暗示する「オシリス」のセフィラと、「進入せしもの」を暗示する「ホルス」のセフィラを結ぶ「愚者」は、「開始分野への進入」を暗示するカードである。

タロットにおいて「0番目」という特殊なナンバーを与えられている「愚者」は、「生命の樹」上でも特殊な役割を担っている。「生命の樹」はその名のとおり、パスを伸ばしセフィラで枝分かれしながら成長していく、一本の樹のようなものである。その最初の状態では、1番目のセフィラ「オシリス」だけが「種」のように存在し、その時点ではそれは、360度どの方向にでも成長を始められる可能性を持っている。その360度の中から開始する「分野」を選択し、その方向へと「進入」のパスを伸ばすことで、成長体の成長方向を決定するパスが「愚者」である。なお、「愚者」は分野への「進入」までだけを行うパスでしかなく、進入した分野内で受けることになる刺激と情報の「受容」は、「生命の樹」の中心線を挟んで反対側に位置する「魔術師」のパスにおいて行われることになる。

また、本物の植物の樹が成長の際に、その幹から枝を、枝から小枝を伸ばすように、成長体も成長の際には、自身の生涯全体を司る「生命の樹」から、枝や小枝に相当する部分的・一時的な進入を行い、そこから「小さな生命の樹」である「生命の枝」とでも呼ぶべきものを伸ばす。(ただしそれが「枝」であるのは、あくまで「幹」から見た相対的な視点からであり、その枝自体もまた1つの「生命の樹」であることに変わりは無い) そして当然「樹」と「枝」は、互いに互いの成果を利用し合える。

そして「生命の枝」が伸びる始まりとなる「小さな進入」には、「生命の樹」における、「愚者以外のパス」が大きく関係する。チェスにおいて、自分と相手の1手1手が局面を大なり小なり変えていくように、成長体自身の変化・成長体の働きかけによる分野内の変化・両者の関係の変化など、あらゆる変化は「その状況への進入」を生み出す。例えば成長体が分野内で材料要素を「収集」すれば、成長体はそれらの要素に接触程度に浅く進入し、それらの要素のいくつかに「結合」すれば、それらにのみ更に深く進入する。また成長体と分野内の要素との干渉で新たな要素が「生成」されれば、成長体はそれが存在する状況に自動的に進入する。このように「愚者」以外のパスに含まれる「進入の成分」は、「生命の樹」から数多の「生命の枝」を伸び始めさせることになる。(なお余談ながら付け加えておくと、この「進入の成分」は「生命の樹」の上側のパスにより多く含まれ、一方下側のパスでは広がった「生命の枝」を再び1つの幹へと統合しようとする働きが強くなる) 

また、成長体の分野内への進入には、「浅い」「深い」という概念も存在する。例えばある者が、ある町に住み始めたばかりの時点と、そこで何年も過ごした時点とでは、後者の方がその町に「深く」進入しているといえる。それはその者が自分の住処をスタート地点として、町のあちこちの場所や人間関係に小さな進入を行ってきたからである。そして深い進入と試行錯誤の結果その者は、その町について熟知する解明や、自在に使いこなす卓越を得ることになる。これと同様に、成長体は他のパスが司る変化によって、分野内へと深く進入していき、そうしてその分野内での「完成形」、つまり成長体が分野内の全要素としっかり歯車を噛み合わせ、分野内で自分の個性と影響力を発揮しながらも自然に溶け込んだ状態へと近づいて行く。

我々人間には、本能に大きく支配される動物と違って、自由に思考できる「精神」というものが備わっており、それによって自らを自由に行動させることができる。しかしその一方で人間もまた動物の一種であり、本能的な欲求や恐怖に支配される動物的な側面も備えている。人に宿るこの「自由側面」と「被支配側面」は、奔放な「旅人」と、それに付き従う「飼い犬」に例えることができる。旅人は思うまま自由にどこにでも行けるが、あまりに考え無しに進みすぎれば、自身を危険や取り返しの付かない状況に陥らせてしまう。一方、飼い犬が本能的危険を感じてそれ以上進みたがらない所には、旅人も進むことはできず、また本能的欲求で飼い犬がある場所から離れたがらなければ、旅人もその間動くことはできない。

また、この被支配側面となるものは動物的な本能だけではない。自分が過去に学習して得た、確実性が高いと信じる判断基準や経験則もまた、自分自身を大きく支配することになる。これらの被支配側面に従った行動は、それなりの確実性で自分を、危険からの回避やそれなりの成果などに導いてくれる。逆に自由側面に従った行動は、まだ確たる基準が得られていないがゆえに、手当たり次第な試行錯誤や一貫しないちぐはぐさに満ち、頻繁に自分を失敗や危険へと導き、それらはさながら自分が道化にでもなったかのような、滑稽さと居心地の悪さを感じさせることになるだろう。

しかし被支配側面の正しさはあくまで、「過去の自分」「過去の分野」「過去に進入した深さの範囲」のものでしかない。「新たな自分」「新たな分野」「新たに進入した深さの範囲」には、その状況により適合した「更なる解明や卓越」が秘められている。そしてそれを得るには、失敗や危険に振り回される道化のような段階を必ず経なければならない。無論、自由側面に従ったからといって必ず更なる解明や卓越に辿り着けるとは限らず、ある選択において自由側面と被支配側面どちらに従うのがより得策であるかは個々のケースに依るだろう。それでも一つ言えるのは、人間という最も強く自由側面を発揮してきた生物が、地上の覇権および他の生物と次元を隔した高等な精神を獲得している事実は、自由側面を発揮することの圧倒的な力を証明しているということである。

人は困難な事柄に挑むか逃げるかの選択の際、挑む危険や成功率の低さを警告する心の声と同時に、それから逃げること、または逃げるために行わなければならないことに対して、「恥」を警告する心の声を聞く時がある。そのような時でも、失敗した場合の損害が大きすぎると予想されるなら、恥に構わず逃げることも一つの現実的な選択ではある。しかしその一方で、挑むことを求める内なる声に耳を閉ざすことを繰り返し、その時に味わう恥の痛みに鈍感になっていくほどに、その心は精彩を失い、人生全体において挑むことに消極的になり、成長から遠ざかっていくのも確かである。心の損失は物質的・肉体的な損失に比べて決して軽いものではない。むしろ心は目に見えないがゆえに、少しずつ失われていっても気付きにくいがゆえに、過剰なくらいに大事に守っていかなければならないものなのである。自分の生をより謳歌するため、自分の心の活力・高等さ・可能性を守るため、危険と失敗を厭わず茨の道を選んでいく「高邁」さ。それが人に対して「愚者」のタロットが示す重要な意味である。

スタンド解説

■砂・チリ・ホコリ・微粒子といった、「粒状物質」が集まって形作られる「砂のスタンド」。その基本形態は、未開の部族が被る円形の仮面のような顔、犬の前半身と、後足がタイヤになった後半身を備えた姿である。またその基本サイズは、小型犬種の本体イギーに比べて2回り以上大きく、中型犬〜大型犬くらいである。そしてそのスタンド体は、無定形の砂の集合であるがゆえに、さまざまな姿への変形・変身を可能とする。

■いわゆる「精神エネルギー」であるスタンドエネルギーを、物質に作用する超能力として使用するには、まず精神エネルギーをその本来あるべき精神の領域から、物質の世界へと「進入」させる必要がある。しかし精神エネルギーを物質世界に引っ張り出したその状態は、浮き袋を水中に押し込んで無理に沈めたかのような状態であり、このため出現させているスタンドエネルギーの量が大きいほどに、または長時間スタンドを出現させるほどに、本体には大きな負荷がかかっていく。基本的に近距離パワー型のスタンドは、本体にかかる負荷が大きいために何分も連続して出現させ続けることはできず、時折いったん引っ込めて一呼吸入れてから、出現させなおす必要がある。逆にパワーの低いスタンドや能力であれば本体にかかる負荷も小さく、何分何10分と連続して出現させ続けることも可能である。(なおスタンドの出現状態の維持には、本体の肉体的・精神的コンディションも影響し、本体が肉体的にダメージを受け過ぎたり精神的に強い意志を保てなくなると、スタンドは物質世界に留まりきれずに精神の領域へと引きずり戻されてしまうか、そのパワーを大きく減じるかしてしまう) 

■また、スタンドを物質世界に長時間留め置く別の手段として、周囲の「物質」を利用するという方法もある。スタンドエネルギーを物質に細かく絡み付かせればそのスタンドは、本体に大きな精神的負荷をかけることなく、より長く物質世界に留まれる。さらに物質に対してスタンドエネルギーを根を張るように融合させれば、スタンドの出現持続時間はさらに伸びる。ちなみにこれと同様の効果は、物質以外の存在、例えば他者の精神やスタンドに「取り憑く」ことでも得られる。

■スタンドはその本体が能力に目覚めたばかりの段階では、姿や能力がまだはっきりとは定まっていない場合が多い。そしてこの「荒削り」な状態のスタンドはその後、本体の意思によって能動的に変化し、またその一方で、物質世界の中でスタンドパワーを用いて可能なことの限界によって受動的に変化させられる。そしてそれらの過程を経てスタンドの姿と能力は洗練され、「完成形」へと近付いて行くことになる。(ただしあくまで精神エネルギー体であるスタンドは、物質のように完全に1つの姿に定まることは無く、常にある程度の不確定さを残し続ける) 

■またスタンド体は、本体の意識が集中する部位ほど、強く物質世界へと進入して高いパワーを発揮でき、逆にそれ以外の部位はあまり強く物質世界には進入せず、パワーが低くなるという性質を持つ。基本的に人型スタンドにおいて、最も強く物質世界に進入するのはその「両手(両拳)」である。これは人型スタンドが物質への念動力的作用を主眼としていること、そしてその作業においては両手こそが最も意識を集中させやすく、かつ器用さとパワフルさを両立できる部位だからである。なお、生身の人間の肉体では、「脚」の力は腕の力の約3倍と言われるが、人型スタンドでは上記の理由から、必ずしも脚の力が腕の力を上回るとは限らない。人型スタンドの各部位に対する本体の「意識の割り振り」は、必然的に上半身に集中されやすく、また特殊能力を持つタイプの人型スタンドでは、その能力に割かれた分のパワーのしわ寄せが下半身に向けられやすいからである。ただしその逆に、はちきれんばかりのパワーで全身が満たされているタイプの人型スタンドでは、腕と脚の力の比率は人間の肉体のそれに近づくことになるだろう。

■イギーがザ・フールを出現させる際には、まず「素」の状態のスタンドエネルギー、不可視にして無定形のエネルギーを物質世界へと進入させ、周囲の空間へと展開する。それの持つ力は非常に弱いものの、砂粒以下のサイズの粒状物質程度なら「掴む」ことができる。そしてそのスタンドエネルギーは、鉄棒にぶら下がった人間が腕の力で体を引っ張り上げるように、粒状物質を掴んでより多くのスタンドエネルギーを物質世界へと引っ張り出す。そしてそのスタンドエネルギーはより多くの粒状物質をより強く掴んでさらに多くのスタンドエネルギーを引っ張り出し、この繰り返しによってザ・フールは、高パワーの犬型スタンドを形成できるだけのスタンドエネルギーを物質世界に進入させる。

■また、粒状物質に絡み付いたザ・フールのスタンドエネルギーは、棒の先端に水飴を球状に絡み付かせるかのように、粒状物質を核としてそれより何回りか大きい球体を作り出す。そしてこのスタンドエネルギーの球体は、物質に作用できる力を持った「力場」として働く。その1つ1つの力は非常に微弱だが、数多のそれらが集まって結合すれば、それは大きな力を持って攻撃・防御に使用できるほどになる。なおこの「力場」の効果によって、ザ・フールが取り込むミリ単位の砂粒からミクロン単位以下の微粒子までは、その個々のサイズの違いに影響されることなく、ザ・フールのスタンド体の形成に寄与できる。つまり、例えば微粒子の力場が100個球形に結合して作り出した力場が、砂1粒で作り出した球形の力場と同サイズになる時、ザ・フールは両者を同等のものとしてスタンド体の形成に利用できるわけである。そしてさらにザ・フールはこれら球形の力場を、今度はセンチ以上のスケールでビーズ細工のように結合させ、殻状のパーツ・チューブ状のパーツ・袋状のパーツなどとして作り出し、それらを組み立てて犬型スタンドの姿を形成する。(またその犬型スタンドの体内には、結合力を与えず液体状にした「流砂状のスタンドエネルギー」が貯蔵され、これは後述するザ・フールの動作に活用される) 

■「力場のパーツ」を組み立てて作られているザ・フールのボディは、形成に本体身体を利用しておらず、従ってスタンド体がダメージを受けても本体には一切ダメージを返さない。(またこの性質によりザ・フールは、本体イギーの身体の一部が欠損したとしても、その影響を受けずに全身体のスタンドであり続けられる) また通常の人型スタンドでは、その胴体などは物質を簡単に「透過」させてしまうが、粒状物質を利用した力場で作られているザ・フールは、全身に渡って物質を透過させることはない。しかしその反面ザ・フールは、この特殊な形成手法に多くのエネルギーを割かれてしまう。そしてその状態で近距離高パワー型のスタンドとして活動するため、ザ・フールの基本形態は、スタンド体の前半身側が複雑でパワフルであるのと引き換えに、後半身側は単純でおざなりになっているという特徴を持つ。

■ザ・フールのボディにおいて、最も複雑な構造をしているのは「前足」であり、普通の動物の前足のように筋肉が複雑に入り組んで出来ている。そしてこの筋肉は、上述した「力場のパーツ」の形成手法により、風船のような「袋」状のパーツを作り出し、これに「流砂状のスタンドエネルギー」を流し込んで膨らませたり、逆に抜き出してしぼませることで、筋肉の収縮・伸長と同等の働きを行わせている。(ザ・フールの前足に巻き付くように張り巡らされている何本ものチューブ状のパーツは、エネルギーの流し込み・抜き出しを行うためのものであろう) またその前足の指先は、ザ・フールのボディの中で最も高密度にスタンドエネルギーを集中させることができる箇所であり、そこからは鋭利に尖った鉤型の「爪」を出すことができる。

■ザ・フールの「頭部」は、構造的には前足よりもかなり単純であるものの、前足に次いで複雑な外観を備え、仮面のようなその顔の鼻・上あごから下あごにかけては、イヌ科の獣のように突き出し、口の中には尖った牙が並んでいる。ただし、力場のパーツでは「眼球」や「耳」のような高度な感覚器官は作れないため、その顔は目の部分にはただ穴が開いているだけで、耳も付いていない。(ちなみにその仮面の頭部の上部には、羽飾りのようなものが何本も放射状に伸びているが、あるいはこれが空気の振動を感じ取り「耳」の代用となっているのかもしれない) 次いで「胴体」は、構造的にもデザイン的にもかなり単純であり、球体に近いその外観は、可動性よりも硬く形態を維持することを主眼としたような造りである。(あるいはこの胴体部は、前足の筋肉へのスタンドエネルギーの送り込み・抜き出しをパワフルに行うためのタンク・ポンプとしての役割を持ち、そのような機構が内蔵されているのかもしれない) 

■そしてザ・フールの後足は、上述したように「タイヤ」へと置き換えられて形成されている。この理由は、前足から前半身の形成でかなりのスタンドエネルギーを費やしたその残りのエネルギーで、前足同様に複雑な筋肉構造を備えた後足を形成しようとすると、かなり脆弱なものしか作れず、それならば単純な形状のタイヤにしてしまった方が、総合的に見て有利だからであろう。幅広で厚みのあるそのタイヤは、それなりの衝撃吸収性能を有すると推測され、また(26巻P36で見ることができる)左右各4本ずつの棒状部品によるタイヤと胴体の連結構造は、F1カーの前輪のそれに似ている。そしてこのタイヤは、ザ・フールが前足で地面を蹴って前方に駆ける際には、進行方向に向きを合わせてスムーズに転がると同時に、ボディが上下動する衝撃を吸収し、前進の勢いを極力殺さない役割を果たす。

■そして最後にザ・フールの最後部である臀部には、りんごをかじった跡のような窪みがある。この窪みの外観は一見、ジェットエンジンの噴射口のようにも見えるが、ここからは別に何も出ない。この窪みはおそらく、後部に向かうほど強度が落ちていくザ・フールのボディにおいて、外殻の強度維持を優先しつつ最後部を形成した結果、最後端の部分だけが強度を保てず崩れ、木の「うろ」のようになっただけと思われる。

■ザ・フールの砂のスタンド体は上述したとおり、粒状物質にスタンドエネルギーを絡めて何回りも大きくした球体の力場を基に作られている。つまりザ・フールのスタンド体の形成には、その見た目上の体積と同量の粒状物質は必要なく、周囲からかき集められる粒状物質の総量がコップ1杯分に満たなくても、スタンド体を出現させるだけなら充分可能なようである。(ちなみに粒状物質は当然地面や床面に最も多く溜まっているため、ザ・フールが出現する際には、地面から砂の山が盛り上がるかのような現れ方をする) そしてこれに関連してザ・フールは、体内の粒状物質とスタンドエネルギーとの量の比率を、かなりの幅で調節可能である。取り込む粒状物質の量を多くすれば、その体はより強固に固められ、攻撃力・防御力ともに増大するが、反面動きは鈍くなる。逆に取り込む粒状物質の量を少なくすれば、その体は軽くなりスピードが増すが、反面攻撃力・防御力は低下する。

■屋外で数秒足らずの間にかき集めた粒状物質を基に出現させた、普通の砂密度のザ・フールの防御力は、銃弾や人型スタンドの殴打を受けた際に、それに破壊されつつも本体イギーまでは届かせることなく防げるといったところである。そしてザ・フールのボディは破壊されても、数秒足らずで再結合して再生可能である。このためザ・フールの、イギーを守る防御壁としての強さは(スタンドのダメージがイギーに返らないという点も含めて)相当に高いといえる。(ちなみにアヴドゥルのスタンド「マジシャンズレッド」の「炎」であれば、ザ・フールのボディの結合を「熱」のエネルギーで解体し、無力化してしまうことが可能なようである) 

■ザ・フールが前足にパワーを込めて敵を攻撃する際の動作モーションは、その構造上少し特殊である。上述したようにザ・フールの前足は、筋肉を模した袋状のパーツを組み立てて作られている。ザ・フールは攻撃時にはこの前足を、付け根の肩から手首まで大きく曲げて構え、次いで前足の袋状のパーツの全てに瞬間的に大量の「流砂状のスタンドエネルギー」を送り込み、それによって前足が一直線にぴんと伸びる勢いで攻撃する。このため攻撃時のザ・フールの前足は、丸めた紙の筒に息を吹き込んで伸ばすおもちゃの動きと、プラスチックの定規を指で曲げて離した時の打ち付ける動きとを、複合したような動作モーションを取ることになる。そしてこの瞬間的なスタンドエネルギーの流入により、前足の先端の行き止まりである爪には、スタンドエネルギーが瞬間的に集中して硬度を高め、それでのひっかき攻撃は敵の肉体を深く切り裂くほどの力を発揮する。なおザ・フールはこの他に、口に並ぶ「牙」も爪同様に尖っており、またその上あご・下あごが袋状のパーツのような外観であることから、(作中では行っていないが)この上下の牙での噛み付き攻撃も可能であると推測される。

■ザ・フールは本来無定形の砂の集合であるため、上述した基本形態の他にも「変形」や「変身」を可能とする。そしてその変形・変身は単に、イギーが頭の中で思い描く「イメージ」だけを基に行われるわけではない。ザ・フールの変形・変身は、イギーが現在置かれている状況と、その状況からイギーが「どういう状況へ向かいたいか」を基に、そこに「進入」し、その状況に「適応」するべく、半自動的にスタンド体の肉付け・削り落としが行われて「造形」されるという性質を持つ。

■例えばイギーが「空を飛ぶ」ことを望めばザ・フールは、体内に取り込んでいる粒状物質を、強度を保てる最低限まで削ぎ落として軽量化しつつ、後輪部を空気を受ける大きな皮膜状の翼へと変えて「グライダー」へと変形し、イギーを乗せて紙飛行機のように滑空する。またイギーが「水底に長時間留まる」ことを望めばザ・フールは、ドーム状になってイギーを内部に収めて水底に張り付き、周囲の粒状物質を最大限に取り込んで水が浸入しないように外壁を強化、さらに水面へとストロー状の空気管を伸ばして、「潜水ポッド」へと変形する。

■またザ・フールはこの「進入適応造形」を、周囲の環境に最大限鋭敏に反応するように行わせることで、犬型スタンドとしての姿を完全に崩し、その場所や状況に応じた物質へと「化ける」ことも可能とする。この変身時のザ・フールは、屋外・屋内を問わずその場所に応じて、それらとちぐはぐにならない形状へと化けて、風景に溶け込める。(そしてこの造形法は、化けた砂の塊の中に本体が隠れるなどの手法で活用される) ちなみにこれに関連して、ザ・フールを作り出している、粒状物質を核とするスタンドエネルギーの力場は、「可視光線」の反射・吸収を、おそらくは通常の物質と大体同様に行える、つまりザ・フールはスタンド使い以外の一般人にも見ることができると考えられる。そしてこの性質は「化ける」時にはより顕著になり、変身する対象の「色」や「質感」までも、(作中の描写から考えて暗がりで見破られない程度には)真似ることができる。

■そしてさらにザ・フールのこの変身能力は、その場にいる人間が見知っている「人物の姿」に化けて、その場の人間を欺くことさえも可能とする。この場合には、「周囲の環境への鋭敏な反応」をさらに一歩進めた、「周囲の人間の精神への鋭敏な反応」が行われる。つまりその人物の造形を行うのは、その場に居る者全員である。この造形法で作られた人物は、髪に至るまで微細に造形され、自然な立ち居振る舞いで動き、その状況に合わせた言葉まで発する。このため、それの挙動からそれが偽者であると見破るのは非常に困難である。また、ザ・フールは本体イギーの「影武者」にも化けることができるが、この際には単に自分の肉体の姿をそのままスタンドに複製させているだけであろう。

■本体のイギーは犬であるため「嗅覚」が非常に鋭く、隠れて攻撃してくる敵や逃げた敵に対しても、匂いによる探知・追跡が可能である。またイギーは、自分の意思や選択に感応して変幻自在に変化するザ・フールのスタンド能力が優れた知育玩具として働いたのか、人間の言葉を理解するほどの知能を獲得している。なお人語を解するイギーは、ザ・フールの口内に多少の労力を費やして人間並の「声帯」を組み立て、さらに多少の発声訓練を行えば「喋れる」ようになるはずだが、イギーはそれを(必要ないと考えているのか)行っていないらしく、そのため喋ることはできない。

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