マジシャンズレッド
MAGICIAN'S RED:魔術師の赤
Tarot-No.1
本体名:モハメド・アヴドゥル
占い師、プロフィール20巻P26
能力:炎を吐き出し操る人型スタンド
スタンド形成法 | 射程距離 | パワー |
---|---|---|
身体・能力加形体 | 2m | 高 |
告知
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タロット解説
ジョジョ第3部に登場する22枚の「タロットカード」は、占いの道具としてよく知られ、それぞれのカードにはさまざまな解釈が与えられている。そしてその解釈には時に、『生命の樹』と呼ばれる図像が絡められる。生命の樹とは、宇宙・生命・人類・個人など、この世界の中で進化・成長する全てのものが、成長する際に辿る変化の共通性を図像化したものである。「セフィロトの樹」とも呼ばれるその図は、「状態」を表す10個の円形「セフィラ」と、円形同士を結び「変化」を表す22本の小径「パス」から成り、タロットはこのパスに対応している。そして22枚のタロットのうち、「更新せしもの」を暗示する「オシリス」のセフィラと、「受容せしもの」を暗示する「ゲブ」のセフィラを結ぶ「魔術師」は、「刺激と情報の受容」を暗示するカードである。
「愚者」のタロットで選択された分野へと進入した成長体はまず、卵から孵化した雛鳥が陽光や外気に晒されるように、分野内に存在する種々様々な「刺激」に晒されなければならない。またこれらの刺激は、それを通じて外界の出来事を知覚するための「情報」でもある。そして成長体は、自らの獲得している「耐性」と「機能」とによって、これらの刺激と情報を「受容」できるか試みることになる。もし受容が充分に行えるならば、成長体はその分野内に留まり、成長を開始することが可能となる。逆に受容が不充分な場合は、成長体はいったん「オシリス」のセフィラへと退却し、再度「愚者」による進入分野の選択を行うか、または退却が不可能な状況の場合、受容しがたい分野内で非常に苦しい活動を強いられてしまうかすることになる。
成長体にとって刺激と情報の受容は、二つの面で重要である。一つは刺激に耐え、自らの生存を維持すること。例えば生息地を移動した生物が、その土地の気候や外敵などに耐えられなければ、成長どころか生存すら困難となってしまう。この面において成長体に必要なものは、刺激に耐える「逞しさ」である。しかし反面それは、刺激という情報をフィードバックしてそこから学ぶことができない「鈍さ」にもつながる。もう一つは情報を最大限に得て、自らの成長の足がかりとすること。例えば天文学者が観測器具を用いて星々を観察する際には、より高い精度で星の位置を測れるほど、より暗い星をも捉えられるほど、観測された情報からより大きな成果を得られる可能性が高くなる。この面において成長体に必要なものは、刺激に対する「鋭敏さ」である。しかし反面それは、刺激への過剰な反応を示す「脆さ」にもつながる。以上を踏まえて成長体は、生存に関する面では逞しさを、成長に関する面では鋭敏さを両立する構造であることが求められる。(実際ほとんどの生物においてこのことは、体表面の大半を占める逞しさ重視の外皮と、体表面に占める割合は最低限ながらも、外界からの必要な刺激を最大限に捉えられるよう配置された、鋭敏さ重視の目や耳など知覚器官として実現されている)
また、成長体が外界の情報の受容を高等に行うには、情報を時間的・空間的に「連結」する機能も必要となる。最も単純な情報の受容は、0次元の「点」での受容であり、例えば空気の振動は「音」として、光の波長は「色」として受容される。しかしこれだけでは外界の情報はせいぜい、周囲の喧騒や明るさ程度としてしか認識できない。このため成長体は高等なものであるほど、様々な手法によって「点」の情報を連結する機能を獲得しているのが普通である。この連結の機能によって、例えば記憶された音の連結は1次元的な「言葉」となり、網膜の平面上に映る色の連結は2次元的な「映像」となり、左右の網膜の視差の連結は映像に奥行きを与え3次元的な「立体像」となるわけである。
なお、成長体は情報を受容した時点では、その情報に秘められた「意味」や「力」、つまりその情報がいかなる因果関係・必然性・原理のもとに発生したものなのかを、理解できる必要はない。赤子にとって親から話しかけられる言葉はまだ理解できないものであり、観衆にとって魔術師の見せる不可思議な現象はタネや仕掛けが不明である。情報の背後に秘められた意味や力の解明は、「生命の樹」のさらに先のパスによって行われることであり、「魔術師」の本分はあくまで表層的な情報の受容のみである。しかしもし情報の受容がおろそかであれば、当然そこから正しい結論に至ることも難しくなる。つまり「魔術師」のパスは成長のための第一歩として、重要な役割を担っているのである。
人が未知なる物事を始める際、当然ながらそこで得られる刺激や情報は、未知のものが大半を占めている。それゆえに最初のうちは人は少なからず、炎天下のアスファルトを熱いと知らず触る子供のように、未知の刺激の強さに傷つけられ、学校で九九の表を覚えさせられる時のように、未知の情報の多さに混乱させられることになる。しかしこの過程は痛みや面倒を伴うからといって、避けたり省いたりしてはいけない。この過程を回避し放置すれば、それはその者と外界との間に克服されない「壁」として残る。土中で石ころに囲まれた木の種が、石ころを押しのけて幹と根を伸ばし出す力強さを持たなければ、その木の成長は石ころを避けるがゆえにねじくれ、石ころに阻害されるがゆえに弱々しいものとなってしまう。これと同じように物事の最初の段階で横着すれば、それはその先の成長全てに悪影響を及ぼしてしまうことになるのである。まっすぐ力強く成長していくための第一歩として、目の前の最初の困難をまっすぐ力強く乗り越えんとする「熱意」。それが人に対して「魔術師」のタロットが示す重要な意味である。
スタンド解説
■格闘家のように逞しい肉体と鉤爪の生えた手、大きく見開かれた眼と大きな嘴を開く猛禽の頭部を持つ人型スタンド。そのスタンド体は、人知の及ばぬ法則を用いて人に進むべき道や心の真実を告げ与える「占い師」である本体アヴドゥルの精神を反映し、人の精神と肉体に秘められた「生命」の法則と力を、いわゆる超能力的なエネルギーに変換し物質に与える力を持つ。この「生命エネルギーによる物質への干渉」自体は、「マジシャンズレッド」に限らず全てのスタンドに共通することではある。だが「マジシャンズレッド」におけるその力は、非常に根源的かつ原始的であるがゆえに、非常に微細かつ直接的な刺激のエネルギー、光と音を伴った原子レベルの刺激によって物質に破壊をもたらす「炎」のエネルギーとして操られる。
■いわゆる「精神エネルギー」であるスタンドエネルギーは、物質による物理的なエネルギーとは全く別のエネルギーである。物質による物理的なエネルギーは、物理法則の支配するこの世界全体で通用する力である。それゆえに真空・無重力の状態で静止した物質を押せば、その物質は押された速度で世界のどこまでも進んでいく。これに対してスタンドエネルギーは、そのスタンドの「本体」を中心とする限定された範囲でのみ通用する力である。このため、同じく真空・無重力の状態で静止した物質をスタンドで押した場合、物質の速度はスタンドの本体からある程度の距離までは維持されるが、それを越えると急激に遅くなり、やがて完全に停止することになる。そしてこの性質は、スタンドで押した物質がビリヤードのように別の物質にぶつかりその物質を押す場合にも、当然同じ性質、本体から離れるほど弱まるエネルギーとして伝えられる。
■また、精神エネルギーであるスタンドエネルギーは、他の物体を攻撃するなどしてエネルギーを伝える際、相手方の物体が宿す精神エネルギーの「抵抗」により、その力を「減衰」させられるという性質も持つ。このためスタンドエネルギーは基本的に、精神エネルギーを宿さない非生物に対してのみ100%の効力を発揮でき、逆に、精神エネルギーの結晶であるスタンド能力者の肉体に対しては、その効力をかなり落としてしまうことになる。(ちなみにスタンド能力を持たない一般人の抵抗力は、だいたい非生物とスタンド使いの中間くらいのようである)
■「マジシャンズレッド」が生み出す「炎」のエネルギー、原子レベルの高運動エネルギーは、それに触れた物質表面の原子レベルでの結合を破壊し、また原子から原子へとビリヤードのようにエネルギーを伝えることで、物質内部へと破壊を進め、または周囲の気温を上昇させる。(その熱が充分な力を発揮する有効射程は、本体から10m程度といったところのようである) スタンドエネルギーであるその炎は、それを受容する感覚を持たない一般人には見ることはできず、ただ直接的間接的に熱のエネルギーを受けた時にその熱さを感じられるだけである。(ただしその炎を受けた物質自体が「発火」すれば、当然その炎は一般人の目にも見える) なお、アヴドゥルが炎の能力を解除すれば、これらの炎と熱は間接的に伝播していたものも含めて瞬時に消滅し、間接的に発火していた物質の炎もかき消えることになる。
■「マジシャンズレッド」の炎の火力は、精神エネルギーを宿さない非生物に対しては、鉄をも容易く溶かせるほどに強い。しかしスタンドやその本体に対してはその火力ははるかに落ち、肉体を瞬時に炭にできたりはしない。ただしそれでも最大火力の技をまともに食らわせれば、全身火傷で再起不能に陥らせるくらいは可能である。
■「マジシャンズレッド」の炎は基本的に、スタンド肉体の動作に伴う「刺激」として生み出され、操られる。例えば「マジシャンズレッド」が攻撃を繰り出せば、その拳や脚に「炎」がまとわり付くように発生し、攻撃対象に打撃の他に熱のダメージも与えることができる。ただしこのタイプの炎は、単純な物理攻撃に伴うものであるがゆえに、複雑に操ることはできず、また攻撃動作が終わるとすぐに消えてしまう。「マジシャンズレッド」の炎の能力の真価は、その「口」から紡ぎ出される「言葉」に伴う炎として発揮される。
■「マジシャンズレッド」はその口から紡ぎ出す言葉を、魔術師の呪文が魔法の力を生み出すように、言葉に宿る神霊的な力とされる言霊のように、「言葉の炎」として吐き出すことができる。この炎は、言葉が1次元的な音の繋がりであるように、基本的に「紐状」の形に生み出され、魔法の効力のように比較的長時間持続させられる。(なお後述する一部の技を除いて、この炎が明確に「文字」として読み取れる形を取ることは無い) この炎は単純な使用法としては、数メートル離れた敵に直接吐き浴びせて、敵を吹き飛ばすとともに熱のダメージを与える中距離攻撃として利用される。そしてさらにこの言葉の炎は、紐細工のように2次元的・3次元的な姿に組み上げることもでき、その形状に応じて破壊力や探知力に秀でた利用も可能となる。(詳しくは下記の使用技を参照のこと)
■使用技■
- ◆レッド・バインド(赤い荒縄)◆
- スタンドの口から吐き出した縄状の炎を操る技。鞭のように振り回して敵に巻き付けたり、敵の首を締め上げたりする。この炎は見た目には通常の紐状の炎と太さは変わらないようだが、「縄」と銘打たれていることから、あるいは通常の炎より強度が高いなどするのかもしれない。
→13巻「スタープラチナ」戦、19巻「ジャッジメント」戦 - ◆クロスファイヤーハリケーン◆
- XY平面座標を表すかのようにX字に交差させた前腕の間の口から、身長ほどもあるアンク形の炎を吐き飛ばす技。「マジシャンズレッド」が生み出す炎の中で最強の破壊力を持つ。(ちなみに「アンク」は十字架の上の出っ張りを輪に置き換えた♀に似た形の文字で、古代エジプト語で「生命」の意味を持つ) この炎塊はもはや固体と言えるほどの強度を持ち、火力の凄まじさも相まって、地面を焼き進みトンネルを掘ることも造作なく行える。また、この炎塊をさらに6〜7つのアンク形に分裂させて飛ばす応用技、「クロスファイヤーハリケーンスペシャル」もある。
→14巻「シルバーチャリオッツ」戦 - ◆生物探知機◆
- スタンドの口から吐き出した炎を、大きな球体を持つかのように構えた両手のひらの上で、立体的に組み上げることで形作られる探知機。XYZ立体座標のように前後・左右・上下に直交する3本の線状の炎の先端6箇所に、それぞれ大きな炎が灯された構造を持つ。この探知機は、半径15m以内の物体の動きや生物の呼吸に反応してそれに近い炎が激しく揺れ動く性質を持ち、隠れている敵やスタンドなどの発見に役立てられる。
→26巻「ティナーサックス」「クリーム」戦