第6章  成果と今後の課題
 
1 成果について
 
(1)今まで自分に見えていなかった部分が見えてきた点
  ・筆者は、自分独特の視点(モノサシ)で児童を見ていた。その視点(モノサシ)を知ることができた点。また、その視点(モノサシ)を知ることが、児童指導上大変重要であるということが分かった点。
  ・エゴグラムによる性格分析で、児童指導中の教師や児童のこころの状態を知ることができた点。また、理想の教師像と自分の性格分析に関して、それぞれにこころの状態にはプラス面やマイナス面とがあり、児童指導上それらをうまくコントロールしていかなければならないと、分かった点。
  ・子どもが教師をどのように見ていたのかを調べることができ、自分の指導の長所や短所を知るなど、自己反省できた点。
 
(2)これからの児童指導に必要なことを考えることができた点
  ・教師の一方的な価値規範で子どもに接するのではなく、まずその子の内面に迫るような指導をしていく必要があるという点。
  ・「能動的な聞き方」「わたしメッセージ」「第V法(勝負なし法)」という技術を学べたという点。
  ・児童指導を考える上で、様々な本を指導担当教官である川原先生から紹介していただいた点。
    現場に戻り、指導で悩んだり、行き詰まったりした時に、もう一度読み返すことができる。またこれからも、児童指導関係の本を自分で探し、今後の研修に役立てたいと思う。
  ・児童指導という言葉について、改めて考えられた点。
    指導=ガイダンス。ガイダンスはガイドからきている。そこで、バスガイドから児童指導上必要なことを考えることができたのである。
    川原先生は次のようなことを話されていた。
     「よいバスガイドとは?バスガイドに求められることは、一体何であろうか?まず、知識や素養がなければ勤まらないだろう。もう一つは、集団をまとめ、上手に個別対応する能力であろう。同じバスに乗った人を、和気あいあいの雰囲気にし、みんなに連帯感を持たせるよう上手にまとめる能力である。お客さんの中には、集団行動をしていても、トイレに行きたいとか、買い物をしたいと、言い出す人がいる。そのような人の心を満たしてあげて、うまく個別対応していく能力が必要である。これらの能力が備わっていれば、お客さんにとってよいバスガイドさんということになるだろう。」
    お客さんを児童に、バスガイドさんを教師にたとえて考えてみると、児童指導の考え方が見えてくるような気がする。筆者も児童を集団としてまとめながら、個別対応もできるような教師を目指したいと思う。
 
2 今後の課題について
 
(1)教師どうしのチームワーク
   教師であれば誰でも、子供をしっかり育てたい、子どもをよくしていきたい、と考えているはずである。目的は同じであるが、教師にはそれぞれ個性があるので、子どもへの対応の仕方は違ってくる。厳しく叱ることが得意な教師もいれば、やさしく諭すことが得意な教師もいる。また年代も様々であり、20代の教師もいれば、50代の教師もいる。それぞれの教師の長所を生かして、お互いの足りない部分を補い合って子どもたちに対応していければよいと思う。
   例えば、「あの先生があなたに対して厳しく叱ったのは、あなたのこういうところが原因だったのよ。」などと、お互いの教師を決して否定するのではなく、うまくチームワークを組んで指導していければよいということである。そのためには、日頃の教師間の人間関係が重要になってくる。教師どうしの関係がうまくいっていなければ、よりよい児童指導はできないであろう。
   また、自分一人では指導が難しいと感じた場合は、同僚の教師と一緒に指導に当たることも必要だと思う。全てを自分の責任と考えたり、何でも自分一人で抱え込もうとしたりせず、みんなで子どもを良くしていこうという考えで、児童指導に当たっていきたいものである。
   さらに、教師同士がもっと自分の負の部分を出し合って、みんなでどうすればうまくいくのかを考え、支え合っていくような雰囲気作りができればよいと思う。
   自分の指導でうまくいかなかったことを自由に話すこともできず、たとえやっとの思いで話せたとしても、それに対して職員間で非難し合っていては何の解決にもならない。しかしある程度経験年数を重ねてくると、自分のうまくいかなかったことを人前で話すことには、少々抵抗を感じてしまうこともあると思う。教師という役割を背負っていることで強い責任感をもち、自分で抱え込んでしまうことも多いと思う。
   指導力不足などという言葉が、最近特に新聞紙上をにぎわせている。こんな事を話したらみんなは自分のことを指導力がないと思うだろうと不安になり、余計に話せなくなってしまうかもしれない。
   自分の弱みをさらけ出し、みんなと協力して解決できれば、また次のステップを踏むことができる。自分の指導にも自信がついてくるだろう。また自分の弱みを見つめられれば、子どもに対しても弱い部分に目がいき、上手に関わることができるかもしれない。
   教師が生き生きと指導することができるような雰囲気作りを、学校現場で実践していく必要がある。「生きる力」とか「自主的に学ぶ姿」などということを、まずは教師の側から実践していかなければならないと思う。
 
 
 
 (2)学校現場での実践
   私は自分の指導の特徴に気づくことができたり、様々な失敗例から成功させるための方法や技術を学んだりすることができた。これからは現場での実践で、いかに自分を変化させていくことができるかが課題である。
   児童の言動を目の当たりにしたときに、この子はどんな気持ちでそんなことを言ったり、行動したりしているのだろうと、考える訓練を続けることが必要になってくる。また、子どもと話をしている時に、子どもがポロッと言った一言に真実がある。そこを見抜くことができれば、また、感情的にならず、冷静に対応することができれば、一歩成長したことになる。今まではすぐにカッとなってしまい、失敗することが多かった。これからは一歩引いて考え、言葉の意味合いに含まれているものを知る練習をしていく必要がある。
   内留で学んだ知識が、現場で生かされなければ何の意味もない。今までの自分の指導を謙虚に反省し、実践していく中で、ひとりでも多くの児童とよりよい関係を作り上げていきたいと思う。