これもすべて同じ一日
いつの日も、歩きつづける道の途中で、時々こうしてこのような形で出会えることを幸福だと思います。私が私の願いをみつめるようにあなたがあなたの願いをみつめていると、(たとえそれが無意識でも)遠くから信じることができれば、それこそがたったひとつの私の愛の形なのです。結局は、上も下も右も左も空も海も恋も涙も、ありそうでないのだから、小さな言葉が胸の痛みで同時にそれを超えた何かであると、いちいち気づいていたい。
運命なのか偶然なのかわからないけど、みつめあう瞳に感謝します。
(同書背表紙より引用)
「遠くから信じることができれば、それこそがたったひとつの私の愛の形なのです。」
「運命なのか偶然なのかわからないけど、みつめあう瞳に感謝します。」
と、夏生さんの言葉がありますが、夏生さんの詩には片思いを連想する詩がたくさんあるように思います。そしてこの片思いの恋が成就することを願う詩も。
「つれづれノート」のどこかにまったくはじめて会いはじめから恋を育てていくのが苦手というようなことが書かれていますが、二人で会ってもただ瞳を見つめているだけとかいう恋の仕方かと思います。
しかし相手の心がどこにあるのか、そこはつかみたい・・・・だから小さな言葉や仕草が気になる・・・・・
こんなことを左記の夏生さんの言葉に感じます。

読み終わったあとにもう一度いちばんはじめの詩「満天の笑みが・・・・」と最後から2番目の詩「満天の星が・・・・」を読み、そしてそのあとに最後のページ「これもすべて同じ一日」という言葉を読む。ぐっと来ます。

                      夕螺
角川文庫
1986(昭和61)年12月18日 初版発行


在庫の有無は角川書店ホームページ
僕の好きな詩
本にはページがありませんので、はじめのページを1ページと換算して下さい。
     P.14 「大事なのは・・・」
足跡という過去を振り返るのではない。でも未来もわからない。大事なのは今という時間を歩く足そのもの・・・・恋ということばかりではなく、夏生さんの生き方中に貫くものかと思います。
  P.26「ユーラシアの坂道から・・・・」
スケールの大きな旅、そんな旅を恋だとすればこんな恋などたわいのない旅だと・・・・
夏生さんの恋はどんなに困難な旅だったのだろう。こんな恋をした人はすばらしい。
     P.47「車を路肩に止めて」
駆けたあとに息が切れ深呼吸をする。そんな何気ない姿にあらためて魅力を感じる。そんなときってありますね。清らかな目で。。。。
P、52「異国の丘」
「すぎていくものは、やってくるもの」いつか過ぎ行くものは、必ず初めはやってくるもの。やってくるものは、必ずいつか過ぎ去ってゆくもの。私の前に現れた人は、今はどこかに。後姿だけを追っている。しかし私もここにとどまるものではない。これは私のやさしさなのか、無常ななのか。
P.58「胸を打つ静寂というものがあります」
恋をしてその人のことでこころがいっぱいになったとき、こころは世界から切り取られたように静寂の中に包まれる。そんな経験は誰にもありますね。恋だけではなくても心を奪われて静寂に包まれる幸せ。大切だと思います。
P.60キスした歌を氷の空へ
この恋をわかってくれる子供のような人たちなら純粋に伝える。でも「まともな人たちはほんのちょっぴり」その中にあって取り残されても僕たちならやっていける。。。。。そんな信頼感のある関係っていいですね。
P.82すすき
心を奪われるものに同化する喜び。。。。
この喜びにためだけに生きていけるとすれば。。。。
P.92それがあなたでした
大切な言葉を聞き逃して微笑んでしまった男。そんな男にとまどい思う女。。。?
P.115水辺の木
雨雲のように押し寄せる哀しみ。思い出。この思い出に伝えられなかった言葉が残る。
銀色夏生ページ 掲示板
銀色夏生さんのこれもすべて同じ一日の世界へようこそ。こちらは「これもすべて同じ一日」の紹介と僕の感想のページです。一部の引用を除き僕の個人的な感想です。よろしかったら皆さんのお声も聞かせてください。