角川文庫
1988(昭和63)年7月25日 初版発行


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Go Go Heaven の勇気
銀色夏生ページ 掲示板
生まれることも歴史です。失うことも歴史です。私たちがもっとも大切にしなければならないことは、私たちの本当の目的です。
私たちの目的は、素晴らしく美しく悲しいほど純粋だったのではなかったでしょうか。
そのためになら生きていることを誇れるという目的だったのではないでしょうか。
私たちはそのことをうっかりと忘れないためにこそ、お互いに存在しているのです。
(「Go Go Heaven の勇気」表紙裏より引用)

私の作品はすべてひとつです。
どの方向へむかってどれだけ強い願いをもって何を伝えようとしたかを覚えていてください。
(同書「あとがき」より引用)

人生の中の、二度とない貴重な時間を切り取って閉じ込めた気がします。
(「つれづれノート」160頁より引用)

たとえが適当かわかりませんが。。。。。
清純派アイドル路線の山口百恵が、いきなり「ばかにしないでようぉ〜〜♪」とツッパリ路線に変わって行ったようなものを感じます(笑)
「Go Go Heavenの勇気」は、夏生さんの詩集の中では少し雰囲気の違う詩で構成されています。
「つれづれノート」の何巻かは忘れましたが、若いころは、少し「悪系」の人と付き合うこともいいのではないかというようなことを書いていますし、このころの友達の一人とは時々あったりしていることをやはり「つれづれノート」には書かれています。
初期の詩集は、夏生さんが20歳代後半から30歳ごろまでに書いたり、それまで書いた詩を集めたりしたものですが、少しツッパリ路線系の詩集に現れる詩は、夏生さんの青春の1ページであったのだと思います。
ツッパリといってもどこか偏差値の高いツッパリというのか、悪いことばかりをするグループというよりも、大人社会に反発をしたりいろいろなことを感じ考え生きているというものを感じます。ある意味では純粋に生きている若者たちという印象を強く受けます。
純粋だからこそその恋は傷つけあったりします。
そんな恋を感じます。
これといったはっきりとした未来が見えず、そのために今何をしたらいいのか、そんなことわかるはずもない青年たち。毎日すぎていく時間、その中に現れていく周りの事象。振り回されたり、逆らったり、不安を抱いたり、友達の中に現れるいろいろなこと。。。。そんな毎日の時間の中を必死に生きる青年たち。
大人たちが忘れた純粋さがありました。
こんなツッパリ。
夏生さんのその後の生き方は、この青春時代の純粋さ、先に書いたようなツッパリをそのままに生きているという感じがします。
若いころに突っ張るのは簡単です。でも社会に出ていろいろな不純物に対して純粋さを守る、こんなツッパリは難しいのです。
そんな生き方に共感をする僕です。
                          夕螺
    2003年11月 記
僕の好きな詩
P、4「一瞬を待つことは、永遠を認めるということだろうか」
一瞬一瞬が積み重なって時間は流れ、それは永遠となる。しかし一瞬の中にあることがそれが永遠に続くかといえばそうではない。一瞬は常に移り変わるから一瞬なのである。「一瞬のうちにすべてが可能になる」こともあれば「不可能」になることもある。このさまざまな出来事が複雑に絡み合いながら一瞬、一瞬はすぎていく。そして時間が流れて月日は進み、その進んだ時間の一瞬に今の自分はある。それは次ぎへの永遠のはじまり。いろいろ考えさせられる詩です。
P、15「夢で、よかった。」
鎌倉の海岸に出たらおいしそうなサザエのにおいがした。そのとき、ふと、孤独を感じた。「誰が誰を好きになった」とか、そんな噂話は聞きたくない。バカみたいだ。。。。。でもこんな噂話にも入れないような孤独。このような孤独を感じる詩でした。
P、20「いつまでたっても、こんなかな」
それなりに苦しいことはあるけど、恋をし、遊んで、、、、、、いつまでも「こんな」でいたい。でも、僕たちは「子供だし、世間知らず」だ。この社会には知らないことがたくさんあるからいつこのままでいいという考えを捨てなくてはならないかもしれない。未来というものに「視線をさまよわせた。」悲観的になってしまうけど、僕には「いいかげんさと情けなさ」がある。。。。。若い人たちの漠然とした未来への不安。悲観的になることもあるが、それをいいかげんさと情けなさですごしていくというところになんともいえない味がこの詩にはあります。今という現実の中でも、このいいかげんさと情けなさでデートをすっぽかしたデメリットを最小限にした。。。。。
P、22サキ「考えたんだけど・・・・・」
若い人たちがその成長の中に見る教わったことと現実のちぐはぐさ。大人への疑惑。こんなことをさらりとひとり言のように。。。。。
P、26「16才軍団」
パンクのコンサートで、いきがって燃やした衣装。でもポケットの中はローン地獄。そんな16歳の青春。思っていたものは現実とまったく違う。こんなんじゃないと思いながらも勉強というものに追われてしまう。そんな16才。現実と夢とのギャップの中での青春を感じます。
P、36ユイコ「カネミツくんて、おもしろいね」
この詩集の中に出てくる男女のグループの中で、このユイコというのは少しぼけたお嬢さんという感じの女の子。悪く言えば「カマトト」かな?でも、下手に手を出すと痛い目にあう。。。。。「わたし、おもしろいひと、すきだよ」と浮かれてしまったカネミツ・・・・(笑)
P、47「青い夜のとう台」
「あなたがいなければ、私は私を信じるしかなくなるわ」この言葉、言われた男にはずっしりと重いものだと思います。自分を頼ってくれているといううれしさの影に、彼女は自分を大切にし、自分を大切にして生きていく。男は彼女が好きならばその分彼女に自分を譲らなければならないようになる。弱い男なら。。。。。49ページの「マリオネットと呼んでくれ」のマリオネットという男の言葉が暗示的です。多分これはか弱そうな登場人物ユイコの言葉でしょう。どこかヌケタようで純真そうなユイコの中にある強い心の芯を感じます。同時にこれは、夏生さんは2回の離婚をしていますが、日記「つれづれノート」の中には、心の中の別れの寂しさと同時に自分は自分を信じて生きていこうという強さが現れています。夏生さんの一面を強く感じる言葉ですきです。
P、56「ヒラサワは今は更正しているが」
今は明るい青年のヒラサワ。でもその明るさの中に暗い登校拒否児童という過去。部屋で鶏を飼っていても何も言わない母親。みんなが食ってしまった鶏の足だけが残っている。不登校の中に鶏だけを大切にしていたヒラサワ。。。。。きっとやさしい子だったのでは?母親もそんなヒラサワのことを理解していたのかな?ツッパっているようでどこかに優しさのあるヒラサワを想像します。
P、73「神さま」
これから二人はどうなるのか。どう変わるのか。誰にもわからないし、自分でもわからない。神様がいるのならきっと知っているはず。教えてくださいと。。。。。
P、75サキ「タフじゃなきゃね」
無限は無限の小さなものにつながっている。じゃあ、無限に小さなものは無限の広がりにつながっている。今という空間が点とすれば、その点の過去方向には無限が、そして先にも無限が。P、4「一瞬を待つことは、永遠を認めるということだろうか」という詩につながるものを感じます。時間と空間というもの。。。。。
P、80ルイジ「そういえばこのあいだの先輩どうした」
ルイジとサキのやり取り、おもしろいです。ルイジのほっとした気持ちと次の心配と期待。。。。。
P、87カネミツ「やべー、おきろよ、遅刻だぜ」
わかる、わかる。。。。。(笑)
P、91「メリーゴーランドに乗ってて思った」
友達みんなと遊園地に行きメリーゴーランドに乗った。いつもはツッパっている子達、でもはしゃぎながらそれぞれに馬にまたがっていく姿が目に浮かぶような文章です。みんなで並んで順番が来たとき、それぞれみんなは走ってお気に入りの馬を探す。ばらばらに座ってしまい、みんながどこに座った探しながら馬にまたがる。僕もそんな日がありました。馬は下がったり上がったり、上がったり下がったり。結局は「プラスマイナス0」。僕も以前から考えていました。幸福そうに見えても、不幸そうに見えても、人生終わってしまえばプラスマイナス0ではないかと。金を持てば金で苦しむ。金がなければやはり金で苦しむ。。。。。結局は終わってしまえば人生なんて平凡なもの。今の一瞬を考えるなら、「何が幸福で、何が幸福でないか」ではなくて「ただ、すきか嫌いか」だけ。幸福かどうかは、そのことをどこからどこを見るかであり、何が幸福なのかはわかりませんね。でも、こうして幸福が何かを考えている平凡な一瞬が幸せなのかもしれません。
P、103「友だちのままじゃいけないの?」
ほんとは特別な気持ちをお互いに持たないほうがいい仲のいい男女のグループという友だち。でも、若い人には無理。特別な気持ちがお互い同士同じであっても、その仲のいいグループには気まずい思いが出る。ましてや片思いだったら。。。。。。仲良しのグループは楽しい。できればいつまでも友達でいたい。でも、一度特別な感情を持ち、それが相手にわかってしまい、片思いだったら、また以前のように仲のいい友達ではいられない。悲しいけど、仲良しのグループは解散かな?「・・・でも人は、別れても分かれても、いつも誰かにめぐりあう」
P、104「たしかにそうだ、世の中はバランスとタイミングだ」
「コクゴのトクイなヤツ」感情的な人。「数学のトクイなヤツ」冷静な人?こんな人たちが集まって世の中はうまくいくのかな?もちろん人それぞれは国語は得意になったり、数学が得意になるけど。その時々のタイミングでバランスが取れている。。。。
P、109「海の見えるところ」
「いたいけな夏の物語」からも続くように、仲良しなグループみんなでいった夏の海。波はひかっている。それぞれがそれぞれの思いでそんな光る波をながめている。ふとサキがこんな平凡な景色の中で「忘れないようにしようね」と。みんなできているこの海を。そして仲良しだったことを。。。。。じーんとくる言葉です。
P、116「もうすぐ夏が終わる」
いろいろとあった夏。でもなんとなくオレ達は何も変わっていないのではないかと思う。これからも。。。。。。でもそれは誰にもわからないと。
P、120「暑くて暑くて死にそうだった」
暑い夜、君は夢をみていた。でも、そんな夢からの気持ちだけではうまくいきやしない。ぼくは現実をみていた。君に夢を壊すようなことを言うようで、冷たいと思うかもしれないけど、これが現実で、現実の前にはウソはつけないよ。。。。
P、127「セブンイレブン病」
暗い夜、その明かりは、まるで「イオサリビのよう」。なんとなくわかりますね。僕なんかも遅く帰るときにはコンビニの明かりがとても暖かく感じて寄り道をしたくなることがあります。若い人たちは、そこに行けば友達も着ているだろうから、楽しそうです。コンビニで買ったものを食ったり飲んだりしていろいろなことを話しているんでしょうね。そういう時って、昼間とは違った話ができるものです。大人でいえば居酒屋での話のような。。。。それが楽しくて集まってくる。まるで「ゴキブリほいほいに引き寄せられる」ゴキブリのように。うまい表現です。
P、138「ウエラトーン17歳」
バイトが終わって変えると真夜中。お昼まで目が覚めず6時限しか間に合わない。しばらく学校に行かなかったら机がなくなっていた。街中をうろうろして金を使ったら、財布の中は50円。こんな17歳。「誰も知らない未来を持っている」17才頃っていろいろ考え悩むときですね。なんとなく自暴自棄になったりもします。その原因はいろいろあるけど、恋もそのひとつ。ガンバレ17歳!これではいけないという時期が必ずあるはずだから、そんな17歳には未来がある!!こういう時期の体験はいつまでものこりますね。
P、141「5月の風がすぎていく」
5月の風が心の中を通っていく。さわやかな風。心の中もそんなさわやかな5月の風のにおいがする。心もこの風に乗って7月や8月や9月にとすぎていくのか。さわやかにすぎていけばいいけど。近い未来はどんなもの?
P、146「永遠なんてありえない」
「いつまでもこのままでなんてことはありえない」。また、今日が終わるから今が楽しいのだから、今が永遠に続けばいいとは思わない。時には、今の楽しさが永遠に続けばいいと思うことがありますね。この詩集のような若い人たちの友だち関係は、僕のような年になるとその貴重さが身にしみてわかります。でも人は年を取っていく。。。。。「人生がゲームならそれを楽しめばいい」人生には苦しいことやイヤになってしまうことが多い。でも、考えてみればそれもゲームなのか?その一瞬一瞬は本気で苦しむけど、時間が流れてしまえばヘラヘラできるかもしれない。こんなようにヘラヘラみれば、未来を恐れる必要もない。未来がみ得ないから楽しみ勇気づけられればいい。今はいいかげんでも。。。。。
P、154「一瞬のうちにすべてが不可能になるのなら」
4ページの詩には、一瞬のうちにすべてが可能になるのなら、一瞬のうちにすべては不可能にもなるだろうとある。この最後の詩は逆である。すべては変化していく。その変化は、さまざまなことを変えていく。幸福や不幸など。。。。未来は見えない、でも、変化していくことはわかっている。それがどのような方向にしろ。どちらにしろそれが現実で時間が流れていくのなら、それを受け止めなければならない。でもそんな未来は今が作り出すもの。そんな気持ちで希望がもてればと思います。
P、158「時代に道を教えてあげよう。時代が君に近づくように
時代・・・・これは社会の歴史ですね。人の歴史は人が作るもの。それも、一見偉い人が時代を作っていくと勘違いをしてしまうことがありますが、そうではなくてすべての人の行動が時代を作る。人が人の時代を作るなら、希望を持って時代に道を僕たちが教えなければならないのでしょう。若い人たちの純粋な心と感情、それが時代として受け止められるなら素敵でしょう。この純粋さを失うなら、若い人たちが時代を切り開くことはできないでしょう。変に若いうちからおじさん、おばさんになってはいけない。いい意味で突っ張りながら生きなければなりません。
150  SCENE 20 終わりが近づくと悲しい気持ちになる
150 夢中になってここへおいで    
153 泣いてた僕にさようなら    
154 一瞬のうちに、すべてが不可能になるなら、 一瞬のうちにすべてが不可能になるのなら、一瞬のうちにすべてが可能にもなるだろう  *
156 あとがき    
157 夏生さんとロックスピリッツのメンバーの名前と写真    
158 時代に道を教えてあげよう
時代が君に近づくように
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