挑む女
文春文庫
群 ようこ  著
あるイタリア料理屋で4人の女性が集まる。こんな風景から物語は始まります。
出版社に勤めるまったく男運のない40歳代に入ってしまったアキコ。その同級生で男運はありすぎたが断っている間に40歳代となってしまったサユリ。アキコの出版社の後輩で寿退社をしたが、今では腕力で勝負というおばちゃんになってしまった30歳代のタカコ。アキコの友人の妹だったか、アクセサリーをチャラチャラさせ男を手玉にとっているつもりで遊ばれてしまう20歳代のルリ。
この4人の女性の人間模様です。
それぞれに個性があるが、男のこととしても、変な絵描きとお見合いをし変なやつだと思い帰ろうとしたら食事代を2000円取られたアキコ。母親と妻との間に入っていつも優柔不断な夫を持つタカコ。数々のお見合いの経歴を持つサユリ。会社のトロい男に食事をおごらせたまではいいが、翌日襲われてしまったルリ。このような男関係を面白おかしく描いています。
また、仕事という面では、キャリアウーマンになってしまったアキコ、大学を卒業してから一度も働いたことがないというお嬢様のサユリ。寿退社のタカコ。襲われてしまったトロい男にねたをばらされ会社を辞めてしまうルリ。これもまた面白おかしく書かれています。
こんな個性のある4人の女性ですが、毎日はすぎていく。それぞれの女性がこのままではいけないと思っている。
アキコは4人の中では相談を受けやすいタイプで、3人の女性に出版社への就職を頼まれる。その中で小百合は始めて就職をし、面接で落ちたタカコは仕方なくパート。リルは風俗関係の雑誌社へおちく。
そして物語は、はじめのイタリア料理屋で4人が集まる中に終わる。
アキコは「なんだかんだといっても、リルもサユリもタカコも、何とかそれぞれに収まるべきところに収まったのだな」とこの数ヶ月を回想する。
4人の女性は幸せというような生活ではない。それぞれにさまざまな苦しみや不安の中に生きている。でも、そんな生活の中でも、4人集まれば、これから咲き何がおきるかわからないけどとりあえずやっていこうと緒下増しあう。そしてそれぞれの女性はその生活の中に戻っていくのだと思う。幸せという時間は、本のつかの間。いろいろな問題があったり苦しんだり、そんな時間の流れの合間に幸せがあるのかもしれない。幸せと感じなくても、自分を自分でこんなもんかな?と納得させたり、愚痴を言って鬱憤を晴らしたり。これが現実の生活であり。振り返ってみると平凡だと感じるのかもしれない。この作品の最後は、ハッピーエンドというわけではないが、こんなほっとする気持ちにさせられる。
多くの男も出てくるが、この男もかっこいい男ではない。その辺にいるようなおじさんである。4人の女性はそれぞれにおいて理想の男、家庭を思い描く。しかし現実はこの平凡なおじさんばかりである。ここにも現実という平凡さがる。
男関係も、仕事も生活も、こんな平凡さが現実であり、「はぁ。。。」とため息が出ることばかりだと思う。そんな中で4人の女性は「わっはっはっは」「がっはっはっは」と自分そして周りの世界を笑い飛ばす。こんな生き方に読者も一緒になって思わず自分自身と周りの世界を笑い飛ばしてしまうような気持ちにもなる。
楽しい作品でした。

             2003年11月 記

                           夕螺