私は孤独である限り、詩を書き続けていくでしょう。思い出も現実も、それほど変わりがない毎日は、いきていくにはあまりにもつかみどころがありません。センチメンタルにもロマンチックにも、どんなふうにでもできるから、人々は夢を、みたいようにみるのでしょう。どうぞ幸福になって下さい。私があなたを守ります。 (「あの空は夏の中」背表紙より引用) 「あの空は夏の中」はカバーが2種類あります。最初のだけ違うのですが、もってる方いらっしゃるでしょうか。 (中略) この本は、奥日光や房総などいろいろドライブしながらとりました。23ページの桜の花びらがたくさん散っているのは、実は、弟が木の根元を揺らしているからです。なんと右下に手がうつっている。へへ。 (「つれづれノート」177ページより引用) 夏生さんの詩には多い「僕」という主語の詩も少なく、女性の柔らかな優しさのあふれる詩集です。 夏生さんの、思い出の中にあるその時々の恋を詩にしたようですね。または、この詩集を作っているときの恋も詩にされているのか?「思いでも現実も、それほど変わりのない毎日」、今の恋を思い出に残る恋と照らし合わせながら今の恋に思いふけっているのでしょうか。 思い出は、「センチメンタルにもロマンチックにも、どんなふうにでもできるから、人々は夢を、みたいようにみるのでしょう」と。恋だけではありませんが、これまでの人生のひとコマひとコマの中には、苦しさや悲しみ、絶望的なことがたくさんあったと思います。でも、そのようなものも時間の流れの中で思い出となり、懐かしさや笑ってしまうようなものになることもあります。それが恋ならば、センチメンタルにもロマンチックにもなります。 この詩集が出される少し前には「LESSON」という詩集が出ていますが、恋も人生のひとコマも今ある自分の中にあります。 あんな失敗はもうよそうととも。。。。。学生の頃、普段サボっていて試験に苦しみました。でも、今でも先送りの生活に自分で自分を苦笑してしまいます。夏生さんの中にも思い出の中に残る恋を振り返って、もうこんな失敗はしないと思っているのかというものがあったのかな?と想像したりしてしまいます。思いでも今の現実も「つかみどころがありません」。 夏生さんも僕たちも同じなのかと思います。 同じだからこそ、夏生さんが今の恋を大切にしてしあわせになる夢を持つと同時に、僕たちにもしあわせになってくれと心の中で守ってくれているのでしょう。 夢、それは人それぞれに違いますが、今が自分にとっての出発の時間の流れの中にあります。今の自分を未来の自分がどんな思い出で見るのか。。。。。 2003年11月30日 記 夕螺 |
P、4「理由もなく悲しい」 |
理由もなく悲しいという言葉は無意識に使うけど、でも、本当は理由がある・・・・それはなた・・・・ |
P、10「波まで続く私の涙」 |
知り合いが一緒でないときは、あなたの弱さを見せてくれた。それは誰にも話していないこと。こんな二人の関係を私は勲章としてきた。でも・・・あなたは、今、私を見ないで遠くを見つめている。。。 |
P、14「片思いの守り方」 |
どうせ片思いなら、今のままがいい。この恋をみんなに知れたら恋が動き出してしまう。そうなったら私たち二人は・・・・ |
P、22「ひとつひとつ」 |
会っていてもほんとの自分の心を言えず、別れるときにはいつも笑っていた。でも私の心の中は、あなたとのひとつひとつの瞬間を思いつめているのに。 |
P、25「午後のテーブル」 |
過ぎ去ってしまった恋。打ち明けられなかった恋。今、こうして思い出すと、あなたは私に愛されたがっていたのではと思う。あの人のひとつひとつの不可解な言葉が。 |
P、32「悲しい恋」 |
片思い、でも「好き」と気持ちを抑えきれずに言ってしまった時、その言葉はあの人にまっすぐに届く。でも、その言葉はあの人にどのように届くのか、たぶん・・・・・私はあきらめている。そんな孤独な「好き」という恋。 |
P、36「月のない暗い夜、サンゴの波」 |
好きになったり、好かれたり。ひと夏の恋。かわいいと思う少年。あこがれた人。好きになった人。冬とともに終わった恋。 |
P、40「いけない子」 |
なんとなく思春期の女の子を感じます。周りの優しさにも、子供の頃のように素直に受け止められず、間違いと思っても素直になれない。そして自己嫌悪。 |
P、42「私たちは別れがつらくなりすぎないようにつとめて明るくふるまった」 |
お互いの気持ちがわからなく、なんとなく別れを予感する恋。そんな気持ちは、若い二人の中にある初々しさから。大人の恋のように深い関係からの別れの予感ではなくて、なんとなく自分の心の中だけで思い描いた恋で、思い描いた別れの予感のようなもの。共通の友達の話が終わったら、もう話すことがなくなってしまった。。。。。聞きたいことはたくさんあるのに。 |
P、56「自己嫌悪と被害者意識」 |
あなたの中にあるものすべてを過大に評価して自分が小さく見え自己嫌悪する。あなたが素晴らしく見えれば見えるほど、自己嫌悪する私はあなたが私を陥れることを心配をして私は被害妄想となる。このことがまたあなたへの恋を助長する。この意味において自己嫌悪と被害者妄想はロマンティスト。 |
P、59「言葉は心を伝えない」 |
言葉で思いを伝えようとするけれど、言葉では伝えられない心の中にこそ本当の思いがある。多くの言葉で伝えるよりも、お互いにこの言葉では伝えられない本当の思いをお互いに持っているからお互いは守られる。 |
P、64「自分以外のものを愛することは」 |
この視は恋愛一般だけではなく、友情など人と人との関係にも通ずるものがあります。人を愛することは、自分にはないものを相手が持っているからと。これは相手に何かを求めたいというような気楽なものではなく、その相手が持つものから自分自身を知ること。そしてこの人がいないならば、自分自身が何か欠けてしまうと痛感してしまうような愛。 |
P、70「愛のはじまりを予感するとき」 |
すべての事柄は、始まりが有り終わりが必ずある。愛のはじまりは、その愛の終わりを覚悟すること。この意味においては、愛は瞬間である。しかし、すべての事柄が変化をしていくのだから、愛もその形を変化させていく。それは永遠である。変化することを認識するならば、愛の瞬間は永遠の愛である。 |
P、72「あなたに会うまでは」 |
夕日を純粋に美しいと思っていた乙女心、あなたはそんな私を夕暮れは悲しいと思うような大人にした。 |
P、80「二つの手紙」 |
何度も出そう出そうと思って出せなかった手紙。思い切って出してみた。その返事には、この手紙が着くころには僕は汽車に乗ってあなたのところへ・・・・と。どうにおあさえきれない気持ちとその気持ちを受け取る気持ち。ぐっとくる手紙です。 |
P、88「ある風の吹く夕方」 |
この詩は、好きな詩というよりも同じような経験があるという意味で選びました。恋と言う訳ではありませんが、小さい頃、友達たちと夕方の薄暗くなった河川敷を急いで帰る途中、誰かが急に走り出して「お化けが追いかけてくるぞぅ・・・」って。一番遅れて逃げたやつは必ずベソをかいていました。 |
P、91「恋の後ろ姿」 |
以前は高ぶる気持ちで会っていた、でも今ではあまり電話もしない。自然に話ができる。これが恋の後ろ姿。夏生さんは、恋だけではなく、ひとつのものがある程度めどが立つと次のものを探すというようなところがある。高まる心という恋、それは別れあるいは恋から愛へと発展したにしろ、どのような形にしろどこかで落ち着く。これを恋の後ろ姿と表現するところに夏生さんらしさを感じます。あるいは相手に対する気持ちが薄れてしまったのか。どちらにしてもこの「恋の後ろ姿」という言葉には感動しました。 |
P、104「去年の麦藁帽子」 |
もう別れてしまったけど、去年の夏彼が買ってくれた麦藁帽子。別れたことに悲しみ、自分を振り返ることによって、私は変わった。去年の私より、こんな変わった私にこの麦藁帽子は似合うのかもしれない。自己嫌悪と被害者意識。未練・・・・ |
P、「この恋に気づいていたら」 |
外のテーブルで宿題をしていたら、急な夕立。あの人を思い出した。あの人もこんな夕立の中で本を閉じるという自然な動作の中で私を思い出してくれたら。。。。 |