§9 経済学のためのキャッシュフロー計算書
工博 林有一郎
2014/5/5 新規作成
9.5 キャッシュフロー計算書の作成方法(その5):標準原価計算決算書において、キャッシュフロー変換する場合の注意事項
筆者は、標準原価計算決算書を対象として、直接原価計算を包含する標準原価計算・損益分岐点図を利用する会計方法を創造し、特許(2007年、2013年米国特許)を取得したが、その研究に伴って気づくところがあったので記述する。
2013年米国特許の概要を参照されたい。次のように記号を定義する。「売上高」をX、「売上総利益」をQ、「売上営業利益」をπO、「売上製造直接費(変動費、実際原価)」をDX、「売上製造間接費(固定費、実際原価)」をC、「売上販売一般管理費(固定費、実際原価)」 をG、「売上全部製造原価」をE、「Xへの製造間接費配賦額」をACX、「今期のC会計部門配賦収益」をACY、「次期棚卸資産に繰越す期末ACY」をACY(+)、「前期から繰越された期首ACX」をACX(-)と表し、η(イータ) = ACX(-) - ACY(+) = ACX - ACYを「製造間接費配賦額・正味繰越額」と名付ける。
このとき、原価計算基準により、πOは次式で定義される。
πO = X - DX - [C + η] - G | (1) |
DX の内容は、 次式のようである。
DX = DX(-) + DX(0) | (2) |
式(1)を変形して、式(3)を得る。
πO + η+ De = X - [DX + C’ + G’] | (3) |
ここに、De は減価償却費を表す。C’ = C - DeC、G’ = G - DeGとする。式(3)を観察すると、右辺の各項は、キャッシュフロー処理をするに際して、信用処理をする対象としての外部取引実体がある。式(3)は、Xと[DX + C’ + G’]の差額(即ち信用価値の入力と出力の差額)がπO + η+ Deであることを示しているのである。πO + η + Deは、キャッシュフロー変換において、PLの借方、δBSの貸方に1セットで表れ、直接法では消去されるべき項である。ところが、δΗ = DX(-) - DX(+) は、キャッシュフローとしての実体項目であり、直接法でも消去されない。しかるに間接法では、δΗ+ηは分離せずに残る(分離させてもよいが、別表現となる)
従って、キャッシュフロー処理においては、直接法と間接法において、棚卸資産に対して製造直接費分と製造間接費分とを区別すべきことを示している。
この事実は、現実の企業決算書であるPLとBSに対して、キャッシュフロー表を作成する場合は、問題とならないであろう。何故ならば、それらの勘定の各項は、式(3)の意味に矛盾しないように必然的に出来上がっているので、それらの表に対して機械的に、キャッシュフロー変換をすれば、キャッシュフローとして矛盾の無い表が自動的に出来上がるであろうからである。
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