ご縁深い作品

児島凡平さん

「勇ましい高尚な生涯」を生きた放浪のデッサン画家 

1951年10月、凡平さん46歳のとき、絵の勉強のため三匹のヤギを連れて、愛媛県松山から東京まで、55日かけて歩いて上京。すべてに行き詰まり、50歳で帰郷。1965年、60歳で再度、絵の勉強のため上京。夜警の仕事をはじめ、色々な仕事を次々、そして居場所も転々。老齢と孤独と生活苦に耐え忍び、73歳やっと個展を開いたが評価を得られず、1979年、決心をして、東京を離れる。このとき凡平さん74歳。私は、夢破れ帰郷した孤高の画家凡平さんとご縁いただき、1997年までの18年間お付き合いした。このデッサンは、気に入って譲っていただいたもの。

自画像(素描)

自画像(素描)

銀座に到着した凡平さんとヤギ三匹

十幾日ぶりに米の飯をたべて

 2001年に、愛媛新聞社の玉井葵氏が、凡平−「勇ましい高尚な生涯」を生きて-を発行。その中で、玉井氏は、あとがきに「凡平さんは不思議な人である。三匹のヤギを連れて、歩いて東京へ行った。芭蕉の奥の細道を歩いてたどった。90年間の生涯で、華々しいスポットを浴びた時期といえば、そんなことだろうか。
 中略・・・凡平さん自身が目指した絵画の分野では、結果として、不本意に終わったとしか言いようがない。けれども、時間をかけて凡平さんが残した膨大な資料を読んでいく内に、それは皮相に過ぎ、誤りでさえあると感じるようになった。
 凡平さんの本質は、その生き方にこそある。度々重なる挫折にうち倒されてしまわないで、背筋を伸ばして生きる「誇り高さ」こそが、凡平さんが人々に親しまれ、愛された要因だった。それが、今、私たちが多くの人に伝えたいと思っていることである。

滝本英子さんが撮影した凡平さん

凡平−「勇ましい高尚な生涯」を生きて
著者  玉井 葵
発行所 創風社
http://www.ses.co.jp/soufusha