第7回 矢 沢 宰 賞

受賞者名,所属,学年は平成12年2月の応募当時

審査講評/月岡一治

○最優秀賞・かいばみ賞

ありがとう    【選評】

    徳田 健(青森県立八戸第一養護学校高等部2年)

 

小学3年8歳の秋

まだ歩けていた

それでも幼さと

これからの施設生活との不安で

母の背中にしがみついていた

今は高校2年17歳

あれから9年

母は歳をとった

その小さい体で

大きくなった僕の体を背負い

送り迎えをしてくれた

背中のぬくもりを感じて

満足しているのにわざと困らせたりして

今までありがとうの一言もいえなくて

今日もまた背中の上

 

 

○奨励賞

 1席・かいばみ賞

現             【選評】

    杉本 麻衣子(福井県立福井東養護学校中学部2年)

 

あなたに何かを伝えたい

それを私は言葉で言う

もしそれができないのなら

私は

字で書く

もしそれができないのなら

私は

絵で表す

もしそれもできないのなら

目で ふんいきで

そう 体全体で

表現できる

 

だから

今日みんな笑っている

 

 

 2席・かいばみ賞

合戦            【選評】

    松井 亮(新潟県寺泊町立野積小学校5年)

 

学校の帰りに雪合戦をした

友達の投げた雪玉が

ぼくの顔に当たった

すごくすごくいたくて

ぼくは泣いてしまった

次の朝ぼくは友達に言った

「暁一の玉、チョー速いやあっ。だってオレが泣くくれぇだもん。」

友達は笑った

ぼくも笑った

きのう 泣いた話で

ぼくたちは笑った

 

 

 3席・かいばみ賞 

 ぼくらの櫛池川        【選評】

    江口 達也(新潟県清里村立櫛池小学校5年)

 

春の川はたっぷり流れている

ゆうゆうと流れている

雪溶け水を集めて

たっぷりと流れている

 

夏の川は長く流れている

石と石の間を、白いしぶきを上げ

長く流れている

あっ、ハヤがいる

 

秋の川は木の葉と会話をしている

くるみの葉が一枚

ユラユラと踊りながら

ぼくも一枚

葉っぱを落としてみる

 

冬の川はどうどうと流れてる

近づけないほどどうどうと

流れてる

雪も落ちたとたん

水の仲間

 

 

 4席

ひとこと           【選評】

    片岡 亮太(静岡県立沼津盲学校中学部3年)

 

おはよう

いってらっしゃい

きをつけて

また あした

こんなに 短い ひとことに

やさしさを 感じるのは なぜだろう

笑顔を 取りもどしていくのは なぜだろう

 

こんにちは

げんきかい

おめでとう

がんばれよ

こんなに 普通のひとことが

心を軽くしていくのは なぜだろう

憂鬱を 打ち砕いていくのは なぜだろう

 

短い ひとことに

救われる 時がある

普通の ひとことだから

救われる 時がある

今度は 僕が 言ってみる

 

いってきます

げんきです

がんばります

ありがとう

しぼみきっていた 僕の心が

少しずつ ふくれてきた

 

 

5席

みんな生きてるよ       【選評】

    砂川 光輝(沖縄県立西崎養護学校小学部4年)

 

かんらん車どうして動かないの

おじいさんになったの

メリーゴーランドは、おばあさん

 

お花がゆれてるよ

コスモスがわらってるね

これ、お花を置く台ですか

お花のおイスだね

 

すごい雨だね

雨さんがガラス窓みがいているね

 

あした、じゃがいも植えるの

土のおふとんかけますね

毛布は、どうするんですか

 

ピーナツあらったね

どろがついていたね

ピーナツ、おふろに入りましたね

 

麦茶飲んだらきれいに洗おうね

ふせておくんですか

コップが眠っていますね

 

 

佳 作(15編)

              【選評】

    堀川 紗耶(新潟県見附市立今町小学校1年)

空が

くもをつつんでる

 

くもが

空をつつんでる

 

ママが

さやをつつんでる

 

 

手              【選評】

    島崎 敬悟(富山県立盲学校中学部1年)

 

お父さんの手は

かたくて でっかくて おもい

土がうまっているみたい

たばことポマードのにおい

 

お母さんの手は

やわらかい

くうきでふくらんでいるみたい

ちょっとカサカサあれている

でもクリームをつけたら

つるつるの手

 

おばあちゃんの手は

お皿をあらう手

水の音がする

つめたいだろうな

ぼうみたいにかたくなった

 

みんなと手をつないだら

ぼくはあったかくなる

 

 

みさま           【選評】

    市橋 綾華(新潟県両津市立両津小学校4年)

 

かみさまは、どこにいるの?

かみさま、お空にいるの?

かみさま、くもの上にいるの?

私のちかくにいるの?

みんなには、みえない。

あたまにいるの?

おうちはあるの?

私にもみえない。

どこに、いるの?

 

 

どんぐり           【選評】

    太田 悠(新潟県新津市立結小学校3年)

 

どんぐりたちの話し声

耳をすますと聞こえてくるよ

 

ぼくらはみんなにているけれど

ぼくらはみんなべつべつなのさ

よく見てよ

 

ぼくはひびがはいっているんだよ

ぼくは黒いぞひやけだぞ

わたしはスタイルいいでしょう

わたしはちっちゃくてかわいい

でしょう

 

聞こえたよ

どんぐりたちの楽しい話し声

わたしはわかるよ

みんながぜんぶちがうって

わたしもこんどなかまにいれて

くださいな

 

 

ぼくの犬           【選評】

    嶋 晃一(大坂府立豊中養護学校中学部1年)

 

名前はメイとチァーコ

ぼくみたいに大きい

エサをあげると

カリカリッと食べる

いっぱい食べる

はやく食べる

水をのむ

ペロペロのむ

いっぱいのむ

おいしそうにのむ

下むいてねてる

グーグねてる

きもちよさそう

ぼくもおひるねしましょ

 

 

たん生日           【選評】

    加藤 綾乃(新潟県立吉田養護学校小学部3年)

 

「ウギャアー、ウギャアー」

生まれた

9月5日に、わたしが生まれた

一人、人口がふえた

一つ命ができた

お母さんがガンバッて

わたしを生んでくれた

今思うと、

苦しかっただろなーと思う

わたしもお母さんになったら

赤ちゃんを生むんだ

一人の人口をふやして

一つの命を作って

赤ちゃんを生むんだ

 

 

生             【選評】

    田口 哲也(岐阜県坂祝町立坂祝中学校1年)

 

今年、ぼくのしんせきが

一人ふえました。

小さくて元気な男の子で

かわいがりたいです。

 

ぼくの手をにぎったとき

ぼくは 小さな小さな命の

誕生を

かんじました。

 

 

あたらしいおともだち     【選評】

    牧岡 亜実(新潟県柏崎市立柏崎小学校1年)

 

ハムスターがほしくなった。

かいにいった。

一ぴきだけ立っていたよ。

にらめっこした。

おにいちゃんもこれにしようと

いった。

かってもらって手にのせた。

まるかった。

あったかかった。

きょうからいっしょだよ。

あたらしいおともだちなかよく

しよう。

 

 

あり             【選評】

    藤間 大希(新潟県新発田市立竹俣小学校2年)

 

家のにわに出て

はっぽうスチロールの下を見ると

ありのすがたがあった

ぼくがありを

じっと見ていたら

ありたちは

パーっとにげていった

でも、一ぴきだけ

おいてきぼりのありがいた

ぼくはそいつをつかまえて

ほかのありたちのところへ

にがしてやった

「みんなにしっかりついていくんだぞ。」

 

 

おじちゃん         【選評】

    上原 さゆり(新潟県清里村立櫛池小学校5年)

 

もし正義の味方

「ウルトラマン」

がいるのなら その正体は

「美喜夫おじちゃん」

だろう

 

「田植えが大変だ」

そんな時おじちゃんは

「ブォー」

と大きな音で

車にのってやってくる

 

「稲かり大変だ」

そんな時おじちゃんは

「ブォー」

と大きな音で

車にのってやってくる

 

おじちゃんは

わたしたちの

「ウルトラマン」

 

 

兄弟             【選評】

    八木 健輔(新潟県三条市立三条小学校4年)

 

ぼくのお兄ちゃんは

頭が悪くて

力はぼくより強い

ぼくとお兄ちゃんとケンカしても

やっぱり勝つのはお兄ちゃん

でも

やさしいお兄ちゃん

 

 

んか            【選評】

    小林 幹子(新潟県三条市立三条小学校6年)

 

ああ、どうしよう。

私の心の中は、その言葉で

ぱんぱんにふくれあがっている。

 

まだおこっているのかな。

あやまってみようかな。

2時間目、3時間目と、

どんどんどんどん

時計の針が動いていく

 

友達の方を見ていたら、

友達と目があってしまった。

よく見てみると、友達もあせっていた。

話しかけてみよう。

「あのさ、さっきはごめんね。」

「うん、いいよ。私も悪かったしね。本当に、ごめん。」

 

けんかって、すごいと思う。

だって、前よりも、

もっともっともっと

友達と仲よしになれるから。

 

 

いす            【選評】

    坂本 恭章(高知県立高知若草養護学校小学部5年)

 

車いす

きんぴかの

車いすが

まちどおしいけんど

ぼくはほんとうは

きょうへいくんの

車いすのほうがえい

寝そべって先生にこいでもらえるき

 

車いす

いつもいつまでも

ぼくとのつきあいが

ながくなるけんど

よろしくね

 

 

まずく           【選評】

    伊藤 健一(愛知県立春日井高等養護学校2年)

 

人は つまずく

たくさん つまずく

 

でも 立ち上がる

力を入れて 立ち上がる

どんなにつらくても 立ち上がる

どんな時でも 立ち上がれる

みんなにもその力がある

 

 

夏              【選評】

    今井 瞳(新潟県清里村立櫛池小学校5年)

 

スースースー

あけていたまどから

スースースー

朝日いっぱいあびた風

 

母は台所で

たまねぎを切る

わたしもシャキ、シャキ、シャキ

目がうるむ

目のおくから涙がジワー

手の香り

ツーンときてたまんない

 

初夏のひざしが台所を光らせる

母とわたし二人を光らせる

 

 

○入 選(五十音順)

「命のうた」         井口 明子(新潟県中里村立中里中学校3年)

「ANGEL・FATHER」 伊藤 結香(岡山県立聾学校高等部3年)

「つぶやき」         一森 彩美(兵庫県立盲学校中学部1年)

「とけい」          宇佐美 華奈(新潟県立はまぐみ養護学校小学部2年)

「一人じゃない」       梅田 謙(新潟県三条小学校6年)

「花」            江口 紗代(福島県立郡山養護学校中学部1年)

「流れ星」          小関 雅子(岐阜県坂祝町立坂祝中学校1年)

「秋」            勝島 祐太(富山県立盲学校高等部2年)

「星の友だち」        北原 万里江(新潟県長岡市立上川西小学校4年)

「わようっ子カーニバル」   小林 大作(兵庫県和田山養護学校高等部3年)

「あさひ」          斉藤 絵美(山口県立豊浦養護学校中学部3年)

「光」            坂本 美和子(岐阜県坂祝町立坂祝中学校1年)

「せんせ、知っとった?」   指物 厳邦(兵庫県立盲学校中学部1年)

「おかあさんのこと」     清水 泰蔵(新潟県柏崎市立柏崎小学校1年)

「新学期」          田村 由希子(愛媛県立松山盲学校中学部2年)

「寝てはいけない」      高田 典子(大阪府立盲学校中学部3年)

「森」            滝沢 麻優(新潟県中里村立中里中学校3年)

「南の風さん」        中野 恵(東京都立葛飾盲学校小学部4年)

「るすばん」         中村 安希(愛媛県立松山盲学校中学部3年)

「ゆっくり流れる空の色」   西本 恵(奈良県立七条養護学校高等部1年)

「それ行けがんばれ、お父さん」萩原 洋平(富山県立盲学校中学部2年)

「けんか」          長谷川 武尊(新潟県三条市立三条小学校6年)

「境目」           太島 美和子(新潟県中里村立中里中学校3年)

「ケンカ」          松崎 貴子(新潟県見附市上北谷小学校6年)

「春」            松崎 友子(新潟県見附市上北谷小学校5年)

「弟」            宮澤 沙織(新潟県清里村立櫛池小学校5年)

「心」            宮島 芽美(新潟県三条市立三条小学校6年)

「かげろう」         山口 里未(福島県須賀川市桐陽高校2年)

「大きな海へ」        横井 良憲(愛知県名古屋市立富田高校2年)

「通学路」          余語 英秋(愛知県立春日井高等養護学校3年)