第7回矢沢宰賞の審査を終えて           月岡 一治

 今回も全国各地から沢山の作品が寄せられました。その中から特にすぐれている作品51篇をえらび、21篇をここに紹介させていただきます。私は、このたびも大変楽しく仕事をさせていただきました。

 今回の応募の特徴は、点字の作品(先生方が、私がわかるように書き直してくださいました)が多かったこと、女子より男子、それも高学年の皆さんによい詩がみられたこと、2人あるいは3人の合作があらわれたことでした。合作の作品には幸いすぐれたものがなく、しかし次回からどう評価しようかと私に宿題を残しました。大勢で壁画を描くような考え方なのでしょうが、私の発想の狭さを感じさせられました。

 先生方のお手紙には、沢山のことを教えられました。“感性の耕し”ということで詩にも取り組まれ、文化祭で今回応募した詩を発表しましたといわれる先生。障害をもつ子どもたちが、ゆっくりだけど言葉にしてくれるのを書きとめる、担任として幸せだなあと感じるとおっしゃる先生。この詩のコンクールがあることで生徒たちの学習や生活の中に集中点ができます、と言ってくださる先生。全員の応募作品をおのおのが大きな紙に書いて、校内に掲示し、父兄にも楽しんでいただいた楽しい試みを、写真で知らせてくださった先生もおられました。

 草の茎によじ登り、朝までに脱皮して空に飛び立たなければならない命があります。トンボや蝶だけではありません。人間の子どもたちにも同じ試練があるでしょう。家族、友だちと生きて、時が過ぎて行くのを悲しいと感じた日、子どもたちは大人になっていきます。その心の中に、朝露となって生まれる詩を、一粒でも残すことができたなら。子どもたちと暮らす先生方の心の中に、私と同じ思いがあると信じています。

最優秀賞

ありがとう    【詩に戻る】

これまでに無数の「ありがとう」が生まれてきました。その中に、こんなに深いありがとうがあったなんて…。お母さんの背中から生まれました。

奨励賞

【詩に戻る】

この詩で、あなたは自分の心をよく表現しました。自分の心を伝えることができると、つらい時も、友だちとはげまし合って生きることができます。

雪合【詩に戻る】

亮君は、えらいなあ。きみの人がらが、気持ちがすごくよくわかります。笑った/笑った/きのう泣いた話で/ぼくたちは笑った。あなたの豊かな表現力と、あったかく人を包む気持ちに思わず拍手してしまいました。

ぼくらの櫛池川 【詩に戻る】

あなたがおとなになって、まわりの景色が変わったとしても、ここに書かれた川が音を立てて、いつも記憶の中を流れます。この詩を書いたあなたの心の中に、しっかりふるさとの姿が残されました。

ひとこ【詩に戻る】

みじかい一言だけれど、どれも心がこもっているからです。人を思うあたたかい心は、人の心をふっくらとさせてくれます。「げんきです」「がんばります」亮太君のひとことが、まわりを励まします。

みんな生きてるよ 【詩に戻る】

こうき君は、先生にゆっくりとはなしました。先生はその言葉を書きとめました。本当に、すべてのものが生きているんだなって、こうき君が教えてくれました。

佳作

【詩に戻る】

空がお母さん、くもがその子どもに見えたのでしょうか。そして、おわりの2行が生まれました。ぼくはすきだなあ、この詩…。

【詩に戻る】

目が不自由な分、敬悟君の言葉は豊かに家族の手のようすを伝えてくれます。土がつまっている、空気でふくらんでいる、水の音がすんでいる…。どれも敬悟君の心をあったかくするものがすんでいる手です。

かみさま 【詩に戻る】

私もまだ見たことがないのです。本当にどこにいるんでしょう。知らないうちに、もうあっているんだよ…、そう教えてくれる人もいますが。

どんぐ 【詩に戻る】

すずめもカラスも白鳥も、たくさんいても実はみんな1羽づつちがうんだな、と思うようになりました。どんぐりたちの話し声、私も耳を澄ましてみましょう。

ぼくの犬 【詩に戻る】

すきだっていうことは、相手と同じ気持ちになれることなんだ。晃一君は、みんなにそう気づかせてくれました。

たん生【詩に戻る】

女の子って、こんなふうに感じているんだなあ。この詩は、生まれたからには精一杯生きなくっちゃ、と私をはげましてくれます。

【詩に戻る】

おわりの4行に注目。生まれたての命がギュッと哲也君の指をにぎって、あいさつしました。命と命のあいさつです。しっかりと生きましょう。2人とも…。

あたらしいおともだち 【詩に戻る】

わが家にもハムスターがいました。「きょうからいっしょだよ」。あなたの気持ちがよくわかります。

あり 【詩に戻る】

仲間と同じことができないでいるものを見て「しっかりついていくんだよ」と大希君はいいます。自分自身にいいきかせるときがあるかもしれません。

おじちゃん 【詩に戻る】

そうだよね。親せきに1人くらいウルトラマンがほしいよね。おじちゃんのたのもしさが、よくわかります。

兄弟 【詩に戻る】

「でも、やさしいお兄ちゃん」そうでしょう。お兄ちゃんはそのやさしさで、大人になっても健輔君をきっと守ってくれます。

けん【詩に戻る】

「心の中がぱんぱんにふくれあがっている」なんて、よく表現しました。「なかなおりすると、もっともっと仲よしになれる」。あなたは、大切な発見をしました。

車い【詩に戻る】

きんぴかの車イスが待ち遠しいけど、きょうへい君の車イスの方がいいなあ…。でもあなたは、新しい車椅子をすごく楽しみにしています。

つまずく 【詩に戻る】

今日もたくさんの人がつまずいて、たくさんの人が立ち上がったことでしょう。たくさんの人たちのため息や、気合いが、聞こえてくるような詩です。

【詩に戻る】

おわりの2行がいいですね。スースースー、初夏の風があなたの胸の中にも吹いています。