第6回 矢 沢 宰 賞
受賞者名,所属,学年は平成11年2月の応募当時
○最優秀賞(かいばみ賞)
除村美智代(東京都立墨東養護学校中学部2年)
さっきわたしは 道ばたをはう一匹のありを踏みつぶしてしまった
わざと踏みつけた訳じゃないのだけれど ありは死んでしまった
小さな小さなあのありより ずっと大きなこのわたし
そのわたしよりも大きいあのメタセコイアの木
木より大きな森 森より大きな山
山より大きな青いこの空
わたしたちを見下ろしている この大きな空よりも
ずっとずっと果てしなく大きな宇宙
そんな宇宙よりも大きくて重いもの それは命
さっきわたしが踏みつぶしてしまったあの小さなありの命だって
わたしたちの命のように どんなものより大切で大きなもの
○奨励賞
1席・かいばみ賞
素直になれた私 選評へ
榎田香織(神奈川県立平塚盲学校高等部2年)
知らない街・平塚に来た
盲学校に入った
不安だった・・さびしかった
家に帰りたかった
知らない街・平塚に来た
宿舎に入った
不安だった・・いやだった
早く家に帰りたかった
ものすごく家が遠くに感じた
ものすごく両親が遠くに思えた
知らない学校・盲学校に入った
教室には5人のクラスメイト
白杖をついた男子が
私の肩に手をかけた
思わず振り払った
援助を求めていたのだと
あとで気がついた
はずかしかった
いけない事をしたと思った
私にも役立つ事があると感じた
私を必要とする友人がいると思えた
わたしはねっこなの 選評へ
樫村さゆり(東京都立墨東養護学校中学部1年)
わたしはいまね、ねっこなの
たんぽぽのねっこなの
春のねっこなの
水はつめたくてきもちいいよ
土の中のさんぽもきもちよくて
どうして、春はこんなにきもちよくて
いいきぶんなのかな
夏のねっこなの
つゆの雨ですずしくて
きもちがよくて
でも真夏のわたしは
かれちゃいそうだな
秋のねっこなの
ちょっとさむくて
ちょっと水がきもちよくて
きょうも一日気持いい
冬のねっこなの
さむくてもそとはスキーをしたり
クリスマスで、ケーキをたべたり
プレゼントもらったり
正月におせち料理をたべたり
いいなーわたしもぼくも
たべたり、お友だちと、さわいだり
したいなー
3席・かいばみ賞
いのち 選評へ
浅水亜耶(神奈川県横浜市立聾学校中学部2年)
私は、まだ、若いから、
生きる意味があります。
今、将来や友情や家の人の事で
悩んでいます。
恋愛のことで
悩んでいる人が
一番多いと聞きました。
そうかな?
私の中身は、子供のまま。
だから、恋愛をするのが
難しいと聞きました。
でも、
友情のことが一番難しい。
それでも、
生きる意味があるんだから、
将来、苦しい事があっても、
楽しみです。
4席
ぼくの「たい」 選評へ
北井浩光(滋賀県立草津養護学校高等部1年)
沖縄へ行きたい
沖縄の海が見たい
―ぼくの心もきらきら輝きたいから
大きくなりたい
早く大人になりたい
―子供の時にできなかったいろんな事ができるから
生まれかわりたい
生まれかわって女性になりたい
―お母さんのやさしさがほしいから
ぼくの青春にあふれ出る
いっぱいの「たい」
5席
チョッピリ 選評へ
勝田 剛(神奈川県立平塚盲学校高等部1年)
普通の小学校に入学しました。
視力のことで辛い思いをしました。
遊んだり勉強したり
喜びの方がチョッピリ多く卒業しました。
普通の中学と盲学校の中学部のどちらかと選ばなくてはなりません。
最前列の席でも見えない黒板と
小さな文字でも大きく見える拡大読書機のどちらかを選ばなくてはなりません。
悩んだり まよったり
辛いことがチョッピリ少ない盲学校にしました。
盲学校の舎に入舎しました。
社会見学があり体育祭があり
不安がチョッピリへりました。
自宅から通学するか寄宿舎に入るか
どちらかを選ぼうと思います。
勉強する時間がチョッピリふえる寄宿舎を選びました。
○特別賞
ぼくの心 選評へ
宮本郷史(埼玉県立岩槻養護学校小学部3年)
ぼくの胸には
矢が つきささってるんだ
ぐっさりと、ずっと
しぶや医院で「入院」って
言われたときからずっと
人間の手じゃ
ぬけないんだ
完全退院したとき
はじめて ぬけるんだ
○佳 作
くも 選評へ
中澤鮎美(新潟県加茂市立加茂小学校4年)
空をみた。
くものイルカ、タイ、ヒラメ、
クラゲ、ヒトデ、イソギンチャク、
イカ、タコが
ぐにゃぐにゃしていた。
空の水族館が開館した。
いろ 選評へ
長崎秀美(沖繩県立西崎養護学校中学部1年)
土のいろは ちゃいろ
花のいろは むらさき
空のいろは あお
かぜのいろは 白
たいようのいろは あか
空を見上げる 選評へ
井町織恵(山口県立豊浦養護学校中学部3年)
朝 起きて 空を見上げる
学校へ行く時も 空を見上げる
帰りも 空を見上げる
母さんに怒られたり兄ちゃんと
ケンカしたり
そんな時 また空を見上げる
つらい時 ひまな時
空を見上げる
空を見ていると・・何だか落ち着く
夜 また星空を見ながら
「明日はどんな日になるんかな?」
空 選評へ
見田幸乃(新潟県立新潟養護学校高等部3年)
いろんなことに
制限されてきたけれど
見上げた空がすごく高いから
いまなら
すべてが叶うような気がした
深呼吸ひとつして
一歩踏み出せば
空に届くような気がした
風のにおい 選評へ
遠藤久恵(新潟県立はまぐみ養護学校小学部3年)
ねえ、先生
新潟の風っていい風だね
雪のにおいがするよ
長野の風って
あまり雪がふらないから
いいにおいがしないんだよ
ねえ、先生
雪のにおいがする
新潟の風 大好きだよ
えんぴつけずり 選評へ
須藤周子(新潟県加茂市立加茂小学校4年)
えんぴつけずりはとこ屋さん
丸くなったえんぴつの
頭をけずってくれる。
いらっしゃい。いらっしゃい。
えんぴつけずりのとこ屋だよ。
長いえんぴつ短いえんぴつ
みんなみんないらっしゃい。
とんがり頭にしてあげる。
えんぴつけずりはとこ屋さん。
赤ちゃんが生まれた 選評へ
仁木雄一朗(新潟県三条市立三条小学校3年)
お母さんは七月に赤ちゃんができた
ぼくはうれしくてしょうがなかった
二月十二日にやっと生まれた
女の子だった
ほっぺがポチャンとしていた
すごくかわいくて
ぼくは手をのばした
赤ちゃんはぼくの手をにぎった
ぼくは赤ちゃんの手がやわらかいと思った
赤ちゃんの手をにぎったとき
ぼくはしあわせと思った
赤ちゃんはぼくの顔を見てねむった
新しい家 選評へ
小谷圭史(兵庫県立和田山養護学校高等部2年)
夜にピカピカ光る天井をぼくは見た。
天井に蛍光とりょうで
星と月がかいてある。
ぼくが母に
「こんなのがいいよ。」
と言ったからだ。
これがトイレ、
広い場所だ。
便器が大きかった。
お風呂に手すりがついた。
入り口が広かった。
おへやが広かった。
とても動きやすかった。
お風呂の手すりを持ってとびこんだ。
水がかかった。
少しぬるかった、
でも、気持ちよかった。
とても最高な気分だった。
いもうとのあさこ 選評へ
渡辺雄斗(新潟県見附市立上北谷小学校2年)
あさこは、すぐいぼくる。
あさこは、ぷいっとしらんかおして、
へやから出ていく。
自分のおかしを食べたのに、
ぼくのおかしを食べる。
ぼくはおこる。
あさこはなく。
ぼくはしかられる。
あさこはおかあさんのうしろで、
にやっとわらう。
ぼくは、あさこの方がわるいのにと思う。
でも、またしかられるとわるいので、
しかえしはしない。
どうしてあさこは、
しかられないのかな。
不公平だ。
お兄ちゃんてそんだなあ。
198円のペットボトルの安さ 選評へ
安中みなみ(新潟県加茂市立加茂小学校4年)
いっつも、学校から帰る時に、
自動はんばい機がある。
そこの所に、長方形の紙で
「300円でお買得!」
と、買ってくれ!と言うような紙が、
はってある。
でも、自分の心は、こう思う。
「ふん。こんなのよりも、
にいつフードの方がだんぜんお得じゃないか。」
そして、家に帰ると、ドドドドドドドと、
母さんが来て、
「にいつセンターで、ポカリスエットが安いから買いに行くぞ氏v
と言われ、つれられる。
安売りの所で、わいわいがやがやと、さわいでる。
198円のペットボトルが、ゆれている。
母さんは、ペットボトルが少なかった時、一箱買う。
そして家へ帰って、198円のペットボトルの中身を飲む。
ああ、
やっぱ、198円はうまい。
私のたんじょう日 選評へ
関山知世(新潟県加茂市立加茂小学校4年)
私のたんじょう日
自分しか
持っていない
とくべつな日
ケーキの
ろうそく
けしてみた
大人になった
気がした
自分のとくべつな日
私のたんじょう日
冬 選評へ
坂田能博(東京都立墨東養護学校中学部3年)
木々達は眠りにつき
春の到来を待っている
大地は白銀に染まる
やがて湧き水になり
大地を潤す
僕はこたつにはいって
ミカンを食べている
僕は力を蓄えている
亀 選評へ
松尾康史(新潟県立長岡聾学校高等部2年)
亀はスローモーションのようにのろのろと歩いている。
のろのろと歩いている。
飛ばない。
走らない。
焦らない。
後へは退かない。
後悔しない。
自分の行きたい方へまっすぐに
歩いている。
亀は重くて堅い甲羅を背負いながら
のろのろと歩いている。
のろのろと歩いている。
誰の手助けも受けない。
ひと足、ひと足、力一杯に歩いている。
亀は自分を信じて自分の道をのろのろと歩いている。
のろのろと歩いている。
自分の孤独をちゃんと知っている。
けれども
最後まであきらめず、いつまでもいつまでも歩いている。
広々とした大地に自分の足跡をつけながら歩いている。
亀はのろのろと歩いている。
のろのろと歩いている。
友達 選評へ
大河原恵子(群馬県立二葉養護学校中学部1年)
家から離れて
友達とも離れて
リハビリのため一人で療護園に入園した
眠れない夜
常夜灯の灯りを見つめている
思い出すのは友達のこと
幼稚園からずっと一緒だった友達
いろいろなことがあって
どんなことでも相談できるようになった友達
今どうしているだろう
明日、電話してみよう
訓練に疲れた午後
人気のない部屋の窓から外を見ている
思い出すのは友達のこと
近くの病院にいたころは
何回も来てくれた
電話するたびに元気づけてくれた
さびしくて、心細くて
電話をかけたら、いつもの声
がんばれよ
はやくもどってこいよ
声をきいているだけで
元気が出てきた
電話なのにただうなずいて
やっと言った
ありがとう
売ったよ 選評へ
末村 悠(山口県立豊浦養護学校中学部3年)
大根売ったよ
大きな声で
お金の計算も
バッチ グー
ぜーんぶ
うったよ
がまんできないほど
うれしい
「音」 石原 美幸(愛知県立春日井高等養護学校2年)
「あんこうなべ」 市川 裕一(群馬県立二葉養護学校中学部1年)
「友達って」 出口 華世子(愛知県立春日井高等養護学校1年)
「春」 岩本 潤也(岡山県立早島養護学校高等部2年)
「無題」 江上 利裕(滋賀県立草津養護学校高等部1年)
「ゆき」 大久保 智佳(佐賀県立金立養護学校小学部3年)
「友達に」 奥原 健司(群馬県立二葉養護学校中学部1年)
「雑草」 小野 厚(新潟県加茂市立須田小学校5年)
「心をとかした光」 笠島 麻子(福井県立福井養護学校高等部1年)
「トラック」 川邊 雅俊(山口県立豊浦養護学校中学部3年)
「卒業(さよなら)のプレリュード」木崎 孝道(愛知県立名古屋盲学校高等部2年)
「おもいきって進もう」 木村 恵梨(山口県立豊浦養護学校中学部2年)
「あなたは、だあれ?」 蔵留 地幸子(愛知県立岡崎養護学校小学部4年)
「父の日」 黒田 美保(兵庫県立盲学校中学部3年)
「弟」 小林 勇希(大阪府立豊中養護学校中学部1年)
「自信」 近藤 美由紀(佐賀県立金立養護学校中学部1年)
「ランニング」 佐川 賢司(福岡県北九州市立小池養護学校中学部2年)
「私」 佐藤 あゆみ(新潟県立吉田養護学校中学部2年)
「しあわせ」 佐藤 香織(山形県立上山高等養護学校2年)
「スキー」 失陸 静也(北海道伊達高等養護学校2年)
「模型(自分)」 高橋 健(福島県立郡山養護学校高等部3年)
「いらだち」 高橋 徹(茨城県立下妻養護学校高等部1年)
「ぼくのおじいさん」 辻 賢昌(三重県立城山養護学校高等部3年)
「俺の青春」 中村 浩平(神奈川県立平塚盲学校高等部2年)
「宝物」 二村 沙誉(福岡県北九州市立企救養護学校中学部3年)
「雪がふったら」 畑 淳美(福岡県北九州市立小池養護学校中学部2年)
「ふで」 早川 夏月(新潟県西蒲原郡吉田町立粟生津小学校4年)
「傷ついた心を」 細野 佐織(静岡県立中央養護学校高等部2年)
「けしゴム」 吉野 光(新潟県見附市立今町小学校4年)
「水」 若林 舞衣子(新潟県加茂市立加茂小学校4年)