このたびの審査には北海道から沖繩まで、本当に全国各地からたくさんの作品が寄せられました。この中から特にすぐれた作品をえらび、22編を紹介させていただきます。回を重ねるたびに味わい深い詩がふえており、全国に埋もれている子どもたちの心の声が更に多いことを思います。この賞での審査を通して、私は一人でも多くの彼らと出会えることを願っています。
子どもたちを分けることは許されませんが、普通校に通うと自然の中での発見や感動が言葉になることが多く、行動範囲の広さによるのだろうかと思います。一方、体に生まれた障害は、多くの人があたり前だと思っている考えを洗いなおしてくれます。彼らが話す体験は、人が忘れている大切なことを気づかせてくれます。見守るだけではなく、何か自立を支えてあげようと思う私たちに、逆に大きなもの、素直な心を、チョッピリではなく深く教えてくれるのです。
今回特別賞として紹介させていただいた作品「ぼくの心」。胸板に手をあてれば、私たちの胸にももう、次第に太くなっていく小さな矢が刺さっていることを気づかせてくれます。
詩に添えられているものに、先生方からの手紙と詩集があります。今回は沖繩県立西崎養護学校の平安名育子先生が、中学部の生徒さん43名と作られた詩集「先生きいて」がとても印象に残りました。長崎秀美さんの詩「いろ」はその中の一編です。国語の授業で「詩集作り」を取り入れられ、詩集を読むとどの生徒の作品も個性と詩心が豊かです。全国の子どもたちを見ていたら、一緒に時間を過ごしておられる先生方の姿が見えてきました。うれしい発見です。次回は一層多くの作品と新しい発見に恵まれることを楽しみにしております。
人のすぐれた考えにその通りだ、と同感することはやさしいのです。読む人に、本当にそうなんだなあと深く思わせる考えを、自分の中に芽生えさせ育てあげることこそむつかしいのです。それができる人はとてもすくないのです。あなたはその一人です。大きな森、大きな山、大きな空、大きな宇宙、その宇宙よりも大きくて重いあなたの命がこの詩の言葉を育てました。ありはもちろん、人間を平気で殺す行為が、今も世界で起きています。私たちの胸は痛みます。
あなたの体験と、あなたの気持ちが、じつによく伝わってきます。「はずかしかった/いけない事をしたと思った」というあなたの気持ち。自分のことを忘れ、つらいだろう相手のことを考えるあなた。心のやさしさにうたれました。
たんぽぽの根っこがすごす春、夏、秋、冬の様子が書かれています。知らなかった。こんな気持ちで根っこはいきていたんだ。これからはたんぽぽを見たら根っこの姿も想像してみます。
年令がいくつであっても、私たちには生きる意味があります。あなたの御両親、おじいちゃん、おばあちゃんには、大切なあなたがいます。ひとりひとりにその人の「生きる意味って、なに?」ときいてみて下さい。みんなやさしい顔になると思います。
最後の二行を読んで、ただ願い事をならべているのではない北井君の胸のうちを感じました。この詩を読む君の声が、くり返し聞こえてきます。
視力の障害のために、盲学校と寄宿舎を選ばなければならなかったことがわかります。つらかったけれど、その選択が結果的に自分にはよかったというのです。勝田君には、小学校入学から今までの自分がよく見えています。言葉使いにチョッピリではないすぐれた表現力を感じます。
郷史君はこの詩を書いた翌年、小学四年生で亡くなりました。矢は「ぼくの胸」に突き刺さったけれど、それを見つめる「ぼくの心」は生きていて、この言葉を残しました。矢のあともないあなたの「ぼくの心」は、作品を送って下さったお母さん、御家族の心の中にいつまでも生き続けています。
○佳作
空の水族館が開館しました。青空が目にしみます。街のあちこちで、見上げている人たちがいます。
沖縄を、那覇市を、秀美さんが全国に色で紹介してくれます。紫色の花はなんだろう。風の色は白…。そこに立ってみたいと思う人が、今どんどん生まれています。
五百年も、千年も前から人間は、いいえ何億年も前には恐竜だって空を見上げたかも知れません。「何だか落ち着く」と井町さんはいいます。空にすんでいるなつかしさ。自分がそこから来たようにも思えて、僕も空を見上げます。
気持ちにひと区切り、つきました。この詩がうたう瞬間が、本当にあります。がんばれ、見田さん。
新潟に来て、体がよくなる予感があって、こころの窓が開きました。あなたに教えられて、先生も同じ窓から、風の中の雪のにおいを味わいます。
いせいのいいとこ屋さんが開店しています。出てくるお客さんは、とても楽しい気分になります。読んでいる僕も。
最後の一行を忘れないで下さい。妹さんが大人になっても、お兄ちゃんがいてくれるからと安心して眠る夜があるかも知れません。ほっぺがポチャンとしていたという表現、ほほえましい。
幸せな小谷君。これほどにしてくれる家族がいるなんて。読んで僕も最高の気分になりました。
あさこちゃんは何才なんだろう。おかあさんのうしろでにやっと笑うあたり、なかなか手ごわい。お兄ちゃんの役は、やっぱりそんかも知れない。
*いぼくる・方言。きげんを悪くする意。
同じ品物なら、安く買って飲むほうがずっとおいしい。中味は同じなのに、何でだろう。安中さんの詩を読むとわかります。人間の心理です。
あなたのたんじょう日に何千人、何万人もの人が生まれています。でもあなたは世界中にたった一人しかいないので、この詩の気持ちがわかります。おめでとう、あなたのたいせつな日。
冬、自分は力を蓄えている、という坂田君。木々も、大地も、こたつに入ってミカンを食べている君も同じことをしているという考え方がおもしろい。
僕ものろのろとこの詩を読みました。亀の姿は時々松尾君になりました。ゆっくりでもいい、お互い、歩きつづけましょう。
小さい時から受験などで競争することばかりだったひとが多いと思います。この詩を読むと、ほこりをかぶっていた「友達」という言葉を思い出します。
とびきり白くて太い大根が目にうかびます。学校の畑で作ったのでしょう。あなたが熱心に売っている様子が見えてきます。がまんできないうれしさがみんなにわかります。