瞬時にスイッチするアンテナではドップラー効果はパルスとして現れ、そのの大きさは無限大(∞)になります。つまり、アンテナのスイッチする方向によって+∞か-∞のパルスが観測できるだけなので、方位の分解能はアンテナの本数で決まってしまうのです。
そういえば、ドップラー式の石垣島の方探(ぞうの檻)も、アンテナの本数が24本もあるのです。
幸か不幸か、現実の回路では無限大の電圧が扱えず、応答性の悪さも相間って、ドップラー効果の大きさに違いを生じていました。このため、アンテナの本数以上の分解能が得られる場合があり、この状態を方探として使うのは基本的に間違いだったのです。
FM変調方式の方探で、アンテナ本数以上の分解能を得られた様に錯覚してしまった理由がもう一つあります。ドップラー効果によるパルス電圧は大きなリンギングを発生し、アンテナのスイッチの周期が短い場合には、次のスイッチによるパルス電圧と波形が重なりあってしまうのです。実はこの重なりあった波形を変調信号として観測してしまっていたのです。市販の無線機では数十Hz程度までスイッチ周期を下げないと重なり合いが生じてしまい、なによりもリンギング自身をなくさないことには理論と合わなくなってしまいます。