<Lepy LP-V3S>
ここ数年でデジタルアンプ(D級アンプ)が着目される中、激安のアナログアンプの評判が上昇しています。
その最たるアンプがLP-V3Sです。ピュアオーディオやハイレゾを求める訳ではなく、スマホからスピーカーを
いい音で鳴らしたいくらいの気軽な感覚で使うには、とても優れたアンプといえます。実は壊しても惜しい
値段ではないので、実験や改造するのに最適です。回路図を示します。(このLP-V3Sは、ミニピンジャックの左右入力
が逆でしたのでご注意を!修繕前の回路図です。)
<マトリックス結線>
一般的にマトリックススピーカーを2ch出力のアンプで駆動するには、マトリックス結線という方法を取りますが、
このLP-V3SはBTL出力のため共通のGNDが無く、一般的なマトリックス結線が使えません。特にこのMX-15の設計
にあるT型のマトリックス結線では、おかしなことになるのは容易に予想できます。
そこで、このマトリックス結線
の意味を考えてみました。キルヒホッフの法則からスピーカーに流れる電流を計算してみます。ちなみにアンプの
出力インピーダンスはゼロ、つまり電圧源と仮定します。アンプIC(TDA7377)
のスペックにはMAX4Ω(2Ω/ch)駆動と書かれているだけですので、実質的な出力インピーダンスはそれよりも十分に
低いと考えられます。計算式の左側は4つのスピーカーの場合の並列型マトリックス結線方法で、右側がT型マトリックス
結線です。
計算結果から、いずれの結線にせよセンタースピーカーにはR+Lの電圧、スピーカーLにはL-R電圧、RにはR-L電圧の成分が含まれること
が判ります。さてBTL出力のアンプからはどんな電圧が出ているかというと、R端子(赤)には+R電圧、R端子(黒)には-R電圧、
L(赤)には+L電圧、L(黒)は-L電圧が出力されていますから、これらを使ってR+L、L-R、R-Lを作れば良いことになります。
従って、3スピーカーのMX-15では下図の配線をすればLP-V3Sで駆動できることになります。
この配線は、T型結線を再現して
いませんが、本来のサラウンドスピーカーの駆動方法を実現しています。
<4スピーカー駆動問題>
メンバーの一人は3スピーカーの結線が難しいことを懸念して、4つスピーカーを使いカスタムのMX-15改を製作しました。
しかし、BTL出力に一般的な並列型マトリックス結線にしたためか、アンプ(LP-V3S)が壊れてしまいました。この配線では
+Rと+Lの出力に対しスピーカー(8Ω)が3つ接続され負荷インピーダンスが3Ω以下になります。定格(4Ω)を超えた使用に
無理があったのかもしれません。
⇒
負荷インピーダンスをバランス良く配分する配線をメンバーが思いつきました。(上図)この配線ならアンプに無理を掛けずに同じ出力を
得ることができます。但し残念ながらこの結線では、2つのセンタースピーカーにそれぞれR+L電圧が掛かるため、
2倍の電力でセンター音が強くなってしまいます。(NG結線もセンターはそれぞれ2Rと2Lで2倍です)
さてセンターの音量を1/2にしたいのですから簡単です。センター2つのスピーカーを直列につなげば完了です。何故かBTLの出力
に気を取られて気付くのが遅くなりましたが、3スピーカーと同様で下図のように結線すれば良いのです。
このように、
実はBTLアンプでもマトリックススピーカーを駆動できます。できるというよりマトリックススピーカの駆動にBTLアンプは適して
いると言えるでしょう。
だんだんサラウンドの魅力にとり付かれ、いろいろと実験をしてみたくなりました。BTL出力でのT型のマトリックス結線を試すため、
アンプの改造を始めます。(次へ)