瀬越先生の著作より(2) 


   

古人の作に碁を打つ時の心構えを20の項目に分け、上手と下手とを対照した

ものがある。読んで見て面白いと思ったから、採ってここに掲載して囲碁上達

の一助ともなれば幸いである。

1. 上手は頭で打ち、下手は目で打つ。

2. 上手はじゅうぶん考えて後石を下す。ゆえに、いかなる場合にも待ったをし

    ない。

3. 下手は打ってから後に考える、自然待ったをするようになる。

4. 上手は孫子の兵法の如く、戦わずして勝たんと欲し、下手は戦って勝とう

   と思う。

5. 上手は負けないことを信条として打ち、下手は取ることを目的として打つ。

6. 上手は常に攻守兼備の手を選び、下手の着手は兎角その一方に偏す。

7. 上手は先手を争い、下手は後手に甘んず。

8. 上手は形と筋を貴び、下手はダメを詰める。

9. 上手は捨て石を惜しまず、下手は一目も捨てぬ。

10.上手は累いの他に及ばんことを恐れ、下手は唯活きんことを欲す。

累い・・わずらい   足手まといとか、関係とかいう意味


野次馬談義(野次馬談義は瀬越先生の著作ではありません。)

A:4条ですがね。碁は戦いだと教わったのですが、戦わない方がいいのです

      かね。Cさん、どうなんですか?

B:Cさん、これは戦っても負けない人が言う言葉じゃないですか?

C:本因坊秀栄の碁は非常に明るい碁だそうで、そういう人ならこの文言のよ

     うに 言えるかもしれない。古人というのは誰だか分からないけれど、瀬越

      先生は秀栄のようになりたいと思ったのかもしれないね。でも、私の棋力

      では秀栄の碁の明るさなんて分からない。

         ただ、碁を並べていて、非常に腕っ節が強いなとは感じた。

B:梶原武雄プロが「碁の要諦は序盤にあり、中盤終盤はその後始末に過ぎな

     い」と言っていた、となにかの囲碁雑誌で見たのですが、それと関係があ

     るのではないかな。戦いになったらもう中盤だものね。

C:理屈で考えれば、棋力が同じ位で、読みもまた同じであれば、戦いは起こら

    ないはずなのだ。終盤だって、プロのように間違えて半目とか、一目の差だ

    と言うのであれば、差がつくのは序盤だけしかない。ただ理屈どおりになら

    ないのが世の習いだから、実際には中々そうならないけれど、碁道を究めよ

    うとする梶原先生の言葉としては、うなずける。しかし、それは最高峰レベ

    ルのプロの世界の話であって、この4条のこの文言はプロの理想としてはい

    いけれど、われわれ下級アマには、あてはまらないのじゃないかな。下級ア

    マとしては、次のように言いたい。

    「上手は戦って勝たんと欲し、下手は戦わずして地を欲する」  郡山市  塚本