瀬越先生の著作より(1) 


   

先日、ちょっと必要が出来て、瀬越憲作先生の著作をひっくり返しておりました。そうしたら、

いろいろな文章が出てきました。多分、先生がお書きになった文章だと思わます。

面白いので順次ご紹介したいと思います。

囲碁哲学より

1. 芸に当たりては師に譲らざる意、碁において最も存すべし。

2. 勝ちも以て貶すべき碁あり、負けるも、以て賞すべき碁あり。

3. 勘は経験の蓄積なり。

4. 敵の心になって考えよ。

5. 急功を求むる時は危うし。

6. 形勢の上に勝つことを心掛けよ。

7. 既に役を畢えば石を惜しむべからず。

8. 敵を攻めて己れの地を作るは大得なり。

9. 中押しの負といえども、その謂れあるは咎むべからず、一目の負といえども、その謂れなき

   は許すべからず。

10. 既に之を好む、宜しくこれを学ぶべし。既に之を学ぶ、よろしく之を究むべし。之を究めん

   とする、宜しく深く慮るべし。

11. 理の極、妙の致は師もこれを授くること能わず、弟子も受くること能わず、

常習の際、自然
に自得するを要す。

12. 碁局は死物なれども之を打つは人に在り、人これを打ちて動静進止の間変化百出す、

碁の
活機活方茲においてか存す。

13. 碁は肉眼を以て見ることなく、能く心眼を開きて洞察すべし。

14. 碁道は一著の優を貴びて貪婪飽く無きを許さず。


野次馬談義

A:瀬越憲作先生ってどんな人?

B:呉清源が日本へ来たとき師匠になった人だ。確か杉内雅男プロの師匠でもある筈だ。

C:私が碁を始めた昭和20台前半には現役ではなかったな。

    鈴木為次郎、加藤信と並べて棋界の三長老といわれていた。

B:アマのために随分碁の本を書いているね。プロ棋界のインテリと言われた。

私の思
い違いでなければ広島中学(旧制)を出ていると思う。

当時中学を出るというのは大
変な事だったらしい.

C:著書の中に出てくるいろいろな問題図をみていると多分それがオリジナルで、

よく
集めておいたものだと感心もするし、スゴイなとも思う

A:何時頃活躍したの?

B:大正の後半から昭和の十年代頃までじゃないかな。碁ワールドに中山典之プロが

連載
している昭和囲碁風雲録の始めのほうに出てくる。

A:囲碁哲学の最後のほうの貪婪というのは、なんて読むのでしょう?

C:ドンラン、たいへん欲が深いという意味だな。ところで、棋書に貧婪と書いてあった。

    ただ、貧婪では意味が通じない。貧と貪は違う字なのだが、きっと何処かで

間違えたのだろう。(郡山市
   塚本   昇)