私たちの体の表面を覆っている皮膚の構造って、けっこう複雑なのをご存知ですか。
単純な一枚の皮でできているわけではありません。
皮膚は表皮と真皮とに分かれ、表皮のいちばん外側を角層といいます。
何層にもおよぶ厚い角層細胞が全身の表皮を覆い、保護しています。
この角層、じつは角化細胞の死骸なんです。死骸であると同時に、外の刺激物(化学物質、アレルゲン、細菌、紫外線など)から内部の細胞を守り、体内の水分の蒸発を防ぐ、とても重要な役目を果たしています(図1参照)。
そして、ドライスキンやアトピー性皮膚炎、おむつかぶれなど、トラブルを抱えた皮膚の多くは、角化細胞の配列に隙間が生じて、角層の機能が弱まった状態といえるのです(図2参照)。
乳幼児期は新陳代謝が盛んでよく汗をかき、重ね着をして汗で濡れた下着のために皮膚が蒸れ、角層が壊れることがあります。皮膚にとって、蒸れた状態は好ましくありません。蒸れることで、角層のバリア機能が弱まってしまうからです。
おむつの中は湿度の高い状態です。密閉されて湿度が高い環境に加え、おむつの機械的刺激(尿を吸って硬くなった紙おむつで大腿がこすれ湿疹ができる)、尿や便による刺激(細菌の増殖やアンモニアなど)などによって角層が破壊され、「おむつ皮膚炎」(通称おむつかぶれ)が起きます。
カンジダ菌が増殖したことで起きる皮膚症状を「カンジダ症」といいますが、おむつをしている赤ちゃんにも見られます。カンジダは健常な人の糞便、膣、咽頭、口腔、皮膚も検出される常在菌です。カビの一種ですから、皮膚環境の湿度が高くなると増殖します。
見た目の症状としては、境界が明瞭な紅斑を生じ、小水疱や膿などが見られることがあります。カンジダ症のときは、抗真菌剤の外用(*)を一日一、二回おこなってください。
おしりのケアは、おむつの交換時に、水で絞ったタオルで簡単にぽんぽんとたたき、そのあとおしりを十分に乾かしてからおむつをつけましょう。
その際、市販の「おしりふき」を使うのは、肌の弱い子には適しません。
濡れた紙や布で皮膚をこすると、皮膚は痛んでしまい、赤くなりますから。
便が出ていたら、あるいはまだ授乳中で柔らかい便がついていたら、ティッシュペーパーなどでやさしくふき、水で軽く流すか、水で絞ったタオルでぽんぽんとたたいて、その後しっかり乾燥させてから、おむつをつけます。
水は皮膚を刺激し、赤ちゃんに心地よい刺激をあたえます。いずれのときも石けんはいりません。入浴したときも石けんは不用です。水で軽く流すだけで十分です。
おむつかぶれでおしりが赤くなっているときは、短時間でもおむつをはずし、パンツをはかせて通気性をよくしてください。風通しがよいと、赤みは改善されます。
ステロイドは使用しないでください。乳児の皮膚は角層が薄く、ステロイドの吸収が高いのです。臀部はとくに角層が薄く、腕の皮膚を一の吸収力とすると、陰部は四〇倍も吸収します。
ステロイドの使用は、さらにカンジダ症を誘発するほか、くり返し使用するとむしろ傷の治りが悪くなり、肉芽形成(*)が見られることもあります。
ベビーパウダーは、おむつの中が蒸れて、赤みがあるときに、軽くはたいて使います。赤みのないときは必要ありません。
一方、おしりがかさかさして荒れているような場合も、ワセリンや保湿剤の軟膏は不要です。保湿をすれば、そのときは潤っているように見えますが、保湿をくり返すことで、肌本来の保湿機能はさらに小さくなり、皮膚のトラブルが大きくなるからです。
このページはジャパンマシニスト社「ちいさい・おおきい・よわい・つよい」No.69に掲載されました。