アトピー性皮膚炎
 赤ちゃん・子どもに
Q ステロイド、アンダームetc. 薬、長期間使いつづけて大丈夫?
Q アトピー性皮膚炎は、小児期に皮膚のかゆみをともない、年齢とともに自然治癒していく傾向にある疾患です。
外用薬(ぬり薬)は対症療法ですから、一時的に炎症をおさえますが、アトピー性皮膚炎を治す薬ではありません。どのような薬も効果が強ければ強いほどそれにともなう反作用(副作用)も強くもちあわせます。

アトピー性皮膚炎 イラスト
  また、「保湿剤やワセリン」のようにそれ自体の薬理作用は殆どないものも長期に皮膚を保湿すると、皮膚は「保湿」がないとバリバリに乾燥してしまうようになっていきます。

 
皮膚の軽い乾燥には保湿剤はいりません。
子供に保湿剤を使うときは、乾燥の強い所だけ塗ります。

 
ステロイド外用剤
抗炎症作用が強く、炎症症状をよくおさえます。

局所副作用としては、ホルモン作用により皮膚を構築する繊維の増殖を抑制しますので、皮膚が薄くなり、特に皮膚の膠原線維の少ない老人では打ち身のときに内出血しやすくなります。ステロイド外用を継続すると膠原線維が減少するので、家の柱を失うように皮膚が薄くなり、血管を取り巻くクッションがへり外からの力に負けやすくなります。

薬の吸収がよい顔面では、毛細血管拡張・にきびなどもよくおこります。

長期間連続して使用したときは、皮膚がステロイド外用剤へ依存することがあり、外用を中止時にリバウンド(皮膚症状の強い悪化)がみられます。
(参照:脱ステロイド療法を受ける「成人型アトピー性皮膚炎」の患者さんへ

小児は、皮膚が薄く外用剤の浸透が高いために外用薬の効果も高いのですが、同時に副作用も生じやすく、全身に毎日外用すると、皮膚から吸収されて副腎抑制をおこしたことが古くから報告されています。
(参照:ステロイド嗜癖(しへき)

アメリカのステロイド外用剤添付文書には、小児に対して長期外用の効果と安全性は確認されていないと記載されています。

アトピーは成長とともに自然治癒していきますからステロイド外用剤にできるだけ頼らず、使用するときは炎症の強い部分に局所的に短期間使用すること、連用せずに間歇的に使うことをおすすめします。

ステロイド内服薬は、小児アトピー性皮膚炎の患者さんには原則使用しません。ステロイドを内服した場合免疫を抑制し、種々の副作用を生じることがあるからです。

からだがもっている副腎皮膚ホルモン(ステロイド)をつくるはたらきがおさえられてしまうこと。

【ステロイド外用剤の局所性副作用】
皮膚の膠原線維の再生を抑制するため皮膚はうすくなります。毛細血管がふえ、赤ら顔となったり、皮脂腺にステロイドが溶けて、皮脂分泌が亢進してにきびができます。

 
ステロイド以外の外用剤
非ステロイド外用剤(消炎鎮痛剤をふくむ軟膏アンダームなど)、抗生剤含有軟膏(ゲンタシンやクロマイなど)、いろいろな保湿剤(アズノールやヒルドイドなど)がこれにふくまれます。

非ステロイド外用剤はかぶれを起こしやすいこと、抗生剤含有軟膏は抗生剤を含んでいても、皮膚の上での感染に対する効果は高くないこと(とびひなど、皮膚の表在性細菌感染症は抗生剤の内服が必要となります。)、保湿剤も全身に毎日使うと皮膚自身の保湿する力が育たないこと、などがあります。

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その他の薬
漢方薬は自然治癒をまねく薬のように思われがちですが、多くの漢方の成分、効果効能は不明です。

かゆみをおさえる抗ヒスタミン剤(アタラックスなど)は古くから使用されています。副作用は眠気などです。こどもは大人にくらべ抗ヒスタミン剤は高い効果が期待できますが、アトピー性皮膚炎のすべてのかゆみをおさえることはできません。アトピー性皮膚炎のかゆみは、ヒスタミンのみで起こるのではないからです。

アトピー性皮膚炎は、年月をかけ皮膚が外界のいろいろな現象に適応できる能力が高まり、「自然治癒」が導かれ治っていきます。

小児は高い自然治癒能力をもっていますから、安易に外用薬に頼らないで気長に経過をみること、ステロイドはできるだけ使用せずに自然治癒をさまたげない治療をおこなうことが大切です。


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