★この冊子『居場所の歩きかた』とは何ですか。


●副題にもある通り、山形県内の各地で「不登校・ひきこもり支援」を目的に活動しているNPO(民間非営利団体)を紹介するガイドブックです。全部で一二の団体――いろんなかたちクラブ(IKC)[酒田市]、すいむあうと[酒田市]、自立支援センターふきのとう(鶴岡市)、hotto(ほっと)する会[新庄市]、フリースペース春夏[山辺町]、NPO法人発達支援研究センター[山形市]、ぷらっとほーむ[山形市]、NPO法人東北青少年自立援助センター蔵王いこいの里[上山市]、フリースペースネコの会[高畠町]、フリースクールWith優[米沢市]、NPO法人から・ころセンター[米沢市]、小国フォルケホイスコーレ[小国町]――に関するインタビュー記事が掲載されています。どの団体も、「不登校・ひきこもり」で悩んだり苦しんだりしている人びとに存在承認の場(=居場所)を与えてくれるような活動であるというところから、『居場所の歩きかた』というタイトルにしました。


★なぜそのような冊子を発行するのですか。


●山形県内では、これまで、さまざまなNPOが「不登校・ひきこもり」で悩み苦しむ人びとに対する支援活動を組織し、課題解決の取り組みを続けてきました。ところが、それら各団体の活動理念や内容については、活動に取り組んでいる支援団体相互の間のみならず、そうした支援活動を下支えすべき中間支援団体・行政機関の間においてさえ、正確な実態把握や情報共有がなされていません。これでは、支援ニーズを感じた当事者の人びとが助けを求めようにも、いったい誰に手を伸ばせばよいのか、実際に手を伸ばしてみるまでわかりません。あるいは相談を受けた窓口も、そこで対応できなかった場合に、他のどこにつなげばよいのか、実際につないでみるまでわかりません。これは、利用する当事者の人びとにとってあまりにもリスクが高すぎる状況だと言えるでしょう。そうした現場の状況を少しでも改善していくために、NPOの側から、現在の民間支援状況の俯瞰図を提供していくことができればと思ったのが、このガイドブック作成の第一の動機です。


★でも、県内の支援団体を一覧できるリストは、すでに行政機関などが作成しているのではないですか。


●確かに、いくつかの機関・団体がそうしたリストを作成しており、現場でも活用させてもらっております。しかしながら、それらの多くは、各支援NPOの客観情報――連絡先住所・電話番号、支援内容・料金、支援対象者の条件など――の提供のみに限定されているため、それらが実際にどのような人たちによって、どのような価値観や考えかたに基づいて、どのようなやりかたで運用されているのか、等々についてのリアルな情報を伝えてくれるものではありません。意外に理解されていないことなのですが、NPOには「非行政/非営利」以外の枠づけが存在しないため、支援の目的や対象、方法などはすべて、それぞれの団体が自分たちの価値観や考えかたに基づいて定義し組織化しています。ということは、一口に「不登校・ひきこもり支援NPO」と言っても、その目的や対象、方法など、活動のありかたはそれぞれの団体によって千差万別であるわけです。であれば尚のこと、各支援団体の客観情報の提供だけでなく、主観情報――それぞれの団体が立脚する価値観や理論、人間観や支援観などに関する情報――の提供が急務であるということになります。本冊子のユニークな点は、まさにこの主観情報を、各支援団体へのインタビューという形式で収集したところにあります。


★インタビューはどういう形式で行ったのですか。


●二〇〇八年一〇月から一二月にかけて、実際に、編集長・滝口克典が各支援団体に足を運び、団体を代表してお話くださる語り手の方に一〜二時間ほどのインタビューを行いました。質問は大別すると四つ。一つ目が「活動の概要・目的・動機・経緯はどのようなものか」、二つ目が「活動に際して大事にしていることは何か」、三つ目が「活動の売りは何か」、そして四つ目が「活動の課題は何か」。これらの問いを投げかけることで、各支援団体の価値観や考えかたについての言葉を引き出すよう意識して聞き取りを行いました。聞き取りの内容は録音し、後に文字おこしをして、それをもとにインタビュー記事を作成しました。一団体につき八頁(四〇〇字詰原稿用紙に換算して二四枚)という分厚い記述ゆえ、それぞれの活動の実像をリアルにイメージしてもらえるのではないかと思います。  また、各支援団体の紹介記事の最後の頁には、それぞれの団体の活動場所の見取図がイラストで掲載されています。これは、取材に同行した編集委員・今村祐子が、インタビューの最中に活動場所の配置や雰囲気のスケッチを行い、それをもとに作成したものです。こちらのイラストもまた、それぞれの団体の日常風景や活動の雰囲気をイメージするのに役立ててもらえるのではないかと思います。


★他に何か、補足はありますか。


●各支援団体の紹介記事における記載内容や数値データなどはすべて、インタビュー当時の二〇〇八年一〇月から一二月にかけてのもので、冊子発行時点(二〇〇九年四月)のそれとは異なる情報が含まれているかもしれません。ご注意いただければと思います。それでは、山形県内各地の居場所の旅をお楽しみください。