天皇陛下からご下問
天皇陛下には、町村知事の奏上をお聞きになったのち、道政一般についてご下問になった。その大要は次のようなことで、町村知事は 「いまの北海道について深いご理解と道民の生活に対する厚いおぼしめしを寄せられたご下問でまことに恐縮したしだいです」と語っていた。
陛 下 炭鉱離職者がだいぶん出ているようだが、その人々の再就職はうまくいっているか。
町村知事 こういう労働者不足の際でありますから、壮年の者の就職にはさほど困難はございませんが、高齢者や、母子家庭の婦人の就職はかなり困難であります。この点私ども、最もカをいれているところでごぎいまして、こんごもいっそう力をいれてまいりたいと存じております。
陛 下 さきごろの十勝沖地震の災害復興の状況はどうか。
町村知事 幸い、政府のゆきとどいた対策もあり、被災者も努力しておりますので復興は概して順調に進んでおると存じております。
陛 下 ことしの農作物の作がらはどうか。
町村知事 ことしは、春、多少不順な天候が続き心配いたしましたが、七・八月は、比較的好天に恵まれましたので、稲作・畑作とに、昨年にそん色のない出来ばえで推移しており、農民は、 明るい表情でおります。
陛 下 北海道のへき地学校は解消されつつあるのか。
町村知事 へき地学柁の対策には関係者は非常に苦心を重ねておりますが、その解消はなかなかむずかしい状況にあります。中学校の場合は、道路がよくなり、冬は寄宿舎に収容することも可能なので、あるていど統合ができるのでありますが、小学校は遠距離から通学することは困難であり、また寄宿舎に収容することもむずかしい状況で、なかなか思うように統合を進めかねております。 しかし、最近は道路の改良も進みスクールバスなどもふえてきておりますので、従前にくらべるとへき地性というものは少しずつ薄れていっております。その意味では、へき地学校も少しずつよくなりつつあるのでありますが、まだ、急速に解消するというわけには、まいりかねております。
陛 下 観光客がふえているようだが、観光地の自然は保護されているか。
町村知事 観光客は年々非常にふえてきております。それに伴って、どうしても自然が安易に破壊される状況が見受けられますので、観光開発と自然保護は、ぜひとも両立させ、自然が破壊されないよう、全道民とともどもにつとめてまいりたいと存しております。