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Inside Farming Vol.56 (Japanese)



長野県知事選挙雑感
 
  全国的にも注目を集めた長野県知事選挙が10月15日に行われた。結果は元副知事の池田氏を新人の田中康夫氏が10万票以上の大差で破るというものあった。

 多くのメディアが取り上げているとおり、池田氏は早くから出馬を表明し、既に4月の段階で県議会議員や市町村首長の大多数の支持を得て磐石な選挙体制を確立していた。そして無風のままで吉村県政は禅譲されていくはずだった。しかし、県下財界トップによる田中氏擁立と氏の立候補によって事態は一変する。

 こういったトップダウンの知事の決められ方(あるいは公共事業を中心とした利権構造が見え隠れする旧体制)に対して想像以上に多くの県民が抵抗感を抱いていたのかもしれない。選挙は「官僚」対「民間」、「トップダウン」対「草の根」、「組織動員型選挙」対「インターネット勝手連」そして「世代交代」といういくつかの対立構造を浮き彫りにし、その結果として開票開始30分で当確が報道されるという大逆転劇が起こった。
 
 しかし、それにしても、だ。これほど大差で田中氏が勝つとは思わなかった。
 
 なにしろ県議や首長が池田氏の後援会の主要なメンバーなものだから、それにわざわざ反旗を翻し田中支持を公に表明しようとする人は少なく、田中氏支持の盛り上がりがなかなか表面化してこなかった。それよりも「長野県の民主主義のために!」と早くから田中氏支持を表明するという”勇気ある”行動をとった頭取のいる地元有力地銀の八十二銀行にはいろいろな方面から圧力が働いたなどいう噂が流れたり(後にそれらの圧力はなかったと否定された)、やはり会長が田中氏支持を表明した県下大手書店の平安堂に政治団体が街宣車を乗りつけて抗議をしたり、田中氏への中傷ビラが流出したり・・、なんだか重苦しく「物言えば唇寒し」という閉塞感が高まっていた。一方で池田陣営は大量動員を繰り返していた。

 だから蓋をあけて、驚いたのは私だけではなかろう。そして池田氏を支持していた県議や首長たちは愕然としたことだろう。サイレント・マジョリティが出したこの結論は吉村政権継承へのNO!と同時にそれを支持していた彼らの政治手法に対するNO!を突きつけているのだから!(民意と乖離しすぎている「裸の王様」か?)。 
 
 田中氏のPG日記を毎月読んでいると、氏がもの凄く頭の切れる人だと分かる。だから彼に対して個人的には共感できない面もいくつかあるが、それを差し引いても、その行動力や判断力には大きな期待を寄せている。頑張ってほしい。
 いずれにしても、新知事の田中康夫氏が県政に新風を吹き込んでくれるのは間違いないだろう。既に氏は「公共事業の見直し」、「長野オリンピックの帳簿紛失問題再調査」など期待できる公約を明言している。

 ところで、総理大臣も国民が選べたらいいのにね。今の首相どう?

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追伸:田中新知事の就任初日の10月26日、県幹部の企業局長と農政部長が、まるで新知事に喧嘩を売っているかのように感情的に文句を言ったり、名刺を折り曲げたりしている場面が全国放送のTVで放送されました。それらの報道を見て長野県庁にはその職員らに対する非難や抗議が殺到したそうです。行政マンと新知事が県政について主義主張をぶつけ合う理論的な対立や議論なら、それだけで田中新知事が当選した価値があったといえると思います。しかし、感情的な対立では・・・・・なんだか情けなくなりました。
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