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Inside Farming Vol.15 (Japanese)



長野オリンピック。だれかしっかり総括して!

オリンピックの前に「長野オリンピック地元はたいへんですね。盛り上がっていますか?」という趣旨のメールを東京に住む3人の友人から頂いた。その度ごとに「長野市と松本(市と私の住むその周辺)は距離も離れているし、実はこの2都市は昔から仲があんまり良くないんです。そして今回のオリンピックも長野県の開催ではなく The city of NAGANO が開催都市ということで、松本市以南の長野県はほとんど盛り上がっていないのが実状なんですよ。チケットも当たらなかったしね」と返事を出した。
日頃はそんなに意識していないように見える地域のライバル関係だが、今回のオリンピックは長野市中心で松本市以南にはなんのメリットももたらさないし、逆に県税や公共投資が全県に公平に配分されていないのではないか、などの不公平感がライバル意識に拍車をかけた。さらに招致活動費20億円の帳簿の紛失(信じられない)、次々と膨らんでいく大会経費、滑降問題(Inside Farming Vol10参照)、不透明なチケット販売などなどで、これは地元のオリンピックじゃなくて「長野市のオリンピック」なのだというように意識の隅に追いやったイベントになりつつあった。
日本選手が大活躍するまでは!!!

ふたを開けてみたらオリンピックは本当に盛り上がった。プレッシャーに負けず結果を出す選手の姿はすばらしかった。昔のようなナショナリズムを感じさせない若い選手達にすがすがしさを感じた。いままで門外漢だったわたしも勝ち馬に乗るように楽しんだ(人間って勝手なんだね)。
でも、マスコミの多くは盛り上がり過ぎ。
スポーツがもたらす感動は純粋で大きい、そして無批判なだけに、多くの問題はその影に隠されてしまう。

あるTVでオリンピックを成功させた裏方さんを扱った番組は噴飯ものであった。「天候に恵まれず競技が延期されるなかで、夜中の2時に必死に雪上車を動かしコース整備をする裏方さん。ご苦労様」という内容。もちろん裏方さんやボランティアの力の大きさに感謝するのはOKなのだけれども、深夜2時までこうこうと照明をつけて、圧雪車のうるさいエンジン音が鳴り響くコース整備は、野生動植物に与える影響を考えればとても環境を大切にした行為とは思われない。その裏方さんには罪はないかもしれないが、光と音で激しく生態系をぶち壊している光景をご苦労様と言って報道するセンス。事前には整備する時間の制限や取り決めもあったということらしいが、全く守られていなかったのか!という視点こそがジャーナリズムではないのか(ジャーナリズムじゃないのか)。

開会式で飛んだブルーインパルスの裏側を特集した番組もあった。あの一瞬の飛行のためにどれだけの準備と苦労があったという内容で、ブルーインパルスってカッコイイなという印象を視聴者に与えたが・・。オリンピックは単なるスポーツの祭典ではなく、商業的な祭典でもあるし、さらには国力をアピールする為の政治的な祭典でもある。かつての東欧諸国が血眼になって強い選手を養成したのも国力をアピールするためだったし、例えば日本がモスクワ・オリンピックをボイコットしたのも政治的なスタンスを世界中に示す為にオリンピックを利用した結果でもある。そういう政治的な”平和”の祭典で地雷の被害をうけた聖火ランナーが最後に走った意味。その一方で開会式にブルーインパルスが飛行する意味。そこらへんの意図が今一つ理解できない私に、意味付けをしてくれる番組ではなかった。

せっかく感動し盛り上がったスポーツ大会にケチを付けるつもりはない。けれど招致活動、運大会営、環境との共存、施設の後利用、経済効果などジャーナリズムが検証すべきことは多くあるし、して欲しい。NAOCも情報の公開に最善を尽くし、マスコミの検証を甘んじて受ける度量をもって大会総括してほしい、と長野県人として望んでいます。

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