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Inside Farming Vol.38 (Japanese)



恒例、1999 今年のインターネットを振り返る 

 今年のインターネットを一言で表現すると、「告発」だろう。おそらくインターネット史に残るであろう告発事件が世間を騒がせた年だった。

 「ビデオデッキの不具合に対してメーカーにクレームを入れたところ、そのメーカーのお客様窓口の「えげつない言葉づかい」に激怒した個人がその対応を録音し、自分のホームページで公開した」ことから始まったというこの事件は、ネット以外のメディア(TVや雑誌)を巻き込んだり、裁判沙汰にまでなりそうな勢いになったりと物議をかもした。
 そのメーカはネットの持つ影響力を見誤っていてのかもしれないが、対応の不手際も手伝って、結果としてメーカーの信用は少なからず傷つき、ダメージを受けたという印象だ。もちろん告発した個人も第3者によって個人情報を特定されネット上で公開されたり、いやがらせを受けたり、批判されたり(応援もあったというが)とかなりの痛手をうけたようである・・・・・人を呪わば穴二つなのね・・・・・(この事件については・・・インターネット弁護士協議会などを参照にしてください)。

  この告発事件に影響されてか、自動車ディーラ告発、取引相手のおもちゃ会社告発、先生による校長告発、リストラ社員の惨状告発、役場職員による首長告発、通販業者告発、社内セクハラ告発などなど、一時期はいろいろな業界や分野に渡って告発系ホームページが乱立した(告発、批判、暴露、中傷など厳密には区別することができなくなっているページもいっぱいあった。世の中、腹に据えかねることが多いようだね・・・)

 1997年(Inside Farming12)に私も既に指摘しているが、告発系のホームページの登場は十分に予想されていたものである。誰もが世間に考えや文章を発表する場を持った(=弱い個人が大きな力に屈せずに対抗できる手段を持った)のだから、基本的には「ペンは剣よりも強し」を実践できる素晴らしい世の中になったと考えるべきであろう(ただ、一個人のページがこれほど社会的に大きな影響を与える事が出来るとは思わなかったけれども)。
 しかし、「ペンは剣よりも強し」を実践するのは大変だ。強烈な意志と燃え滾るようなエネルギーで自己のプライバシや多くの時間を犠牲にして行わなければならない。自分の告発が社会的に与えるる影響に対して責任を負わなくてはならない。そして憎しみや怒りの感情よりも客観的な事実の積み重ねで文章を構築していかなければならないという冷静さも持ち続けなくてはならない。そうでなければ告発している貴方が告発される立場に逆転していまう可能性がいつでもあるのだ。

 単なる批判でない、告発。感情による中傷でない、事実に基づいた告発。もし貴方が大きな力の前に屈しそうになったとき、あなたは告発できますか?と問われれば、ちょっと戸惑う私です。
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