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Inside Farming Vol.12 (Japanese)



インターネットで見た1997年(後半)

97年後半を代表する言葉は不況と倒産であった。
不況不況と心理不況を煽るつもりはないが、物が売れない、資金が回転しない、身近にも倒産が相次ぐといった現実。98年の景気復活を心から祈りながら、不景気の代表でもある低迷する株式市場とネットで流れる風説についての雑感をまとめてみた。

97年後半の準大手・大手証券会社の連続倒産はびっくりした。同時にバブルのツケが廻ってきたとも感じた。本質的には両証券会社の経営体質が一番の原因だろうが、「利益供与」「損失補てん」「飛ばし」「簿外債務」など再三起こる証券業界全体の不祥事が業界に対する不透明感と不公平感を呼び投資家の不信感を増幅させた結果でもあろう。特に「簿外債務」を抱え廃業した証券会社はまず自社に投資している投資家へ背信行為を行いながら証券業務を営んでいたという点で罪は重い(そこで働く多くの社員に責任があるのか、無いのか分からないけれど)。
不良債権が正しく報告されなかったり、公開する情報に粉飾があるのならディスクロージャー制度も監査制度もまったく無意味に見える。そして投資家は羅針盤を失いただ迷うしかなくなる。またある報道では某証券会社で一般個人投資家を「どぶ」という隠語で呼んでいたとも伝えられていた。一般投資家をその程度にしか見ていないという業界の雰囲気を垣間見たようで個人の投資マインドはビックバンを目前にしながらも急速に冷えてしまう。
株式市場は特定の人物や会社・業界のためにあるわけでなく、すべての人に公平に開かれたマーケットであるという市場への信頼、そして業界自体への信頼、さらに企業が公開している情報への信頼という3つを早急に回復できなければ98年の見通しも暗い(いや、頑張って回復してね。政治も頼むよ)。

さてそんな市場とインターネットの関係である。
リアルタイムの株価や会社情報、法人の格付けなどはいろいろなサイトで行われているだろう。企業も投資家に対してできる最大のサービスが情報公開なのだから資金調達の王道として多くの企業がネット上で当然なっているハズだ(見たことないけど)。
そして、そういった由緒正しい情報の一方で、企業の内部告発を扱うサイトやら、掲示板に時々現れる出所の定かでない「危ない金融機関リスト」やら、「風説の流布」に近い情報も目にすることも、不況期のネットならでは、だ。

「内部告発」などを扱っている(あえてリンクしないが)有名なサイトがある。ここの情報が投資や株価に影響があるか知らないし、その内容の真偽は定かではないが、第三者が読む情報としてはなかなか興味深い。メディアとしてインターネットを考えるとき、誰でもが簡単に、不特定多数に向けて、時には匿名で、いろいろな情報を発信できるという意味では,これほどインパクトのある利用の仕方はないのではないかとも感じさせた。恐いけど。

「危ない金融機関リスト」や「風説の流布」に近いものはチェーン・メールやメーリング・リストに投稿されることで広く伝達されるようだ。私はそれらの転載を掲示板で見た。97年前半に起こった神戸市須磨区の少年殺人事件以来、掲示板でどのような情報が投稿されてもそれほど驚かなくなっていた。しかし「ある会社が倒産する」という内容の投稿には単なるデマ(いたずら)と片づけられない巧妙さがあった。それはまず、いくつかの掲示板に継続的に「ある会社が×月×日に資金繰りができずに倒産する」という話が投稿されて始まった。それから3・4日おきに「メインバンクは××」「××との取り引きが中止」など話の内容は信憑性が高まるように具体化していった。資本金額や本社住所など基本的な部分に間違いがあったようだが、文章もしっかりしていたし、なによりこの不景気風に煽られて信憑性を感じた人もいたはずだ。本当に有益で確実な情報は表に出ないからインサイダー情報となるわけだけど、会社公表の由緒正しい情報でさえ粉飾がある時代なのだから疑心暗鬼になるのも止むを得まい。改めて情報に対する信頼性をどう確立していくのかが問 われていると感じた。

景気の先行きの不安は、多くの人を不安にさせる。政治の停滞には多くの人が苛立ちを感じている。そんな世相をいろいろなサイトが、暗いトーンで映し出していた1997後半のインターネットであった。
98年は明るい年でありますように。



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