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Inside Farming Vol.18 (Japanese)



減農薬への挑戦(その2)。苦悩。そんなに簡単じゃないよ!

今年の河合果樹園の減農薬への挑戦は、クエン酸を農薬に加えて散布することによって「病気を予防・治療する農薬(殺菌剤)」の量を半分にしようというものである(もともと使用量が少ない上に半分にするので、地域の農家よりも6割減になる)。その減農薬への意気込みの詳細は「 Vol.17 -減農薬への挑戦。クエン酸で殺菌剤を半分に!」を参考にして頂くとして、今回はその中間報告。そして、そんなに減農薬は簡単じゃないよ!という苦悩のお話です。

河合果樹園が減農薬を実践するに当たっては、果樹園を完全な無菌・無昆虫状態に保つことを狙ってはいない。それが出来れば最善には違いないのだが、大型施設がなければ不可能な事だ。そこで多少の病気や多少の虫などとは共存するという発想で必要以上の農薬を散布せずに防除回数を減らすという方向性をとっている(もちろん高温多湿で病気が発生しそうな季節や、地域で病害虫の密度が高まる季節には予防のための防除も行っているのだが)。 だから例えばリンゴハダニの発生には神経を使うけれど、林檎にとっては影響が少ない油虫などが葉にいたとしても直ぐに殺虫剤を撒いたりしない。そうやって今までうまくやってきた。

だが、今年は初めてトラブルが!!・・・・・「うどん粉病」が発生したのだ。
「うどん粉病」とは枝や葉の一部が「うどんの粉」をかけられたように白くなってしまう症状が現れるもので、その病気自体は発病していても、患部を切って取り除いたり、殺菌剤の散布で病気は終焉に向かうため林檎に与える影響は少ない。河合果樹園では今までほとんど発生したことが無かった病気だし、まあ発生したと言っても園の端の一部だし、そんなに気にする必要もないなと甘く考えてやり過ごすようなものであった。けれども、本当のトラブルは直ぐにやってきた。

実は河合果樹園の林檎園に隣接するところにスイカ畑があった。
そしてスイカには「うどん粉病」は大敵だったのだ(なんてことだ!)。

私はいつも、その隣接するスイカ畑との境に植えてある林檎の木の列を防除をする時は、その畑になるべく農薬が飛び散って行かないように散布量を控えめにしていた。それが低農薬のせいで裏目に出てしまったのかもしれない。果樹園のその一列以外の林檎の木たちには何の症状もないのだが、よりによって、スイカに一番近いその列だけに病気が発生している!!。お隣の農家の方からはしっかりと「お叱り」を受けた(もちろん「うどん粉病」の発病が果樹園が先か畑が先かは、わからないし、病原菌が元々どちらの畑にあったのかはわからない。ただ、発病した後の症状が林檎よりもスイカの方がその病気に弱いということが、農家にとっては重要なのだ。それが掟です)。
幸いなことに患部を切り取って焼却し、その一列には殺菌剤を防除。スイカの農家の方も同時に防除することでスイカに被害は無かったものの、大切に育てているスイカが全滅にでもなったらどうしようかと、本当に辛い気持ちになった。低農薬って難しい!とちょっと肩を落した瞬間だった。

結局、そのスイカ畑に隣接した林檎の木一列だけは、一回殺菌剤を多く散布してしまったけれども、果樹園のそれ以外のほとんどの林檎は低農薬裁培を継続しているし、それで順調に成育している。「うどん粉病」もない。ちょっと精神的には疲れたけれど、ネット上で公表したことで、初心に戻って頑張って低農薬を継続するつもりだ。

トラブルを公表するのは恥ずかしいことだけれど、努力している農家には他山の石として欲しい。減農薬と隣接する作物との問題は、きっと発生するまで分からない問題だと思うから。

消費者の皆さん、「低農薬」や「無農薬」をまじめに追求している農作物を見たら少しだけ農家の苦労を想像してみてくださいね。


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写真、本文とも Copyright(C) 河合果樹園