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Inside Farming Vol.138


NHKのプロジェクトXで「ふじ」をとりあげる!


 サラリーマンのバイブルと賞賛されるNHKの「プロジェクトX」という番組で(揶揄か?)、林檎の「ふじ」がテーマに取り上げられた。国光という品種が全盛の頃に、バナナなどに輸入果実や生産過剰による暴落を予見し、早くから「ふじ」の生産技術の開発と向上に奮闘した男たちの話であった。
 
 実は番組を見て園主はかなり感動してまった。当時の「ふじ」に賭けられた「夢」や「熱意」や、生産技術の開発に取り組んだ農家の情熱がTVを飛び出して伝わってきたのである。登場する農家の林檎に対する思い入れに「羨ましさ」さえ感じてしまった。
 と、同時に、現在の林檎生産を取り巻く環境と、「ふじ」が生まれた頃の当時の環境とが、たいへんに似通っていると感じて驚いてしまった。

 例えば、当時の「国光」の生産過剰は、なんと、この努力によって全国的に普及した現在の「ふじ」の生産過剰と重なる。「バナナ」の輸入は多彩な輸入果物の増加と関税自由化の流れと重なる。そして生産過剰による「国光」の暴落をうすうす意識しながらも「ふじ」に生産転換できない保守的な農家の姿は、「ふじ」に変わる新品種がいろいろ推奨されていても、なかなか更新できない園主や大多数の農家の姿とダブル。
 そして、ついに発生した林檎価格の大暴落!。これは、農産物を徹底的に安く買い叩くデフレ経済と共通している。
河合果樹園の2003年産の
ニュージョナゴールド

 当時は、ここでついに救世主「ふじ」が脚光を浴びる。異端視されながらも、また、出稼ぎをしながらも林檎産業の復興を信じて生産技術の開発に取り組んだ、先見性を持った農家の努力が日の目を見たのだった。
 これに対して、現在はどうなのだろう。それは、これからのストーリ。ただ、ほぼ40年前の当時とは比べ物にならないほど経済も産業構造も複雑化してしまっていて、単純に林檎産業や農業の隆盛を信じて情熱を傾けることができる現状ではない。それが、当時の先進農業者に対する「羨ましさ」かもしれない。

 ところで、この「ふじ」の生産技術の開発に携わった斉藤さんという林檎生産者は「ニュージョナゴールド」という品種を見出した人でもあるという。園主は「ふじ」と同等かそれ以上に「ニュージョナゴールド」(写真)という品種の味と生産性の高さを素晴らしいものだと常々考えていたので、この2大品種に携わった斉藤さんという方に、心底脱帽致したのでした。
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写真、本文とも Copyright(C) 河合果樹園