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Inside Farming Vol.137


FTAと農業


 10月16日、日本とメキシコ両政府の自由貿易協定(FTA)締結は、時間切れという形で交渉が打ち切られたと報道されている。FTA(Free Trade Agreement)とは、国と国の間で関税を撤廃する協定である(EUも、もともと欧州各国間のFTAから発展したものだそうだ(トリビア))。

 交渉が打ち切られる数日前に、TVでは、EUとメキシコ間でFTAが締結されているため、日本からの自動車や自動車部品の輸出がEUからの輸出に比べて不利になっているという報道されていた。このような報道の背景には、日本の景気の牽引役である自動車業界の意向が働いているのではないか、と園主は密かに思っていたので、FTAが締結されなかったという結末は少し意外であった。
 ところで、FTAが締結できなかった日本側の原因は、豚肉に対する関税やオレンジジュースの無税枠問題であると報道されている。またしても農業が悪者になっているが、本当のところはどうなのか?。交渉に際しては、野菜など約250品目の農産物の関税撤廃をメキシコ側に申し出たという報道もあるので(それがどんな作物なのか品目を詳しく知りたいが)、農業分野の譲歩もかなりのものという評価があってもよいと思うのだが・・・。

 日本が締結しているFTAは、現在シンガポールに対してだけだ。シンガポールからは農産物輸入がほとんどないので、スムーズな締結につながったようである。しかし、今後、日本はタイ、フィリピン、ASEANと協議を始める。メキシコとの協議も継続の方針である。それらの国の日本への主要な輸出品は農産物や繊維製品なのだから、今後のFTA協議は一層、難航すると予想される。例えば、国内農業保護がFTA締結の足かせになっているとすれば、それが日本経済全体にとって、いいことなのか?どうなのか?。一方、農産物の関税撤廃が、農業に与える影響も計り知れないだけに、FTAという言葉を聞くたびに、農業に携わる者の一人として複雑な心境になる園主である。
 
 こんな日本に対して、注目されるのは韓国や中国の動きだ。韓国は最近チリと協定を締結したというし、中国はASEANの主要な6か国と2010年までに締結する計画だという。園主の素人判断でも、中国とASEAN諸国とがFTAを締結して形成される巨大な非関税貿易圏に日本が参画していなければ、日本経済が受ける打撃は深刻だと思う。
 それにしても中国である。最近、有人宇宙飛行も成功させてその国力を内外に強烈に印象付けている。眠れる龍が起きる時、どんなパラダイムシフトが起きるのか・・楽しみというより、怖い。
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