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Inside Farming Vol.130


多発する農産物の盗難


 山形県でさくらんぼの盗難が相次いでいると報道されている。生産者の方の憤りはどれほどのものかと、想像するのもつらい。
 イヤな話だけれど、身近なところでも農産物の窃盗が相次ぐ。河合果樹園のある波田町でも、畑を見張っていた生産者によってスイカ泥棒が取り押えられたという出来事が昨年あった。松本空港周辺の果樹園でも窃盗が多発しているという話も聞いた。河合果樹園でも数年前には、お昼ご飯に果樹園から自宅に戻ったスキに収穫箱ごと数十ケース分が盗られた。笑うに笑えない話だが、他人の畑のアスパラガスを、その畑の主よりも早く起きて収穫し、定期的にJAに出荷していたツワモノもいる。そういった大掛かりな窃盗の一方で、果樹園周辺をふらふらしている通りすがりの人や観光客が平気な顔で果実を2、3個捕ってしまうことは茶飯である。

 不況もあるだろうが、多発する農産物の窃盗の原因のひとつは「犯罪であるにもかかわらず、罪悪感が薄い」と園主は勝手に分析する(元々罪悪感なんてものは無いともいえるが)。
 園主が泥棒の側の思考をするとするならば、
(1)農産物の多くは露天で生産されているから、人目がなければ、畑や園に入るのは自由である。その結果、企業の生産工場に侵入して製品を盗むとこと同じ犯罪であるにも関わらす、そのように意識できない。
(2)生産者が1年間「一生懸命手入れをした結果の生産物である」ということが理解できない。収穫時点しか知らないから、その苦労を想像することが全くできない。例えば、林檎ならば1年でこれだけの作業と人件費がかかる。それを、あたかも、樹を植えておいたら自然に実がなっていると思っている。自然になったものならば、少しくらい失敬してもいいだろうなどと思い違いしてしまう。
(3)そして、(1)(2)という考え方を含めて、一般的に「農産物の価値」の低下がある。昔は「お米一粒でも農家の人に感謝して」なんて言っていたけれど(古すぎますか?)、飽食の現在では、「食」を司る農産物と、大量生産の日常消耗品とが、商品としての意義、位置付け、価値が同じ、あるいはそれ以下になっている。
 だから、銀行に行って「価値が明確な」お金を強引に頂くよりも、畑に侵入する方が、ちょっと気が楽。

 でも、農産物は「労働の対価(お金)」なんです。同時に、生産者にとっては、お金に替えられない「喜び」をも有する「労働の成果」でもあるんです。そして、生産者と価値を共有できる消費者の方にとっては、唯一無二の価値をもつ農産物であることだってあるんです。そのあたりが、泥棒さん達には、分ってもらえないんでしょうね。

 最近は、本屋さんでの本の盗難が激増しているそうである。これも「本の持つ価値」が低下していることに起因するのではないかと思う。最近は、傷害事件なども増加しているようである。これは「人間の価値」が低下していることに起因しているのではないのか、とも思ってしまう。そんな園主は、ペシミストでしょうか。

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写真、本文とも Copyright(C) 河合果樹園