kawai fruits banner


Story of the househusband Vol.2

DNAデバイドの世の中は来るのか?

 最近、コンピュータやインターネットができるか・できないか(できる環境にあるか・ないか)で就職や仕事の査定に格差ができる事を”デジタル・デバイド”と言うらしい。なにをもってコンピュータやインターネットができると定義するのかは謎だが、とにかく負け組に分類されないように、誰もがインターネットに勤しんでいる。

 もうひとつ最近話題の”デバイド”は”イングリッシュ・デバイド”らしい。TOEIC600点あたりが分岐点だろうか?インターネットの爆発的な普及が、大都市でも地方でも、大企業でも中小企業でも、全ての企業にビジネスのグローバル化のチャンスをもたらしている。もはやどんな田舎に住んでいようとも英語ができなければ企業戦士に昇進の道はない時代がやってきているのだ(ひえ〜恐ろしい!企業戦士の皆さんコレッてホントですか?)。

 そんな”デバイド”の中で極めつきはなんといっても”DNAデバイド”である。競馬馬の世界では当然のように行われている”サラブレッド”、つまりDNA的に優勢な遺伝子を持った馬を作るみたいに、DNA的に秀でた精子や卵子を購入して子孫を作ってしまおうという人々が登場しているというのだ。血統書付の人間と言う事か。

 海外では科学者やエリートの精子を集めた精子バンクがあるというし、卵子を冷凍保存しておく技術も既に商用化されているという。日本でも(特定のDNA目的ではなく、子供を授かりたいという切なる願いからだが)夫婦以外の近親者の卵子を用いた体外受精の例が既にある。この事は不妊で悩む方にとっては朗報かもしれないが、体外受精が夫婦間の卵子精子でなくてもいいなら、少しでも優秀なDNAを持つ卵子や精子を取り寄せて妊娠した方がいい・・と発展してしまう可能性もあり、今後は慎重な対応が必要となるだろう。
 加えて21世紀までに(あと半年だが)人のDNAのほとんどは科学的に解析されるというから、次世代により優秀な遺伝子を残したいという人類の欲求はさらに高まる事が予想される。既に、DNAと幾つかの病気の因果関係は広く一般的に指摘されているものもあるし、「リーターシップがある」といった性格的な気質まで特定のDNAの影響を受けているといった気になる研究結果もある。こうなると、いよいよ”DNAデバイド”が本格化しそうだ。

 でも、結論を言っちゃうと”DNAデバイド恐れるに足らず”だ。なぜなら「優れたDNA」とは何なのかはユニークに決まるものではないのだから。生活環境、文化、思想、宗教によって価値観が違うように「優れたDNA」も千差万別であるはずなのだ。さらに現代社会においては個性こそが人間の存在意義でもある。それに子供の成長にとって、DNAに影響を受ける部分よりも後天的な環境に影響を受ける部分の方が絶対に多いという事も私達は経験的に知っている。
 そう考えると本当に怖いのは親が子供に対して「自分の能力がこの位だから、子供の能力はだいたいこの位だろう」と見積もってしまうことの方だ。親が自分の子供を積極的に”DNAデバイド”するという構図である。人類の歴史上、人間は一度も退化した事はなかった。つまり、子供は親よりも必ず秀でたDNAを持っているのだ。さらに誕生の瞬間に既に何十億分の一という生存競争を勝ち抜いてこの世に出てきているのだから、全ての子供たちは選抜されたDNAを持っているとも言えるのだ。そう信じて子供を扱うべきだと思う。親のDNAの範囲だけで子供の可能性(DNA)を判断してはいけない。無意味なDNAデバイドで子供に”あきらめ”を植え付ける事だけは止めにしたい。(2000/5)





河合果樹園へ 

E-mail
kawai@wmail.plala.or.jp

写真、本文とも Copyright(C) 河合果樹園