スモールループアンテナの入力インピーダンスとSWRをグラフに表示する計算ツールです。ほぼ完成の域に達したかな、ということでversion 1.0 としてアップします。
スモールループアンテナ(マグネチックループアンテナ)の計算ツールはこれまでにもweb上にいろいろと紹介されていますがいずれもメインループの設計に関するものでした。そこで給電ループまで含めた計算ツールを作ってみたという訳です。メインループの設計に加えインピーダンス整合のチェックにも使えます。背景には複素インピーダンスの周波数特性を簡便に測定できる安価なアンテナアナライザの普及があります。実測値と比較しながら最適設計値を探すのに役立つツールです。
version 0.99からの変更点
・入力パラメータの同調容量を同調周波数に変更(同調容量は計算結果に表示)
・周波数の単位をkHzからMHzに変更
入力パラメータについて
(1) Mld:メインループの直径
(2) Mcd:メインループ・エレメントの線径(直径)
(3) F0C:同調周波数
(4) RLp:追加損失抵抗(同調バリコンの損失抵抗やメインループ接続部の接触抵抗など)
これら(1)〜(4)を入力することで従来のSLA(MLA)計算ツールと同じくアンテナの輻射効率、帯域幅、Qなどが得られます。
(5) Cld:給電ループの直径
(6) Ccd:給電ループ・エレメントの線径(直径)
(7) n:メインループと給電ループの結合の強さを表すパラメータで相互インダクタンス(LX)は基準インダクタンス(LX0)のn倍で定義されます。ここで基準インダクタンスとは、給電ループをメインループの中心かつ同一面内に配置したときの相互インダクタンスです。給電ループ径がメインループ径に比べて十分小さいとして近似計算により基準インダクタンス(LX0)を求めています。
給電ループに関するパラメータ(5)〜(7)を入力することで、同調周波数近傍の複素インピーダンスおよびVSWR(50)がグラフに表示されます。
給電ループの配置とnとの関連
給電ループの幾何学的配置をきちんと与えればメインループとの相互インダクタンスを計算することは可能です。そうした厳密な計算はよく知られたMMANAのようなシミュレーターが得意とするところです。ここで紹介している計算ツールでは厳密な計算を避け、単純化したパラメータ(n)を使って計算を行っています。給電ループの配置の仕方とnの関係を概念的に表すと下図のようになります。
すでに述べたように、給電ループをメインループのど真ん中に置いたときの相互インダクタンスがn=1に対応します。メインループがつくる磁界は円周に近づくほど強くなりますので、給電ループをメインループ・エレメントに近づけるほど結合が強くなります。給電ループ径がメインループの約1/5の場合、給電ループをメインループに接するまで近づけると実測ではnが3くらいになりました。一方、給電ループ面とメインループ面の角度をつけるとnは小さくなります。2つの面のなす角が90度では理論上n=0になります。
インピーダンス整合のためのn値を探すマクロについて
この計算ツールに組み込まれているマクロは、nを0から5まで小刻みに変えながらその都度SWRの最小値をグラフにプロットします。このグラフからSWR=1となる(整合条件を与える)n値がわかります。マクロを起動するにはメイン画面右下にある黄色のグラフをワンクリックします。
OpenOffice Calcでの動作
OpenOffice 4.1.0で動作を確認しました。表示がところどころ異なったりしますが計算自体は問題なさそうです。マクロはVBA互換の設定がされていれば動きます。