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年末から冬場の作業である剪定や粗皮けずりなどの作業が続いている。剪定はブドウ
の出来の半分を占めると言われる大事な作業である。又、粗皮削りやハウスのフレーム
に絡みついたブドウの巻きつるなどを取り除く作業も、病害虫の予防のためには欠かせな
い作業である。
じいちゃんがなくなって以来、一人でブドウ園を守って来たばあちゃんは腰が曲がり、上
を向いての作業はつらい。草退治は得意であるが、ぶどう棚での作業は思うようにも行か
ぬ。ついつい必要最小限の作業で済ませてしまう事となる。
その結果、棚を見上げれば枝を跨ぎ伸び放題の枝と、幾重にも重なったブドウの粗皮、
そしてたくさんの巻きつる。ぞっとする光景である。秋口から少しずつ取り掛かっては来た
が、今だ終わりが見えぬ。
このままでは春になってしまう。それまでには何とか片付けねばならぬ。まだまだハウス
のサビが浮き始めたフレームにも塗料も塗らねば。そんな事を考えていると冬場のゆっく
りした時間に、近所の温泉にでも、などと言う気持ちも失せてなくなる。
これではまるで夏休みの宿題を、あわてて徹夜してやっているようなものである。5年分
余りの冬場の仕事を一度に片付けているのだ。しかし、文句は言うまい。良くぞこれだけ
の事をあの体でやって来たものだと感謝しよう。
ぶどう棚のコンクリート支柱を庭で作り、ハウスのフレームも自分たちで曲げ、ブドウ園を
作ってきた事を考えれば、80を過ぎたばあちゃんの残した宿題なぞ、ブドウ屋一年生の自
分が数十年のキャリアを持つ周りの連中に追いつくためのトレーニングである。
すべてを5年前の状態に戻し、自分のブドウ作りはそれからである。 |