蒼月の人物考証(秘)ノート

 最近ふと思ったのだが、勇者のパーティはいつも変わった奴等が多い。しかし、今回に関しては、いつも以上にユニークなのが揃ったのではないだろうか。
 興味を惹かれたので、少し各人に関して書き連ねていこうと思う。


〜那智〜
 言わずと知れた、この私『蒼の守り神』蒼月の現マスター……勇者である。
 黒い髪に水色の瞳を持った、優しき者だ。だが、あまり世間というものを知らぬ私でも、彼女が普通ではないことくらいわかる。
 なんというのだったか……そうだ、確か仲間内の一人が『天然』と称していたな。
 刹那(せつな)もわりとそうだったが……今まででも一番の平和主義者。己にとって味方はもちろん敵ですらも、傷つくことを嫌がる性分の持ち主だ。
 その童顔と小柄な体型は……彼女を歳よりも幼く見せている。もちろん、性格も子供っぽい――というか、幼子のように純粋だ。それゆえに、どこかしらスコンと抜けているところがある。
 だが、その資質は勇者にふさわしい神聖さを持っている……と思う。勇者の『聖』の部分は、群を抜いて強い。
 実力は、確かにある。目覚めも始まっているはずだ。


〜血無〜
 彼女もまた私のマスター……勇者である。いまだかつて、二つの全く異なる人格に同じ勇者の気配がしたということはなかったのだが、確かに『真実』をまとっている。
 自称『那智の裏』。
 要するに二重人格の片割れということらしい。黒髪に朱の瞳を持った猛き者だ。那智同様、少し普通ではない。
 那智とは逆に戦いに躊躇というものを見せない。彼女にとって一番大切なのは、己と仲間。危害を与える者には容赦がない。
 那智の裏の人格ゆえに、その体は那智のもの――童顔と小柄な体型のはずだが、那智とは逆のつり目がちで強い意志の宿る瞳が、全く違う雰囲気にしている。
 勇者にふさわしい実力と意志力を保持している。また、勇者の『闇』の部分が群を抜いて強い。
 実力は十分、目覚めも完了。必要なのは経験だろう。


〜紫明〜
 危険人物だ。誰がなんと言おうと危険人物だ。
 なんといってもこの男は次期魔王。赤い髪と瞳を持った、魔族を治めるモノの血筋、正当なる後継者。
 那智に一目惚れをしたとのたまい、ずっとこのパーティ内にいるが、真実のところはどうなのか……。那智と血無を気に入っているのだけは確かなようだ。
 私としてはあまりこの男と共にいるのは賛成出来ないが、決定権は那智にあり、彼女は紫明を『仲間』と見なしている。
 魔族独特の性質を色濃く継いでいて、気まぐれで自分本位のワガママである。その残酷さは、子供っぽく無邪気とさえ言えるが、けして受け入れられるものではない。
 普段は人間のフリをしているが、その美貌は変わらないのであまり意味がない気もする。……まあ、赤を隠すだけでも魔王とばれないのでいいのかもしれないが。
 何はともあれ、全く油断の出来ない輩である。


〜高嶺〜
 ……踊り子、だな……だよな? う……うむ。
 金髪に琥珀色の瞳と、南にいる遊牧民の一族の性質を良く継いでいる。動の美女らしい健康的な少女だ。
 彼女の相方いわく、一族一番の踊り手であるとのこと。まあ、それには否定すまい。実際彼女の踊りは素晴らしい。
 だが、いつでもどこでも、己の思うままに突如踊り出す彼女は……ある意味はた迷惑であろう。だがそれも、天性の才能と踊り子の本能ゆえと言われれば……そうかもしれない。踊っていない時も、ふと見ると足でリズムを取っていたりしていて、なかなか興味深い。
 どうやらなにか捜しているらしいが、『旅自体が目的』としか言っていないので、いまだにその捜し物がなんなのかは不明だ。
 パーティに入ったのは、旅を続けるためと、那智が気に入ったかららしい。暇を見つけては那智を可愛がり、紫明と張り合っている。


〜孤玖〜
 吟遊詩人だ。だが……高嶺いわく『超絶音痴』らしい。真偽のほどを確かめたわけではないが、高嶺の青ざめた顔を思い出せば、それが真実であることがうかがえる。
 音痴の代わりに楽器演奏と、伝承の語りの能力はピカイチ。若いながらも素晴らしい才能と実力を持っている。
 高嶺と同じく金髪に琥珀の瞳。同じ部族の出身で幼なじみ。だが、恋人関係とかではないと言う。
 どうやら、高嶺の『お目付役』のようだが、いつも高嶺に振り回されている気がするのは私の気のせいだろうか。なんだかんだと言いながらも、孤玖も高嶺には逆らわないようにしているようだ。
 一見常識人のように見えるが、紫明を『いかにも性格の悪そうな美男子』と、顔色一つ変えず、あまつさえ爽やかなまでの笑顔で言い放ったところを見ると、またいい性格をしているようだ。


〜駿河〜
 武闘家。明るい赤茶の髪に、はしばみ色の瞳。つり目がちだが、整った顔をしていて、(母親似だという)本人はそれを非常に気にしている。
 賞金稼ぎでもあるらしく、わりと名は通っているらしい。だが最近、じっくり見ていると『主夫化』してきているようだ。本人も時折正気に戻り、絶叫している。
 だが、その役割をする者がいないので渋々パーティのお母さん的存在になりつつある。
 史上かつてないほどにバランスが悪く、またユニークなパーティを一生懸命まとめている姿は涙を誘うが、彼自身もユニークなので致し方ないだろう。
 那智と最初に出会った男で、那智の『真実』の気配と薄皮一枚だけ違う男。ゆえに私を使うことが出来るが、かなりの無理を伴うので、そうそう出来ることではない。
 紫明とは仲が悪い。だが、やはり那智には逆らえないらしい(もちろん血無にも)。
 それでも必死にパーティをまとめる彼は、生来の苦労性と言えるだろう。
 かつての戦友斬雪の弟子であり、息子(義理)。
 

 ふむ……こんなものか。
 書けば書くほど変な奴等だな。
 ――まあ、いい。これも天命よ。
 さて……また一眠りするか。マスターが私を必要とするまでな……。



あとがき
こんにちは、またはこんばんは、作者の刃流 輝(はる・あきら)です。
…………………………………………勇者ども2000記念のリクです。
リク発信者はフジ。リク内容は「蒼月の話!」だったんですが………。
――微妙に、間違えた?(汗)
まあ、話……蒼月の(が話してる)話。うん。間違ってないぞ。(多分)
よし………蒼月の話だ。受け取れ、フジ!!
じゃ、私はこの辺で。
……………………【捜さないでください】(置き手紙)

                          2002・7・10


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