何でどうしてそうなんだ!?    Switch 様
〜act.2・broken・・・〜



act.2・broken・・・
 
 俺は息を吸った。見据える相手は紫明。
「で、そのちみっこは誰だ?」
「ちみっこ!?」
 壱之端は叫んだ。
「なんたる無礼なんたる屈辱ぅううう!!」
 彼女は叫んだ。真っ赤な顔で地団駄を踏んでいる。
「駿河、コイツがガキんちょにしか見えないのは仕方がない。しかしコイツは家の伝令係として雇って8532年と108日なんだ。」
 「へへーん」と壱之端は胸を反り黒髪を揺らす。
「その割に飛べないのですね。」突然孤玖が現れた。その一言で彼女は口をへの字に結んだ。
 いきなり脇に生えるように現れるな!!頼むから!!
 ・・・別に今に始まっていないとして、問題はそこじゃない!!
「突っ込むとこ違うよ!」
 珍しく那智が鋭く言った。あまりなレアさに皆、那智を見る。いけ那智。すすめ那智!怪傑那智が斬るっ!!その蒼月のようにぶった切れ!!かっと瞳を見開いて。
「どうしてそんなにきっちり覚えてるの?紫明」
 ずしゃあああ!俺はこけたものすごくこけた。
「そこじゃない!!伝令係が来たってことはなんかあるだろ!!なんなんだ?」
「だから蛙詩神様ですよ。」
壱之端はにこにこと言う。
「だから何なんだ!!」びしっと言うといじけた。
「そのことについて僕が説明しよう。」
 ふわりと真っ白な羽を広げた少年が立っている。否、紙一重で浮いている。ぴかぴかのふわふわマシュマロ型のブロンドヘアー。「如何にも天使です」というような白い布一枚だけ身につけている。俺は天使と壱之端を見比べた。思わず溜息が出る。
「なんですか?」
 だがすぐにわかったらしい。
「いいじゃないですか!」
 真っ赤になって叫んで喚いて涙目だ。
「わあ天使だぁ。」那智がめちゃめちゃ感激したようで、駆け寄って羽へと手を伸ばす。
「下等な人間風情が触るな。」
 あくまで静かに言った。なまじ美形だから、冷たい印象が濃い。
「ごめ・・っ」
那智は泣く一歩手前だ。すかさず紫明・高嶺が避難する。それでも踊りは止めないが。
「何泣かせるんだ!!」
「ちょっと何よ。那智泣かせるなんて文句あんの?!」かんかんかん。ステップの五月蠅く落ち着きが無くて半分以上聞き取れなかったが。
「文句あるから来ているのです。勇者は誰ですか?」
強いて興味ないという動作でぱくぱく口を動かす。まるで金魚だ。
「あたしです。」
 おずおずとそれでもはっきりとした声で那智が手を挙げる。その様子を天使は上から下まで凝視する。
「貴方なめているのですか?」
「は?」
「何処の勇者が魔王なんかに味方するのですか。」
 その抑揚の無さは感服する。そんな天使に紫明が手をヒラヒラと振って否定する。
「違う違う勇者に魔王が味方するの。」
「どう違うのですか。」
 その点は天使と同意見だが、あくまで彼のプライドの問題だろう。
「みんな仲良しだよ?仲良くしたら楽しいよ。」にっこり笑う。見る奴を癒す笑みだ。俺らは見慣れたから平気だが、壱之端はぽわんとする。ああ、魅了された。
 天使よりも天使らしい言葉を言う那智。だが仲良くの相手にも限度があるがな。しかし流石は鉄仮面天使。表情一つ変えない。
「それが貴女が勇者であるわけですか。」
 天使はただ息を吐いた。
「それでも蛙詩神様はお怒りになられております。よって貴女方に宣戦布告します。」
「なあああ!?この前汐澄とヤり合ったばかりなのに!?」
「そうよ。こっちにだっっっっって準備がいるわ。」当然と高嶺が言う。
「準備どころじゃ勝てないよ。高嶺。」コイツは準備一つで神に勝つ気か!?
 俺は溜め息と共に言った。
「駿河、そんなことはどうでも良いです。」
 孤玖は言った。どちらかと言えば吐き捨てた。
「で、貴方は敵になるのですか?」
穏和な眼が光る。
「どうなんですか。」ずずいっと天使に迫る。息を吐けば相手の前髪を揺らせる。初めて天使が動揺を見せた。
「・・・そうです。貴女方の負けは決まっているも同然です。しかしそれではつまりませんので、貴女方にチャンスを差し上げましょう。」
「なんか変だ。」駿河の呟きに孤玖は笑った。なんか孤玖の後ろでさわやかに暗黒がうねりを上げていたがさらっと無視した。
「ところでこれから戦う蛙詩神とはどんな方ですか?」
「私です。の支離滅裂主は」
「・・・・・。」
 イヤな間が空いた。高嶺の動きがぴたりと止まる。
「お前の方がめちゃくちゃだ!!」
 何が起こったのかいち早く理解した紫明が突っ込んだ。天使の色素の薄い手に握られているのはメモ。天使は辛そうな顔をして。
「行動です。苦手のでする思いつきであの人は」
「そうだろうな。」呆れた顔をして「お前の話し方からしてわかるよ。」と、紫明は言った。俺はメモを覗き込んだ。案の定。
「カ、カンニングペーパー・・・。」
 天使はすぐに紙を握りしめ、宙に浮いた。天使の身体がどんどん透けていく。
「今回ましょう。は見逃し 次の側に相手すぐます。おりはしかし迫って」
と、多分捨て台詞を履いて空に溶けて見えなくなった。
「会いしょう。ままた」
 この声が響いた。そう、まるで壊れたオルゴールのように。俺はこれだけは相手に伝えたかった。これだけでも通じるならばそれだけで価値がある。
「ごめーん何言っているのかわからない!だから今度は言語の通じる奴ねー。」
 多分聞こえはしない。紫明が「馬鹿か」と笑っている。しかし俺は満足だ。高嶺も「うんうん」と頷き、俺の満足に拍車をかける。ただ伝える努力はしたのだ、いくらでも言い逃れる。相手は聞かずに逃げたのだと。孤玖が俺に向かって親指を立てた。
「あ、チャンスって何だろう?」
 那智が首を大きく捻る。
「また次の奴に聞けばいいって。」
「そうよ。考えたってわからないわ。踊ってますれましょう。」
と言ってウィンクして那智の手を掴んだ。
 
 
 
 兎に角カンペ持ちの天使によりとんでもないものと関わりを持つことになった。
 
 
 
郁:もう続きを書いた。
流:珍しい。
郁:一番遊んだのは天使の台詞。頑張って読んでくれ!
流:しかしわかる人いるのですか?
郁:作者からの挑戦!天使の台詞並べ替え。
流:正解者には蛙詩様送りつけますか(笑)
                         2003.11.7.FRI    

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